概要
ドイツ軍のⅥ号戦車(ティーガーⅠ)のライバルと見られがちだが、主砲の威力・装甲・車体の大きさ・重量等はⅤ号戦車(パンター)とほぼ同等であった。
新型戦車の開発
1943年初頭、ソ連軍では新型戦車の開発が行われていた。
契機となったのは1941年末にドイツ軍が実戦投入したⅥ号戦車であった。鹵獲されたⅥ号戦車の正面装甲は、ソ連軍のT-34やKV-1の76mm砲の通常弾ではゼロ距離射撃でも貫徹できなかった。
7月、85mm高射砲1939年型を改造したD-5戦車砲をKV-1の車体に搭載したKV-85が開発されたが、Ⅵ号戦車の8.8cm砲の射程外から装甲を撃ち抜くのは不可能であり、更なる火力の増強が必要であった。
10月、防御力を強化した車体の新型戦車IS-1(IS-85)が投入されたが、主砲はD-5のままだった。12月からはT-34にD-5を搭載したT-34/85(後にZiS-53戦車砲に変更)が投入されるため、IS-1の存在意義が無くなってしまい、生産開始からわずか15日目に武装強化が決定した。
新型戦車砲
新型砲の候補はB-34 100mm艦載砲から発展したS-34 100mm戦車砲と、軍団司令部直属の砲兵隊に配備されていたA-19 122mmカノン砲から発展したD25-T 122mm戦車砲であった。
S-34は強力な砲だが新型なので弾薬の供給に不安があるのに対し、D25-Tは野砲と弾薬が共通である。また、D25-TはD-5用の砲架にそのまま載せる事ができる。
最終的にD25-Tが採用され、新型戦車IS-2(IS-122)となった。
D25-Tは口径122mm、砲身長46.3口径で、砲弾重量25kgの分離装薬式砲弾を使用している。
パンターの傾斜した80mm厚の正面装甲を距離600~700mで貫徹、ティーガーⅠの直立した100mmの正面装甲を1500mで貫通可能で、側面装甲なら2000m先から貫徹できる。
砲弾重量が重いので遠距離でも威力の減衰が少なく、貫通できなくも弾量効果とホプキンソン効果で叩き割るように装甲板を破壊し、乗員を殺傷する事が出来た(特にⅤ号戦車で多く見られた)。
制式化後、新型戦車はそれぞれ「IS-85」「IS-122」と呼称されたが、「名称で性能がバレてしまう」という理由により、早々に「IS-1」「IS-2」へと変更される。
しかし外見が明らかに違うため、ドイツ戦車エースのオットー・カリウスは戦後のインタビューで「JS(ヨット・エス)-122」と呼んでいる。
防御力の強化
生産は1943年12月から始まり、翌年2月から実戦に投入された。
当初、主砲防楯は85mm砲用のままで幅が狭かったが、耐久性や照準器の位置など使い易さに問題があったため、まもなく幅広の新型に変更された。また砲塔上のペリスコープも、イギリス製のコピーであるMK-4に変更され、操作性と視認性の向上を図っている。
IS-2の砲塔装甲:防楯は100~160mm、前面/側面90mm 車体:前面装甲100~120mm、側面90mm、後面60mm、車体前面装甲の傾斜は60度、車体下部も30度の傾斜と90mmの装甲に覆われており、正面から貫徹することは難しかった。
ただし、初期型のIS-2はKV重戦車以来の開閉できる操縦士用直視型バイザーブロック(覗き窓)に攻撃を受け撃破される事例が多く、後期型(1944年型)では車体前面の傾斜角を変更した固定バイザーにすることで防御力を増していた。だが、熟練したドイツ戦車兵には、わざと砲塔の防盾下部に当て、跳ね返った砲弾で車体天井を貫通させる者もいた。
運用
IS-2は対戦車戦よりも陣地突破などに投入されることが多かった。
元々野戦砲だったD25-Tの榴弾は非常に強力なので歩兵支援戦闘や市街戦で威力を存分に披露することになった。1944年4月には、弱点であった車体前面の装甲形状を変えた「後期型」が登場すると、ますます動くトーチカのようになっていった。この後期型を「IS-2m」と呼称する事があるが、これは戦後に西側の研究者によりつけられた名称である(単に「1944年型」と呼称する場合もある)。
IS-122は搭載できる砲弾数が28発と少ないため戦闘の継続力が低く、車内が狭く居住性が劣悪で前線では不評であった。
