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イングリット・トラドール

いんぐりっととらどーる

イングリット・トラドールとは、劇場版アニメ『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の登場人物。
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「わからない…どうして?」


プロフィール編集

生年月日C.E.54年8月23日
星座乙女座
年齢20歳
身長159cm
CV上坂すみれ

概要編集

新興国ファウンデーション王国の女王親衛隊「ブラックナイトスコード」の一員で、国務秘書官を務める女性。

宰相であるオルフェ・ラム・タオを行政面でサポートしている。

年齢は20歳で、同僚のリデラード・トラドールは妹。

予告PVでは、オルフェとラクス・クラインが通り過ぎた後、悲しげに見ている。

グリフィン・アルバレスト、妹のリデラードと異なる浮かない顔。その心中は果たして…?


関連タグ編集

機動戦士ガンダムSEED FREEDOM ファウンデーション王国

ブラックナイトスコード


以下、ネタバレ注意!!編集














































その正体はアウラ・マハ・ハイバルによって生み出された、デスティニー・プラン導入後の世界で人々を管理するコーディネイターを超えた存在アコードの一人。


優生思想の塊で好戦的な性格揃いのブラックナイトスコードの中では珍しく、(表向きは)客人のキラ・ヤマトたちを見下すシュラ・サーペンタインらを注意するなど、礼儀正しく穏やかな性格。

一方で、後述するようにコンパスを罠に嵌めて罪を被せ葬り、自国の首都を核で焼き払い、オルフェの演説を(ユーラシア連邦首都をレクイエムで壊滅させた直後である)微笑んで見ていることからも、決して完全な善人というわけでもない。

ただし、自作自演による核攻撃で滅んでしまった自国の首都イシュタリアの有様に対して、物憂げに嘆息しながら目を瞑るなど、少なからず自国民に対する所業に対しては「罪悪感が無い」とは言い切れない(特に小説版では「悲しげに顔を背ける」と明確に記されており、ただでさえ痛ましかったのに、より悲劇性が増している)。


オルフェのことを一途に愛しているが、オルフェの運命の相手として生まれたのはラクスで、自身には彼を愛する資格がない。そのため、恋心を口にすることは出来ず、彼がラクスに言い寄る様を陰で眺めながら何度も涙を流しており、ジレンマに深く悩み苦しんでいた事が度々描写されている。


総じて、真っ当な人間性を持ちながらも、自分たちの価値観には疑問を持っていなかった故にアウラとアコードたちと共に所業を犯し、自らの本心すら打ち明けられず苦しみ続けるその姿は、正に加害者であると同時に毒親の被害者であると言える。作中で彼女が笑顔を見せたのは、オルフェが全世界に向けて演説している時だけだった。


ラクスを体よく攫った後は宇宙要塞アルテミスの一室に軟禁した彼女に世話係のように接していたが、オルフェの愛を受け入れようとしないラクスに疑問と抑えきれない羨望を向け、ラクスに自分の気持ちを見抜かれて問いを投げかけられてからはより一層揺らいでいく。


要塞内にキラ達が突入した際にはラクスを人質にとってナイフを突きつけ、 「少しでも動けばこの人の目を潰すわ! 喉を切ってもいい! 歌えなくなったこの人を、それでも愛してるって言えるの!?」 と問いかけるが、キラに「ああ! その目が見えなくなっても、声が失われても、ラクスはラクスだ。僕はその全てを愛している!」と躊躇いなく晴れやかに即答され、その言葉にラクスが言った必要だから愛するのではありません!愛しているから必要なのです!を思い出し、続いてトリィブルーが飛び出したことで不意を突かれ、その隙にナイフに向かって倒れ込むようにラクスが飛び出して来たため、咄嗟に刃先を逸らしてしまう。直後、飛び出した彼女を庇うキラに銃を向けるがレドニル・キサカの機転で銃を弾き飛ばされ、すぐさまナイフで切りつけるが髪を少し切っただけでダメージは与えられず、それどころかカウンターの如くキサカのタックルを食らってしまい、倒れた隙に銃口を向けられて完全に動きを封じられた末、目の前で幸せそうにお互いを抱擁するキラとラクスを目の当たりにしてしまう。

キラ達が部屋を出る前、ラクスに「ごめんなさい」と謝罪を受けたことで「行って!」と苦しげに返し、堰を切ったように泣き崩れた。


アルテミスから航宙戦艦グルヴェイグへ移った際、ラクスを奪われる失態を犯したことで怒り狂った顔をしているオルフェに見下ろされ、さらに左手の甲で張り倒された上、アウラからは咎めるような視線を向けられてしまう。

