概要
コーディネイターの次の進化人類。
最高評議会議長ギルバート・デュランダルが提唱したデスティニープランを管理し、人々を導く者としてつくられ、テレパシーや人の心を読む能力を持つ。アウラがメンデルで開発に関わり、デュランダルやラクスの母親も共同研究者だった。
───『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM Special Edition 運命に抗う意志』より引用。
デュランダルとアウラが開発を行っていた究極のコーディネイターのこと。ラクスの母親も研究に関与していたと見られる。遺伝子調整によって身体能力を高めている他、アコード同士はテレパシーを使ってコミュニケーションをとることができるなどの特殊能力を持つ。
───『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM キャラクターアーカイブ』より引用。
「とりあえずこの子たち全員が挫折を知らないエリートです。そして、自分たちのあらゆる価値観に対して疑問を持ってない。この2点は絶対必要かなと思います」「教育的な部分も大きいと思いますけど、彼らは実際に何でもできるからタチが悪い。もちろん彼ら同士でも対抗心とかライバル心みたいなのがあるんでしょうけど」(HOBBY JAPAN 2024年4月号・監督インタビューより抜粋)
能力
ナチュラルはおろか並のコーディネイターでも太刀打ちできない戦闘能力とパイロット能力を備えている他、
- 言葉を交わさずともコミュニケーションが取れる。
- 人の心が読める。この能力を知らない人間が相手の場合、こちらが問い掛けるだけで相手の頭に無意識に答えが浮かんでしまうため、隠し事は不可能となる。たとえ知っていても、いつ読んでくるかもわからない為、対策を講じるのは困難だろう。
- 戦艦の中で宇宙にある対象の位置を探す感知能力。
- 更には一種の洗脳状態に陥れていた。
- 隠れているものを見通すことができる。
グリフィン・アルバレストによる精神干渉のプロセスは、小説版によると
【対象の精神波動を探る→対象の精神に触れると碇を打ち込むようにリンクを確立→「闇に堕ちろ」→奥底にあるどす黒い感情を励起させる】
といった流れ。干渉を受けた人物の目は充血したかのようになり、やがて眼が赤くなってしまう。キラ・ヤマトには見えるはずのないミケール大佐を見せていた。また、ある種の錯乱状態となり他の人間からの声掛けに聞く耳をもたなくなってしまう。
余談になるが、本編だとキラが「闇に堕ちろ」を喰らった時に見たものはラウ・ル・クルーゼのみな一方で小説版はラクス、オルフェ・ラム・タオ、無数の死者、デュランダルを見ている。
劇中でこの精神干渉を行ったのはグリフィンとラクス。「ラクスがアコードの力でキラに戦艦を見せた時、グリフィンが『闇に落ちろ』と言ったのと同じことをしているんです。精神を共有して、ラクスの思考がキラのビジョンに落とし込まれている。だからキラの目が一瞬、ラクスの目と同じ色になっているんです。わかりにくいですけど(笑)」とアニメージュ4月号で監督は説明している。
さらに後のイベントの際にラクスが見ていた夢はアコードの干渉なのか質問され「ラクスの能力的にオルフェの顔を見てしまった、というのは考えられますね。実は『SEED DESTINY』の最後の方からそれっぽいような描写をちょこちょこ出していた」などと答えている。実際最終決戦の際にラクスがSEEDの発現時にキラの精神を感知していると受け取れるような描写があるので、恐らくはこれを指している可能性が高い。
監督曰く、アウラとユーレン・ヒビキは共同研究しているのでスーパーコーディネイターにアコードと近い遺伝子やテクノロジーを放り込んでいるのではないかなという設定。キラに対する「失敗作」という台詞は両澤氏によるもので、アコードはESP、ムウ・ラ・フラガはニュータイプ的なもの、キラはアコードほどの能力はない普通のコーディネイターという意味合いだったと思いますと、考えて述べている。
激戦を生き抜いてきた戦闘経験豊富で優秀な軍人のアスラン・ザラをしてシュラ・サーペンタインはまともにやり合っても勝てない力量の相手。キラがオルフェと互角であることからも、彼らが持つ資質は確かなものだろう。
小説版だとSEEDを発現したキラが「パイロットもスペックではあちらの方が上だ」とオルフェの言い分を肯定している。
弱点
コーディネイターを上回る高い基礎能力に加え、ナチュラルやコーディネイターを問わずに精神へ干渉する能力は確かに恐るべき「脅威」と言える。
「闇に堕ちろ」など、読心以上に対策を取りようがない。シン・アスカが無事だったのは例のアレが守ってくれたからである。
だが「自分達が成功を納めるのは当然のことである」という過剰なまでの全能感に溺れ、「敗北」や「挫折」、「恐怖」、「絶望」、「理不尽」、「不条理」といった人が生きていく以上いずれは嫌でも思い知る事になる所謂「負の経験」が皆無であった。
これらの成功体験しかない背景からか、想定外のことに対する耐性が低い。要は非常に高い資質を持っているが、温室育ち。
