解説
第二次世界大戦後期の1944年に実戦投入された、ソ連最高指導者ヨシフ・スターリン(Iosif Stalin, IS)の名を冠するソ連赤軍の重戦車。
小型設計・強固な重装甲に加え、あらゆるドイツ戦車を正面から撃破しうる、脅威の大口径122mm砲を搭載。
装填や搭載砲弾数に問題を抱えつつも、赤軍最強の打撃・突破力としてドイツ機甲部隊の最後の抵抗を叩き潰す立役者となった。
制式呼称は「IS-2」と「IS-122」の2種存在する。
また、英語・ドイツ語におけるスターリンの表記「Joseph Stalin」を由来とする「JS-2」「JS-II」といった呼称も存在し、これらは戦中のドイツ軍によって用いられた。
開発
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| IS-1(上)&IS-2(下) | 脅威のドイツ重駆逐戦車フェルディナント |
1943年末に量産が開始された「IS-1」は、ドイツの「ティーガーI」や「パンター」を正面から撃破しうる85mm砲を搭載した期待の新型重戦車だった。
しかし、
| ・ | IS-1搭載の85mm砲はティーガーの8.8cm砲・パンターの7.5cm砲に対して性能不足で、長距離戦においてIS-1が不利となるのが明白 |
| ・ | 85mm砲を無力化しうる重装甲・高威力の長砲身8.8cm砲を備えるドイツ重駆逐戦車「フェルディナント」の存在や、それに匹敵するであろう次世代型重戦車の将来的な出現 |
| ・ | ソ連で同型砲を搭載しつつ機動力に優れる新型中戦車「T-34-85」が実用化が間近となり、IS-1の存在価値が相対的に低下 |
といった複数の要因が重なり、IS-1の武装強化計画が進められることとなった。
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| 10トン以上軽量なT-34-85 | まだ見ぬ強敵 |
武装強化案に登場した新型砲として
| 候補 | 原型 | 搭載試作車 |
| 「D-25T」122mm砲 | 既存野砲「A-19」122mm砲 | オブイェクト240(IS-122) |
| 「S-34」100mm砲 | 艦載向け「B-34」100mm砲 | オブイェクト248(IS-100) |
の2種が候補となった。(オブェクト:Объект)
D-25T搭載案には、既存の野砲部品や砲弾、加えて85mm砲用の砲架が流用できるといった利点があった。
一方、S-34搭載案は、D-25Tより戦車戦には適していたが生産ライン確立に時間がかかる・砲尾が大きくIS-1砲塔のスペースを大きく圧迫するという問題があったため、最終的に前者が採用され、ここに「IS-122」すなわち「IS-2」が誕生した。
1943年12月、IS-1生産設備のIS-2への移行が開始され、1944年1月までに完全に置き換えられた。
特徴
火力
IS-2の搭載する45口径122mm砲「D-25T」は、大戦期の砲塔付きの戦車の砲としてはトップクラスの大口径・高威力砲。
大重量の砲弾は飛翔速度の低下に伴う威力低下を抑え、遠距離戦への適性をもたらした。
| 弾名 | 弾種 | 発射体重量 | 初速 | 垂直装甲に対する貫徹力(射距離) |
| BR-471B | APHEBC | 25kg | 800m/s | 168mm(100m),146mm(1,000m),126mm(2,000m) |
...とは言ったものの、実際のところ、その貫通能力は一般的な90mm級長砲身砲と同程度であり、数値上はドイツ戦車の150~200mm厚にも達する装甲を「貫通できない」。
ただ、「非貫通 ≠ 装甲板に与える打撃力がゼロ」という点に留意して欲しい。
というのも、D-25Tの発射するBR-471B弾の運動エネルギーを公式「(1/2)mv^2」に基づいて計算すると、砲口時点で脅威の約8メガジュール。
