概要
探偵小説の代名詞であるシャーロック・ホームズシリーズを、彼の宿敵モリアーティ教授側の目線から大胆に改変・再構築したハードボイルド・サスペンス作品。
竹内良輔が構成を担当、三好輝が漫画を描いている。
原典における教授は、全く異なる人生を歩む兄と弟がいた次男であったとされている。
本作はその設定を濾し取ってモリアーティ三兄弟を主役とし、彼ら三人が共同で暗躍を行なっていたという、原典には存在しない独自の解釈で描かれている。
そして如何にして「犯罪界のナポレオン」と呼ばれるまでになったのか、どうしてシャーロック・ホームズと対決する事になったのか、そしてホームズが解決してきた数々の難事件の裏では何が起きていたのか、と言った「裏話」を主軸に置いた物語である。
なお、原作は『ジャンプSQ.』2023年1月特大号にて第1部完結という形でいったん幕引きされたものの、どうやらストーリー自体にはまだ続きがあるようで…
メディアミックス
舞台演劇
『舞台「憂国のモリアーティ」』というタイトルで、2020年1月10日から19日にかけてEX THEATER ROPPONGI(東京都港区)にて上演された。その後1月31日・2月1日・2月2日には梅田芸術劇場(大阪市)でも上演されている。
さらに第2弾『舞台「憂国のモリアーティ」case 2』が、2021年7月23日から8月1日にかけて新国立劇場(東京都渋谷区)で上演されている。
ミュージカル
2019年から2023年にかけて5度上演されている。
東京では2021年8月に上演された第3弾『Op.3(オーパススリー) -ホワイトチャペルの亡霊-』を除いて天王洲銀河劇場(品川区)で上演されている(ちなみに第3弾は品川プリンスホテル ステラボールで上演)。
また、関西地方でも上演されてるが、上演劇場に関しては毎回異なる。
ノベライズ
埼田要介によるノベライズが、2018年から2020年にかけて、ジャンプジェイブックスから刊行された。全3巻。
さらにこのノベライズをコミカライズしたものが、『ジャンプSQ』2023年4月号から掲載されている。“本編”同様三好輝が作画を担当している。単行本は2024年4月時点で2巻。
アニメ
2020年秋アニメおよび2021年春アニメという形(分割2クール)でテレビアニメ化された。
アニメーション制作はプロダクションI.G。
TOKYOMX、AT-XおよびBS11、さらには毎日放送にて放送された。
また、放送時期は異なるもののIBC岩手放送やテレビ山梨でも放送されたことがある。ちなみにこの2局は毎日放送とテレビの系列が同じ。
2022年4月には前後編構成のOVA全1巻がリリースされたが、こちらは同年8月にAT-Xで放送されたほか、9月下旬に毎日放送、IBC岩手放送、テレビ山梨などにて放送されている。蛇足ながら地上波では全国ネット枠での放送であったため、東京都における放送局がTOKYOMXからTBSに変更された。
主題歌
第1クールオープニングテーマ
「DYING WISH」
歌:畠中祐 作詞:マイクスギヤマ 作曲・編曲:Rasmus Faber
第2クールオープニングテーマ
「TWISTED HEARTS」
歌:畠中祐 作詞:KOHTA YAMAMOTOとFrance AUDON 作曲・編曲:OHTA YAMAMOTO
第1クールエンディングテーマ
「ALPHA」
歌:STEREO DIVE FOUNDATION 作詞・作曲・編曲:R・O・N。
第2クールエンディングテーマ
「OMEGA」
歌:STEREO DIVE FOUNDATION 作詞・作曲・編曲:R・O・N。
あらすじ
19世紀末、完全階級制度が根強いロンドン。
とある貴族に養子として引き取られた孤児の兄弟は、「貴族」の地位にあぐらをかく両親と息子に苛められ、虐げられる毎日を送っていた。