その後はブラックナイトスコード カルラの大型ドラグーンシステム「ジグラート」の火器官制担当としてオルフェと共に搭乗して出撃する前に「お前も自分の価値を証明してみせろ!」となじられた。


ラクスは戦闘の停止を呼びかけたり、必ず誰かがあなたを見ていると伝えるがオルフェは聞く耳を持たなかった。

死闘の果てにマイティーストライクフリーダムガンダムのフツノミタマがカルラのコックピットを貫くが、貫かれる直前、自らの役割に背く形でオルフェの元に行き、その身体に抱きついていた。


重傷を負いながらも、それでも尚「私には、使命が……」と自らに定められた役割に拘るオルフェに 「もういいのよオルフェ…」 と優しく声をかける。

「もういいのよ」

「私は、知っているから……」


そして目を閉じたオルフェを見つめたまま、共に爆炎に飲まれていった。


ただひたすらオルフェを愛し続け、最期までオルフェを見ていたイングリット。

オルフェはイングリットの愛に気づいてくれたのか、イングリットの想いは果たして報われたのか。それはもう、誰にもわからない。



重傷を負ったオルフェと違いイングリットは無傷だったので機体から脱出することも不可能ではなかったはずだが、そうしなかったのはイングリットが生まれて初めて選べた「自由」であった。最愛の存在を抱きしめて逝けたのは幸せな結末だったのかもしれない…。


余談編集

演者の上坂女史は福田己津央氏プロデュース作品の『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞』でモモカ・荻野目を演じている。

また福田氏が総監督を務める『グレンダイザーU』にて弓さやか役、上司であるオルフェ役の下野紘氏は同作にて兜甲児を演じている。

ガンダムシリーズにおいてはアニメ作品の出演はないものの、漫画『機動戦士ガンダムN-EXTREME』のネイア・e・ピケ役(EXVS2OBでのナビキャラクターのボイス)や、ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション Code Fairy』のリリス・エイデン役(同作およびバトオペ2のオペレーター)で出演している。

ちなみに妹のリデラードとは髪色と合わせて『ポプテピピック』のポプ子ピピ美がモデルではないかとSNSで一部話題となった。(上坂がポプテピピックのアニメ一期でピピ美役(の一人)や『☆色ガールドロップ』の夕陽ころな役で出演していたことや、主題歌を担当していたことも原因の一つだろう)


イングリットを演じるにあたって上坂女史は監督から「イングリットは『ひと言でいえば、陰の女です』というご説明がありました。アウラによってつくられた子供たちなので、一応妹とされるリデラートにも特別な感情はないこと、しかしその一方で秘めている感情はあり、イングリットはオルフェを一方的に慕いつづけている、というひととおりの性格についてお話をいただきました」2024年の3月号『月刊Newtype』で答えている。


影のヒロイン編集

劇場版のテーマを敵側で担い体現する重要なキャラクターで、そして切なくも健気な愛情から公開早々なかなかに人気が高く、ラクスが「光のヒロイン」であるのに対しイングリットは「影のヒロイン」とも言える存在かもしれない。


異端のアコード編集

アウラの育成下にありながら何故イングリットは他のアコード達と異なる成長をしたのか不明だが、周りのアコードが人間が生きていく以上は嫌でも思い知る、体験する羽目になる「失敗」や「挫折」を知らないまま育った中、イングリットだけは「自分の想いは絶対に実らない」という特大の挫折を否応なしに味わいながら生きてきた為ではないかと考察する声もある。


ラスボス機サブパイロットとして編集

上記の通り劇場版のラスボス機体であるカルラの火器管制担当のサブパイロットとして搭乗する。

しかしそれゆえに「オルフェ、お前一人でこの機体動かせないのかよ…」と微妙にオルフェのパイロット能力がディスられる原因になってしまっている。

ただし、専用ドラグーンであるジグラートの操作などがイングリットの主な役割であり、ドラグーンや機体操作はオルフェが担当していると言及されている。

  • 小説版ではイングリットは出撃前に絶望のあまり自らの心を殺そうと「私はこのジグラートと同じ、機械だ。オルフェを支えるための道具だ」と自分に必死に言い聞かせていた。そこにオルフェを支えられる喜びは一切無かった。

デスティニープランによる適性検査によってイングリットがサブパイロットに選ばれたのだとしたら「オルフェの『番』としての遺伝子適性の相手はラクスでも、『相棒』としての遺伝子適性の相手はイングリット」で、イングリットはオルフェに対し『定められた遺伝子の適性の関係』以上の想いを抱いてしまったのだろうか?