これは、ティーガーIが搭載する56口径8.8cm砲「KwK 36」(約3メガジュール)の2倍以上、ティーガーIIが搭載する71口径8.8cm砲「KwK 43」(5.2メガジュール)の1.5倍以上の威力を意味する。
そして、この圧倒的運動エネルギーこそがD-25Tの火力の真髄。
つまり、たとえ装甲を貫けなくとも、圧倒的運動エネルギーで装甲そのものに大打撃を与えることで「叩き割る」ことが可能であり、命中さえすれば結果的に敵戦車は撃破される、ということなのだ。
しかし、この大威力は攻撃面におけるいくつかの弱点にも繋がった。
まず、85mm砲搭載のIS-1では5度だった砲俯角が、発射時の反動を受け止める122mm砲の後部の大型さゆえ3度に制限されたこと。
これは、自車よりも低位置にある目標への照準を困難とした。
次に、巨大かつ重量級の弾体と大量の推進薬を一つの「砲弾」としてまとめるのが困難だったため、「分離装薬式」が採用されたこと。
普段は弾体と推進薬を分けて保管、砲撃時になってそれらを薬室に詰め込むこの方式では「一度の発射で二度の装填」が必要となった。
さらに、これを狭いIS-2の車内で実施することは困難を極め、発射速度の低下をもたらした。
最後に、大型かつ重量級の弾体と推進薬のセットが車内スペースを圧迫したこと。
結果、携行弾数はIS-1の「85mm砲弾×59発」から大きく減少し、同時期の重戦車としては非常に少ない「122mm弾体＆推進薬のセット×28発」となった。
参考までに、ティーガーIは72発、ティーガーIIは92発、M26は70発を携行可能としている。
防御力
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| 初期型 | 後期型 |
IS-2の装甲はティーガーIの8.8cm砲、IV号戦車やIII号突撃砲の7.5cm砲、当時のドイツ軍で最も普及していた7.5cm対戦車砲「Pak40」などを1,000m以遠でほぼ無力化しうる程度のものだった。
(以降の装甲傾斜に関する数値は傾斜角=水平+x度,垂直＝90度で統一表記)
- 防楯・砲塔
122mm砲の付け根を覆うパーツ、防盾は初期型ではIS-1と同じ幅の狭いものだったが、耐久性や照準器の位置など使い易さに問題があったため、1944年中に幅広の新型に変更された。装甲厚は100~120mm。
防盾の脇から左右へ曲面状に広がる砲塔の装甲厚は背面に至るまで一律90mm。
- 初期型車体
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車体正面装甲は初期型では三段に分けて捉えることが出来る。
| 部位 | 実装甲厚/傾斜角 | 実質装甲厚 |
| 上段・緩傾斜 | 120mm/60度 | 138mm |
| 中段・急傾斜 | 60~70mm/28度 | 127~149mm |
| 下段・緩傾斜 | 100mm/-60度 | 115mm |
また、上部から側面・履帯上部に広がる装甲は90mm厚だが、正面から照準すると大傾斜がかかった状態となるため、実質的に貫通不可。
- 後期型車体
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1944年以降の後期型では「オブイェクト701」試作戦車(後のIS-4)の開発ノウハウが活かされ、初期型において別部位となっていた上段と中段が一体化。防御力向上が図られた。
| 部位 | 実装甲厚/傾斜角 | 実質装甲厚 |
| 上段・大傾斜 | 120mm/30度 | 240mm |
| 下段・緩傾斜 | 100mm/-60度 | 115mm |
結果、上段部(120mm厚＋傾斜角30度)はティーガーIIの攻撃をも弾き返す能力を得た。
機動力
搭載するV型12気筒液冷ディーゼルエンジン「V-2-IS」(正式にはV-2-10)は赤軍主力のT-34中戦車が搭載する「V-2-34」と同系列のもの。520馬力の出力はアンダーパワー気味ではあったが、生産性・耐久性に関しては優秀だった。
