概要
2021年1月29日発売の電撃G's magazine 2021年3月号にて発表された、全三章で展開される『勇者史外典』の最終章。同誌5月号から連載開始。全5話。
発表当初は『烏丸久美子は▓▓▓▓▓▓▓▓』とタイトルの一部が塗りつぶされて伏せられており、連載開始になって初めてタイトル全文が明かされた。タイトル伏せは連載開始後もある程度続き、電撃G's magazineの表紙には第3話が掲載された7月号まで『勇者史外典 第三章』としか書かれていなかった。
時系列は『乃木若葉は勇者である』の冒頭に相当。バーテックス襲来により滅びゆく世界から四国への脱出を目指す極限状況下でのサバイバルストーリー。
高嶋友奈を導いたとされていたはずの烏丸久美子を「巫女でない」とタイトルで否定している事からもわかるように、「巫女でないはずの彼女がなぜ巫女となったのか」という謎を提示し、同時に今まで謎に包まれていた高嶋友奈の過去を紐解く物語となっている。
そのため、冒頭から『乃木若葉は勇者である』のネタバレを多く含んでいるので、いきなり本作から読む際は注意。
また、勇者であるシリーズ全体(あるいは「変身ヒロイン」「英雄譚」という概念そのもの)に対するアンチテーゼという側面もあり、
- 主人公は大人である上に問題ある性格(他の主要キャラ2人も主人公ほどではないが問題を抱えており、お世辞にも健全とは言えないトリオを組んでしまう)
- シリーズ恒例の日常パートやコミカルなシーンがゼロ
- 「世界を守るために年端もいかない子供が戦うのは異常」という変身ヒロインものどころか少年漫画などにもありがちな展開のタブーに切り込むテーマ
- メインがバーテックスとの戦いではなく、身勝手な大人のエゴに終始振り回される子供という”大人が悪い意味で絶対的に強い”人間関係のいざこざ
- 極限状況下で他者とわかり合い協力し合う事の難しさ
- 助けようとして善意の押し付けになってしまうどころか、「助けようとする行為が一部から反感を買われ、そのせいで人知れず捕まって暴力を振るわれる」というかなりえげつない展開も描かれるほど、「助けたいと思った相手が助けを求めているとは限らないという事」「誰かを助けるという事は、自分自身も含めた別の誰かを助けないという事」を赤裸々に描写
など、勇者であるシリーズの逆張りをするような重く難しい要素が多く、もはやハートフルボッコですらないシリアスで陰湿な内容となっている。
総じて、勇者ではない故に迫りくる運命の荒波に為す術なく呑まれていく、前作とは別の意味で『普通の人間』の物語となっている。そのため、「例え茨の道でも理想へ向かって進む」これまでのシリーズと異なり、「理想を諦め現実を受け入れて生きる」結末でもあるため、ファンの中にはあえてこれを読まずにゆゆゆを楽しんだ方がいいかもと提唱する者さえいる。Pixivでもファンアートの投稿は他のシリーズと比べて少なめ。
このように特異な内容だからか、本作の主要キャラ2人は他のメディアミックス展開での本格登場が未だなく、CVもついていない。
ファンからの愛称はこれまでの通例に倣って「かくみ」。
ストーリー
人類が滅亡した“あの日”――。高嶋友奈たちが四国へ至るまでの物語。
TVアニメ『結城友奈は勇者である』の時代から300年前の世界、人類が滅亡した“あの日”――西暦2015年夏。
いままで奈良県出身という情報以外、謎に包まれていた初代勇者の1人・高嶋友奈。
彼女が、どこで勇者の力に目覚め、どのようにして四国に至り、勇者となったのか?
高嶋友奈を見出した巫女といわれている、烏丸久美子の回顧録として、ついにその内容が描かれる。
(カクヨム掲載ページより引用)
登場人物
- 烏丸久美子(からすま くみこ)
『上里ひなたは巫女である』にも登場した、本作の主人公。
本作の時点では大学院生。
- 高嶋友奈(たかしま ゆうな)
ご存じ、烏丸が導いたということになっている勇者。
本作の時点では勇者の力に目覚めたばかりの小学5年生。
- 横手茉莉(よこて まつり)
本作の新キャラクター。絵本作家を夢見る人見知りな少女。
一人称はボク。出身が高嶋友奈と同じ奈良県。
- ルリちゃん
茉莉に助けられた幼い少女。
後日談にあたる『芙蓉友奈は語部となる』には、その後の彼女と思われる人物「藤井瑠璃」(声:野川さくら)が登場している。
- 黒シャツ
文字通り、黒いシャツを着た男。本名不明。本作におけるクズモブ筆頭。
- ???(リンク先ネタバレ注意)
最終話にて、3人の前に姿を現す人物。
- ???(リンク先ネタバレ注意)
単行本書き下ろし短編にて登場。
余談
『楠芽吹は勇者である』(以下くめゆ)とは、直接的な繋がりこそないものの対になっている部分がある。
- 「かくみ」が投げかけた命題に、「くめゆ」が答えを示している(所謂アンサーストーリー)
- (詳細はネタバレになるので伏せるが)横手茉莉と楠芽吹の行動、高嶋友奈と国土亜耶の結末
- 「かくみ」は高嶋友奈にまつわる物語だが、「くめゆ」は郡千景にまつわるものが登場する