遺伝子的に編集

一部の視聴者の間で「オルフェに惹かれたのなら場合によってはキラにも惹かれていたのでは?」というように考察されている。理由は「オルフェとキラの遺伝子が酷似している」ためであり、仕組まれていたとはいえそれによってラクスもオルフェに惹かれていた。


名前の由来とモチーフ編集

「イングリット」という名前は北欧起源の女性名であり北欧神話の男性神「フレイ」が語源となっているのではないのかと考察されている。

  • (最初は)偽りな愛でもキラを癒すことが出来たフレイ・アルスターと、本物の愛でもオルフェを癒すどころか見向きすらされないイングリットと考えると皮肉にも程がある残酷な命名となっている。つまり、オルフェとイングリットの関係性はキラとフレイ、延いてはキラとラクスアンチテーゼとも言えるのかもしれない。
  • イングリットの名前と監督がオルフェを「明るいキラ」だと言われたことを関連付けて、オルフェとイングリットをアナザーキラとアナザーフレイだと解釈するファンもいるが、公式関係者が言及したことはない。「フレイを想起させるキャラクターです」や「フレイを彷彿とさせる女の子にしたい」など監督が説明したのはアグネス・ギーベンラートである。

名字の「トラドール」はインドで使われていた銃の名前が由来だと考察されている。


青髪にした理由について監督はサンライズ作品の青髪ヒロインは不幸になる」という伝統に則っているためらしい。


舞台挨拶で監督は、「彼女の救済は『スーパーロボット大戦』がやってくれるだろう」と言及をしている。イングリットが救済されるには想い人のオルフェも死亡せず、彼女からの愛に気付き、愛を理解して受け入れ、相思相愛になることが絶対条件だろう。

ちなみにこの舞台挨拶で上坂は「オルフェのどこが好きなんだろう」と口にして監督に「見つけてあげなよ」と言われて上坂はオルフェの良いところを探して「才能があれば誉めてくれそう」と挙げ、監督は「良いところは顔と声だけだよ。でもそういう解釈もいいんじゃないかな」というやりとりがあった。


2024年3月17日の舞台挨拶における監督曰く、イングリットがオルフェに惹かれたのは顔、遺伝子レベルで好きな顔。イングリットはラクスに遺伝子が似てる所があるので、オルフェと結ばれる可能性はあった。ただオルフェはラクスと共に人類を導くという思想で固まっているので、ラクスのことしか見えていない。のだそうだ。

見向きもしてくれない相手を深く愛している健気さ不憫さが印象的ゆえに惹かれた理由が顔と言われると残念感が拭えないが、あくまでキッカケの話だと思われる。イングリットも惹かれた最初の要因が遺伝子だっただけで、次第にオルフェそのものを愛するまでに至ったのは想像に難くない。


小説版編集

後藤リウ氏の小説版『SEED FREEDOM 下』ではオルフェに対する感情が詳細に書かれている。

ずっとオルフェを見ていた。生まれたときから、ずっと。オルフェは彼女にとって太陽だった。閉ざされた研究所の中でも、幼時を過ごした教育施設の中でも、光り輝いて皆の気持ちを明るくしてくれた。施設を出て、見知らぬ地上へ来たときも。デュランダルが死に、彼らの道が閉ざされたかに見えた時も。ずっと変わらず信念を持ち続け、その明るさと強さで、皆を導き励ましてくれた。」「そんな彼に対して、特別な想い───許されざる想いを抱くようになったのは、いつだっただろう?」「その想いはイングリットの胸の奥深くに根づき、気づいたときにはもう手のつけようのないほど浸食していた。」


オルフェがラクスに拒絶されて部屋から出てきた時には「彼の苦しみが胸に痛い。世界の支配者たるべき彼が、拒まれ、傷つく姿など見たくはなかった。でも───彼の望みが遂げられ、ラクスと結ばれる姿を見れば、この心はさらに激しく痛むだろう。どちらに転んでも地獄だ。たとえ彼がラクスと結ばれなくとも、自分に希望などないとわかっているのに。それが、運命だ。」と独白している。


アルテミスでラクスに本気で憎悪を抱いており、「本当に撃ち殺してやろうか? 誰にも得られぬように。キラ・ヤマトにも───オルフェにも」と考えてるも、その最中にキラたちが部屋に突入してきたことで逡巡が中断された。グルヴェイグでは今更もう生き方を変えられない自分の人生に絶望し、ラクスに切ない憧れの目を向けている。

「───私は、あなたのようには生きられない……」


「オルフェは彼女を路傍の石のように簡単にやり過ごし」「オルフェは彼女の顔になど目もくれなかった」など痛ましい記載がされ、オルフェとアウラに冷ややかに見下ろされるのみならず、オルフェからは「これまで有能で、何ひとつ不満を感じさせることのない女だったのに、これほど使えないとは! 泣いて何の役に立つのか。それで失敗が少しでも打ち消されると思うのか」と心の内で罵られるなど散々な目に遭っている。