ただ一つ違うのは、兄は幼くして字の読み書きが出来た上に博識な頭脳を持った天才であった事、それに気がついていたのは実弟と引き取り先の長男だけであった事。
やがて彼は貧富の差が激しくなる様と、下層級を見下す貴族連中、そしてこのような腐敗した社会を正そうとしない政府に怒り、二人と共に「闇側から世界を正す」決意を固め、手始めに自分たちを虐げた貴族一家を抹殺して家をのっとる。
こうして後に『犯罪界のナポレオン』と称される犯罪組織の首領、モリアーティ教授の暗躍が始まったのであった───
登場キャラクター
モリアーティ三兄弟
協力者たち
声:日野聡
モリアーティ家使用人にして構成員。元軍人。
ウィリアムに絶対の忠誠を誓っている。彼の幼少期からの付き合いであり、メンバーの中で一番長い為、よく知っているようだ。
女好き。
声:上村祐翔
モリアーティ家使用人にして構成員。
犯罪ネットワークそのものと言われており、犯罪相談の窓口役。屋敷では庭師として働いている。女装もこなせる変装の達人。
普段は無口だが、ウィリアムと共通して”困ってる人を見過ごせない”性格であり、その実熱い一面を持ち合わせている。
声:鳥海浩輔
黒のアイマスクをした、「Q」のコードネームでMI6に所属するドイツ人の技師。Q課(quartermaster:兵器課)の課長。盲目ながらもその技術は折り紙つきで、時代の先を行く発明品を多数開発している。
目は見えないが表情は多彩でよく笑いよく驚く。
声:日笠陽子
米国出身の女優。英国にまつわるとある醜聞を知ってしまったためにMI6に命を狙われる中、交渉のためシャーロックとモリアーティ陣営の両方に接触していた。その後はウィリアムとの取引によって表向き死亡したことにしてMI6に加わり、男装して「ジェームズ・ボンド」を名乗る。
声:内田直哉
モリアーティ家が火事になった後、三兄弟が一時身を寄せたロックウェル伯爵家の執事。第一次アフガン戦争では”英軍にジャックあり”と敵味方から恐れられた白兵戦の英雄でもある。普段の立ち振舞いだけで、隠していたその兵士であった過去をウィリアムに看破され、貴族たる振る舞いを含めた“特別な教育”を三兄弟に施すことになる。
ホワイトチャペルにてある連続殺人が起きた後、三兄弟を頼ってモリアーティ家を訪れる。
声:川島得愛
スコットランド・ヤード犯罪捜査部(CID)の警部。レストレードと同期の間柄にある。更迭されたアータートンに代わり、CID主任警部に昇格した。裏ではMI6の内通者として暗躍しており、事件やホームズたちの動きを常に監視しアルバートに報告している。「○○のよしみだ」が口癖。
好敵手
声:古川慎
言わずと知れた私立探偵にしてもう一人の主人公。
「諮問探偵」を自称し、労働階級の訛った(コックニー)話し方をする。面倒臭がりでだらしの無い性格に拍車がかかっている。
探偵としての能力は非常に高く、ウィリアムも一目置いている。
しかし本作でのホームズは、モリアーティ達の階級社会に疑問を抱かせるための計画的英雄として担ぎ上げられた存在であり、現時点では彼等の掌の上で踊らされているだけに過ぎない。
ホームズも自分がモリアーティ陣営に及ばない事を自覚しており、時に彼らに頼らざるを得ない事に苦悩する。
(イラスト右側の人物)
声:小野友樹
言わずと知れたシャーロック・ホームズの相棒。アフガン戦争帰りの元軍医。
彼とはとある事件に巻き込まれた所に居合わせ、ホームズの手柄を英国警察(ヤード)に取られたことに憤慨し、事件を元にした小説『緋色の研究』を発表する。
声:阿澄佳奈
ホームズとワトソンが借りている部屋、ベーカー街221Bの家主。
原作と違い、未婚。
自称、永遠の17歳だが四捨五入すると3……。