並びに精神面においても自分の能力を見せ付ける為にわざわざ挑発紛いな真似をする軽薄さや幼稚さが目立ち、『人を導く』という大義名分の元に生み出された存在にしては人を導く為に必要なカリスマ性に著しく欠けている者が大半を占める。
これも遺伝子や才能など、限られた物差しだけで人の存在価値に優劣を付けようとするデスティニー・プランの弊害であるといえよう。
また、ムウから「どうもまともな軍隊には見えんってことだ」と評されている。小説版では前述の発言にルナマリア・ホークは言われてみれば確かにと考え、「マスクで顔を隠した少年といい、甲高い声で笑う少女といい、軍人らしい規律とは無縁に見える」「能力は高いのだろうが、彼らはむしろ不良少年の集まりみたいだ。能力主義で各自の自主性が求められるザフトでさえ、彼らよりはるかに軍隊らしい」と思っていた。あまつさえ「自分が彼らを指揮する立場ではないことを、ルナマリアは心の中で感謝した」とまで。
「心を読む能力」はアコードの一人がある人物への感情を心の奥底に隠して周囲に全く気付かせなかった事や、シュラがアスランの乗機に内蔵された「切り札」の存在を実際に喰らうまで見抜けなかった点などから「今、何を思っている」レベルの思考を読めるだけで、心の奥底に隠した心理まで未然に読める訳ではない様子が窺える。
あくまで「心を読まれる」など想定外であるという相手に限った優位性ということだろう。
また、所謂「考えるより先に身体が動くタイプ」の人間を相手にするのも苦手なようで、SEEDを発現させたシンに対してダニエル・ハルパーが「こいつ、考えてないのか!?」と叫んでいた。(アニメージュ4月号で「文字通り何も考えず戦っているわけではないと思うのですが」と問われた福田監督は「ええ、シンは反射神経で戦っているんです」と答えている)。
更には、精神干渉できる故に相手の思考が想定外のものの場合や心の闇が深すぎる場合は逆に読んだ側が影響されてしまう場合がある。また、アコード同士で精神をシンクロさせている場合は連鎖的に影響を受けてしまうようで、リデラード・トラドールが死の恐怖に怯え断末魔の悲鳴を上げながら戦死した結果、リデラードの感情を読み取ってしまった他のアコード達三人は連鎖的に恐慌状態へと陥り、その最中に討たれている。
そもそも、実戦経験を積もうにも彼等の戦闘は
- 事前にNJダズラーによる通信妨害を発生させる事で相手の耳と口を塞いだ状態に追い込み、読心能力で相手の行動を先読み、無人MSによる弾幕で逃げ場を塞ぐ
- 自分達はテレパシーで自在に連携が取れる上に、必要が生じれば精神干渉で敵を錯乱させる事が可能
- 搭乗機体は牽制射程度ではびくともしない堅牢な装甲を持ち、こちらにダメージを与えうる敵や武装は奇襲で真っ先に分断or破壊する
といった具合で相手がカタに嵌まり切ったところを悠々と掃滅する、言ってしまえば「初見殺し」「わからん殺し」が基本戦術であり、元より状況変化に対応する経験を積める様な戦い方ではない(あえて悪い言い方をするなら『檻に放り込んだ猛獣を檻の外から槍でチクチク突いている』ようなもの)。それどころか、回数を重ねれば重ねる程読心能力と機体性能に依存するようになっていくことは明白である。事実、アコードの大半は生き死にの戦いの最中にも緊張感を持ち合わせていなかった(強者の余裕の可能性も否定できないが、何れにしても結果的には相手の実力を過小評価した慢心によって持ち崩したのは事実である。上記の例えに併せるならば『檻の蓋がいつの間にか開いてる事に気付いていなかった』というところか)。
結論としては、彼等は対等の相手同士の殺し合いである『戦闘』の天才というよりは、一方的な片殺しである『狩り』の天才であったというべきだろう。
上記の弱点も、その殆どが自分が攻め込む「奇襲」ではなく、相手を迎え撃つ「迎撃」の際に露呈したものである。こっちから一方的に不意討ちする分には強いが、総じて事前対策を打たれての護りには脆く、相手がこちらの企みを突き破ってくる地力を持っていた場合の次善策を持ち合わせていないことが弱点だと言える。
結局、どんな優れた才能や超常的な能力を付与しても、それが本人の努力によって培ったもので無いのなら、それを十全に扱う精神が独りでに付いてくる事などそうそうなく、むしろその才能に「使われてしまう」のだ。
なんとも皮肉だが『「タネが割れれば」大したことない』というところであろう。
アコードとデスティニープラン
「曲がりなりにも平和を目指したデュランダルが管理者を作ろうとしたとは考えられない、本来の理念とは異なる存在としてアウラ個人によって創造された」といった視聴者の意見もあるが、デュランダルがアコード開発に関わっていたことは確実である(冒頭の言葉、幼児化してるアウラや幼少アコード達と手を繋いでる写真、ターミナルの調査結果)。公式サイトには「ザフトからの支援で、ユーラシア連邦から独立した国家」ともある。