オルフェの心情は書かれず逝ったため映画同様にイングリットの想いは伝わったのか、オルフェはどう思ったのかなど分からないがオルフェの頭をかき抱いて「私は、知っているから……」と伝え、「抱き寄せたオルフェの表情が、ふっと安らぐ」とは書かれてあるのでイングリットは救われたことだろう。少なくとも確実にシュラたちよりは幸せな最期を迎えられた。


愛に資格が必要ないのなら。わたしは胸を張って言おう。あなたを愛していると。愛している。愛している……。


初期設定編集

監督「実は最初の構想ではもうちょっとサイコなキャラクターだった。『目を潰す』『喉を切る』という台詞を口には出さず、それを心の中で思いながらラクスを見てるキャラだった。ラクスになれなかった女の子なんですよ。それが今回シナリオをやってくれた後藤リウさんとやりとりしてるうちに、なんか人間っぽいキャラクターになった」(TOROアニメーション総研)


また、3月5日に福田監督のX(旧Twitter)で両澤千晶の初期設定メモが公開された。なお監督は「ファウンデーションメンバーの設定はだいぶ変更になってます」と明言されている。


イングリット・トラドール(アコード/21歳/女)

オルフェの秘書官、腹心、恋人。オルフェ達の姫、つまりはラクスに成れなかった女性。それを恨んでもいないが、内には焔がある。いつも伏目がちで無口。常にオルフェ最優先で行動する。艦隊の指揮を取る。最後はオルフェとMSに搭乗する。極めて高い演算能力を持つが、感情には不慣れ。特に自分の感情を持て余す。

ちなみにオルフェの初期メモには「イングリットという恋人がいるが、真実の相手はラクス」「アウラを絶対視。キラは宿敵。アウラがラクスの目を覚まさせると信じている」とある。


初期稿だとオルフェと恋仲になっているので幸せな身の上だったのか、はたまた恋人とは名ばかりのものであったのか詳細は定かではないが、彼女が21歳でオルフェとラクスが20歳であることから「『ラクス』の失敗作であり、とりあえずの代用品」レベルの扱い感があり、ひょっとしたら、本編より悲惨な境遇だったのかもしれない。


最終的に自身の役割とオルフェへの愛の狭間で葛藤する良識的な人物像になったのは御覧の通りではあるが、もし当初の悲惨な境遇と危険な性格設定のままであったなら作品自体陰鬱ものになっていただろう。


演者の見解編集

雑誌インタビューやイベントにおいて、担当声優の上坂すみれ氏はイングリット・トラドールというキャラクターについてこう述べている。

  • イングリットは自分をかなり強く律していて、自分の口から出ている言葉でもどこか自分自身の言葉ではないことを話しているイメージが全体的にありました。
  • ラクスとキラが自分自身の意志で愛を手にしている姿を見て感情が溢れ出し、かつてないほど自分の感情に苦しめられ、やがて「自分がオルフェを想っていてもいいんだ」という気持ちに至るまでの過程が表現できるよう意識しました。
  • 「必要だから愛している」のではなく、「愛しているから必要」ということをオルフェに最期には伝えることができたと思います。
  • 「使命を果たす存在」ではなく「二人の人間」としての時間が少しでも訪れたのであれば、イングリットにとっては報われた瞬間だったのではないのかと思いました。生きているのが一番なんですけど……!
  • オルフェは真っ直ぐで、自分の行いに自信があって、慕い甲斐のある存在だと思います。イングリットは、そんな眩しいオルフェに言葉をかけられ、忠臣として頼られて一緒にいられるだけで幸せなのだと思います。
  • どんなにオルフェに厳しく当たられても、「でも好きだから……」みたいな表情をするので切なくなります……!
  • イングリットも本当に可哀想な人、その2です(笑)。けれど最後の最後で、イングリット的には想い人と添い遂げられたという点で、やっぱりオルフェが一番可哀想ですかね。

関連イラスト編集

センシティブな作品センシティブな作品

イングリットイングリット


関連タグ編集

アコード(ガンダムSEED) オルイン 悲劇のヒロイン 哀しき悪役

右腕 女性秘書 サブパイロット 毒親の被害者 アンティテーゼ 消失系ヒロイン


ナナイ・ミゲル:宇宙世紀(U.C.0093)における似たようなポジションのキャラクター。作中での扱い(表向きは愛人であるナナイと小間使いでしかなかったイングリット)から顛末(ナナイは先立たれ、イングリットは添い遂げる形で戦死)までもが対照的だが、パイロットでありながら政治家でもある男を慕い側で支えてきたという共通点を持つ。

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