また、砲口径122mmの巨砲を搭載するにもかかわらず46トンにまで抑えられた車重にKV-1と同様の幅広履帯が効果を発揮、大戦末期の重戦車としては接地圧が低め(11.5psi)だったことから、T-34と同等の走破能力を発揮した。
戦史
1944年2月から前線へ送られたIS-2は、既存のドイツ機甲戦力を長距離戦で圧倒。
また、歩兵支援戦闘や市街戦でも自走砲と並び、元来野戦砲だったD-25Tの榴弾威力を活かして大きな活躍を見せた。
一方、1,000m以内の戦闘では装填速度の遅さや防御力の不足が露呈しやすくなり被撃破率が増大したほか、大戦末期の市街戦ではパンツァーファウストも被撃破の大きな要因となった。
それでも、重防御の施された陣地やコンクリートトーチカ、そしてドイツが終戦までに投入したあらゆる機甲戦力を正面から撃破しうる性能を持つIS-2は、1943年12月から1945年6月の期間で約3,400輌が生産され、ソ連の第二次世界大戦における勝利を象徴する存在の一つとなった。
戦後型「IS-2M」
1950年代、ソ連陸軍で未だに運用されていたIS-2に対して近代化改修が実施された。
内容は
・580馬力を発揮する新型エンジン「V-54KIC」と新型トランスミッションへの換装
・転輪類の新型化
・操縦手用暗視装置「TVN-2」
・携行弾数を35発に増加
・新型無線機
・新型消火装置の装備
といったところ。
1960年代に入り、この近代化改修が施されたIS-2には「IS-2M」の呼称が割り当てられた。
他国への供与と戦後
戦争末期の時点で、赤軍と協働していたポーランド軍が70輌程度を運用していた。
また、戦後にソ連が東側の盟主としての立場を確立して以降、大戦期に生産された戦車の多くは共産圏の各国に供給された。
IS-2もその例に漏れず、ハンガリー、中国、北朝鮮、キューバなどに供給されている。
ただし、未だ運用国の多いT-34とは異なり、現用している国家・軍隊は確認できない。
登場作品
第8話から第10話にかけて、後期型がプラウダ高校の保有車両として登場。
第9話以降は副隊長のノンナが砲手として乗り込み、ウサギさんチームのM3リーとカモさんチームのB1bisを撃破した。
テレビシリーズに引き続きノンナが砲手として乗り込んでいる。
エキシビションマッチでは再びウサギさんチームのM3リーを撃破した。
大学選抜戦では、カチューシャを逃がすため、クラーラの乗るT-34-85、KV-2と共に殿を務め、大学選抜のM26パーシングを撃破した。
プラウダ高校の保有車両として登場。引き続きノンナが砲手として乗り組んでいる。
- ウクライナ混成旅団
物語終盤にて主人公たちが乗るパンターA型と交戦、8両中7両が返り討ちにされるが最終的にパンターA型を戦闘不能にした。
IS-2とIS-2Mがそれぞれ別戦車として実装。さらに主砲を152mm砲に換装した架空の強化型IS-152も登場している。
- コンバットチョロQシリーズ
初代PS「コンバットチョロQ」とPS2「新コンバットチョロQ」に登場。
「コンバットチョロQ」では作戦18「氷点下の挑戦」に登場。「スターリン2」名義。
概ねKV-1の強化型のような性能だが、直前の作戦16にはすでにIS-3が登場しているうえに出番もIS-3の方が多いという少々不憫な扱い。
「新コンバットチョロQ」では「秘密基地潜入!」に登場。「JS-2重戦車M」名義。タンク解説では「装填に時間がかかりその隙にドイツ軍に装甲の隙間を狙撃されてしまった」と解説されている。
秘密基地を守る戦車として登場しこちらを包囲してくる。
バトルアリーナ「アスレチック」で対戦し、勝利すると使用可能となる。
同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーの武装を装備できる。