操縦性はティーガーより劣るとソ連側、ドイツ側の双方から報告されている。これは不整地を突破するために重量削減を重点的に行われた結果であり、ティーガーⅠよりも11tも軽い46t以内に収めると言う要求設計が原因だった。おまけに85mm砲を搭載予定だった砲塔に122mm砲を搭載したので乗員は劣悪な車内環境で戦闘を強いられる結果となり、重量25kgの分離装薬式砲弾を装填する作業も困難を極めた。
この様にIS-2は様々な欠陥を抱えていたが、殆どのドイツ戦車兵たちはその存在を恐れた。
IS-2には必ずT-34や随伴の歩兵が付属するため、下手に手を出すとソ連戦車部隊に翻弄された挙句に特大級の122mm砲弾をブチ込まれるからである。また、対戦車戦闘よりも対歩兵戦闘に活躍しているので、損害の6割以上は歩兵の対戦車携帯兵器『パンツァーファウスト』によるもので、敵戦車に撃破された事例は比較的に少なかった。
第二次世界大戦以降
戦後も改良が続けられ、「IS-2M」へと発展した。これはエンジンを換装し、砲塔上部のキューポラに12.7mm機銃が追加するなどした型である。戦中はチェコとポーランド、戦後は中国、キューバ、北朝鮮に供給されたが、中東に供給されることはなかった。
IS-2の後継戦車として、IS-3やT-10が開発されたが、主力戦車は中戦車のT-34から発展したT-54が担うことになり、「重戦車」というカテゴリーは廃れる事となった。
性能諸元
全長 | 9.90m |
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車体長 | 6.77m |
全幅 | 3.09m |
全高 | 2.73m |
重量 | 46t |
サスペンション | トーションバー |
最高速度 | 37km/h |
行動距離 | 240km |
主砲 | D25-T 48.5口径122mm砲 |
機銃 | 12.7mmDShk×1、7.62mmDT×2 |
装甲 |
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エンジン | V-2-IS液冷V型12気筒ディーゼル 513馬力/2000rpm |
乗員 | 4名 |
フィクション作品への登場
第8話から第10話にかけて後期型がプラウダ高校の保有車両として登場。
第9話以降は副隊長のノンナが砲手として乗り込み、ウサギさんチームのM3リーとカモさんチームのB1bisを撃破した。
テレビシリーズに引き続きノンナが砲手として乗り込んでいる。
エキシビションマッチでは再びウサギさんチームのM3リーを撃破した。
大学選抜戦では、カチューシャを逃がすため、クラーラの乗るT-34-85、KV-2と共に殿を務め、大学選抜のM26パーシングを撃破した。
プラウダ高校の保有車両として登場。引き続きノンナが砲手として乗り組んでいる。
ウクライナ混成旅団
物語終盤にて主人公たちが乗るパンターA型と交戦、8両中7両が返り討ちにされるが最終的にパンターA型を戦闘不能にした。
IS-2とIS-2Mがそれぞれ別戦車として実装。さらに主砲を152mm砲に換装した架空の強化型IS-152も登場している。
コンバットチョロQシリーズ
初代PS「コンバットチョロQ」とPS2「新コンバットチョロQ」に登場。
「コンバットチョロQ」では作戦18「氷点下の挑戦」に登場。「スターリン2」名義。
概ねKV-1の強化型のような性能だが、直前の作戦16にはすでにIS-3が登場しているうえに出番もIS-3の方が多いという少々不憫な扱い。
「新コンバットチョロQ」では「秘密基地潜入!」に登場。「JS-2重戦車M」名義。タンク解説では「装填に時間がかかりその隙にドイツ軍に装甲の隙間を狙撃されてしまった」と解説されている。
秘密基地を守る戦車として登場しこちらを包囲してくる。
バトルアリーナ「アスレチック」で対戦し、勝利すると使用可能となる。
同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーの武装を装備できる。