- しかしその一方で、ラクスへの対応の違いからデュランダルとアウラに意向の相違があったのは間違いなく、彼等がいつ袂を別ったのかについては不明。曲がりなりにも争いの無い世界を作ろうとしていたデュランダルが、他者に対する隔絶的な蔑視感情を持っているアコード達に世界の舵取りをさせようとしていたとは考えにくく、アコードという導き手の存在こそ必要性を見出だしていたが、アウラの彼等に対する教育姿勢を問題視した可能性は少なくない。言うなれば「よくも偏見の塊に育ててくれたな!」といったところなのだろうか ?なお、小説版にて「アコード達とデュランダルとの関係」について映画では描写されていなかった情報が明かされているが…?(後述)
そもそも彼等という存在の根底にあるのは平和への願い…などではなく、そこにあるのはC.E.における憎悪と流血の根本的元凶といってもいい『他者より強く、他者より先へ、他者より上へ』というスローガン、自分が上に立つのではなく、他者を下に置こうとするエゴイズムである。
自らを『新人類』と称する彼等であるが、その実態はデスティニー・プランに最適化出来るように作られただけの結果・成果至上主義に基づく旧態の延長線上の存在でしかない。2度に渡る大乱を経てなお、その様な価値観に唯々諾々と従うことが出来る人間など存在しないだろう。
『敷かれたレール、に定められた運命の上を疑うこと無く歩いている』彼らが、例え不完全であろうとも『愛と自由に生きる確固たる意志』を持った人々に敗北するのは必然だったのである。
- 一部、あまりにもフリーダム過ぎる男に死んでも死にきれない負け方をして「流石に哀れ過ぎる」と観客に同情された男もいるが…。
しかし、イングリットが秘めていたものが「人間を成長させるチャンス」とも言えるものであったため、人間の自主的な成長を奪う「デスティニープラン」そのものの危険性、負の側面が劇中では描かれていた。
さらには、彼女が人知れず行っていた努力…秘められていた想いを誰にも悟られず隠す行為は「アコードの能力のデメリットに気付き、リンクしてはならない思考のリンクを遮断する」事であり、まさにアコードの弱点の対策そのものであったため、誰かが彼女の心の内に気付き、異端と排除せず有用と見抜くことが出来ていれば結末は変わっていた可能性がある。
あるいは、普通の人間にとって読心や精神干渉などの超能力は使えないのが当たり前であり「既存の社会の優等生は超能力など使わず現在の地位にいる」ことに着眼し、自分達が「優れている」のではなく「外れている」という自覚を持ち合わせていれば、あそこまで持って生まれた超能力に依存し、詰めを誤り墓穴を掘るような戦い方はしなかっただろう。
地球が誕生して以降、異質な存在が種を「進化」させてきたことを考えると、彼らは進化の袋小路を抜け出す手段を自らの手で放棄してしまったとも言える。
そう言う意味では、彼らアコードはデスティニープランのせいで自滅してしまったのかも知れない…。
小説版にて
イングリットとリデラードは姉妹の関係にあたるが、アコードは全員が兄弟で姉妹なのでそのことはあまり意味はないと触れられており、小説でも互いへの言及はなかった。また当事者達にはそういった認識はないようで、オルフェやイングリット視点でも仲間という言葉しか使われていない。
そして映画でははっきり描かれなかった「アウラとアコード達とデュランダルとの関係」について小説版下巻で描写されている。
メンデルでアウラとユーレンはライバル関係で、ともにより優れた人類を作り出そうとしていた。そんな折、アウラはデュランダルと出会い、ふたりは今の世界を公平で平和な世界に変えたいと望み、その世界を導く存在を創り出す役目をアウラは担う。そして、すべてにおいて卓越した能力を示し、他者と完璧に融和できる個体、新しい世界にふさわしい子ども達を誕生させた。
「デュランダルはラクスをあきらめ、切り捨てようとしたが、アウラは反対だった。」と記述されているので、ラクス暗殺はデュランダルの独断で行われた可能性が高い。デュランダルが実際にラクスを殺害しようと動いたことをアウラが知っているのか不明だが、少なくとも直接聞かされでもしない限り第二次大戦のラクス暗殺未遂をアウラが知る術はない。
なお、オルフェがキラと交戦時「自分たちにとって父とも言えるデュランダルを殺し、デスティニープランを頓挫させ、自分たちの存在意義を奪った。そのうえラクスまで───!」と内心で語っている。またオルフェだけでなく他のアコード達もラクスを待ち望んでいた事実から、アウラはデュランダルがラクスを諦めて切り捨てようとしていた事はオルフェ達に伏せていたのではと思われる。
(デュランダル視点で書かれていないのでデュランダルが実際に彼らをどう思っていたのかまではわからない。)
該当者
ラクスとオルフェ以外のメンバーの苗字はすべて古代に使われていた銃(ダニエルのみ剣)の名前からとられている。
関連タグ
カナード・パルス:アコードやキラと同じく、コズミック・イラの業の深さにより産み落とされた者の一人。方向性は真逆ながらも己の出自や運命に縛られていたが、ある者との出会いによりそれらを吹っ切る。アコード達にももっと早くそのような出会いがあれば、彼らの運命も変わっていたかもしれない。