家賃を滞納しだらしない生活を送るホームズに手を焼きつつも心配している。部屋の中で発砲されたりある作戦の為に部屋を爆破されたりもしたが何だかんだで器が大きいようだ。
声:小松史法
スコットランド・ヤード犯罪捜査部(CID)の警部。ヤードの中ではホームズを信頼している方の刑事。
アータートンの不正捜査を告発した功績としてCID主任警部への昇格を打診されたこともあったが、「もう少し現場で働きたい」という理由からそれをあえて拒否し、同期のパターソンに昇格を譲った。
ウィギンズ
ベーカー街で暮らすストリートチルドレンによって構成されている、ベーカー街不正規隊(ベーカーストリートイレギュラーズ)の隊長。失せ物探しや使いっ走りまでなんでもこなすホームズの手足。隊員に、バトラー、ユーリー、グリーン、スカイ、リードなどがいる。
イギリス陸軍関係者
声:安元洋貴
イギリス陸軍情報部の長官でアルバートの直属の上司。シャーロックの兄。
アルバートがMI6に移ったあとも、大英帝国からの指令をアルバートに下す立場としてしばしば登場する。シャーロック曰く“政府そのもの”。
弟を上回る推理力を持ち、詰めが甘くて決めつけすぎるきらいがある彼に苦言を呈する事がある。
マネーペニー
MI6の女性諜報員。元々はMI5所属だったが、MI6設立にあたりアルバートに引き抜かれた。
モランからは第一印象で「陰気」と言われたが立派な物をお持ち。
スコットランド・ヤード関係者
グレッグソン
スコットランド・ヤード犯罪捜査部(CID)の警部補。シャーロック・ホームズをライバル視しているが、いつも彼に先を越されている。また、プライドの高さに反して(ネームドキャラの中では)職階が低く、シャーロックからはこのことをよくイジられている。
主要キャラと比べると捜査能力・推理力が劣っているものの決して無能というわけではなく、警備の現場指揮を任された際には的確な指摘をするなど有能な一面を見せることもある。
アータートン
スコットランド・ヤード犯罪捜査部(CID)の元主任警部。レストレードやパターソンの上司に当たる人物だったが、「スコットランドヤード狂騒曲」編にて保身と出世のために不正捜査を行っていたことが発覚し、更迭された。
アメリカ編の主要登場人物
アメリカ司法省経由でピンカートン探偵社に勤めている好青年。
かつては“ビリー・ザ・キッド”という義賊として国内外で知られていた人物だったが、とある事情から対立してしまった親友ギャレットとの一騎打ちに敗北、公式にはこの一騎打ちで死亡したものとして処理されたが実際には運よく生き延びており、その後は司法省の一職員として職務に取り組んでいる。
作中ではウィリアムとシャーロックの両名を救出し、二人をピンカートン探偵社にスカウトしたほか、後述したマギンティとの地域紛争にもシャーロックとともに加勢している。
主な敵対者
イギリスにある多くの新聞社・広告会社を経営している実業家。その影響力の大きさから“メディア王”という異名で知られる経済界の大物。
そんな彼だが実は“脅迫王”という裏の顔もあり、裏社会や探偵業界では、自身の持つ情報力を駆使して人の弱みを握っては脅迫し、数多くの人間を破滅・堕落させることを楽しんでいる外道としても知られている。そのやり口は実に巧妙であり、彼が関与している事件に関しては、あのシャーロック・ホームズをして何度も苦渋を飲まされた模様。
ジャック・マギンティ
“恐怖の谷”編に登場するアメリカの地上げ屋。
スコウラーズと呼ばれる悪徒を雇い、脅迫や暴力を用いて地上げを行う …どころでは済まず、自分の意に背く者がいればたとえ協力者であっても容赦なく殺してしまう外道。ミルヴァートンとはまた性質の異なる“クソ野郎”である。
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