オペレーター「シアー開放。カウントダウン開始。発射までTマイナス35」
ロード・ジブリール「さあ奏でてやろうデュランダル!お前たちのためのレクイエムを!!」
概要
地球連合軍の月面ダイダロス基地に設置された戦略兵器。分類は軌道間全方位戦略砲。
月面に設置されたレクイエムの本体となる巨大な大出力ビーム砲、月の周辺に配置された廃棄コロニーを使用した「中継点」を担うビーム偏光ステーション(以下、中継コロニー)で構成される。この一連のシステムやプロセスはレクイエムシステムと呼ばれる場合もある。
レクイエムとは鎮魂歌を意味する言葉。
中継コロニーにはエネルギー偏向装置「ゲシュマイディッヒパンツァー」が配備されており、位置を調整することによって月の裏側「ダイダロス基地」に籠城しながら射線の偏向によって好きな場所へと戦略級のビーム(所謂、コロニーレーザー並みのビーム)を発射する事が出来る。
その威力は1発だけでプラントを構成する複数のコロニー、その外壁をまるで刃物によって切り取るかのように切断して崩壊させられる絶大なものであり、アスラン・ザラはかつての戦略兵器ジェネシスに匹敵するとまで畏怖している。
一方でレクイエムシステムはその性質上、本体であるビーム砲の射角はほぼ固定されている状態なので、中継コロニーが無ければ真っ直ぐにビームを発射する事しか出来ず、目標に対して正確に照準して発射するために中継コロニー、特にビーム砲の真上にある第一次中継点の中継コロニーを配する必要がある。これは逆に言えば第一次中継点の中継コロニーに不備が生じれば事実上目標への発射が不可能となることも意味しており、レクイエムにおける最大の弱点となっている。
他にも発射には莫大な電力を必要とするため、連射は出来ず1発ごとにチャージする必要がある。
ダイダロス基地
地球連合軍によって月の裏側に建造された軍事拠点。劇中ではほぼダイダロス基地=レクイエムと言う扱い。
小説版によると、レクイエムの設置が本来地球連合軍の前線拠点であるアルザッヘル基地ではなく、月の裏側であるダイダロス基地に配備されたのは、プラントから見て正面に位置するアルザッヘル基地の反対側に位置しているため警戒されにくい事やダイダロス基地は資源基地であるため、既に大規模な地下空洞のスペースが確保できること等が挙げられる。
位置の関係上、プラント方面からダイダロスの直接攻撃には膨大な戦力を有するアルザッヘルの月艦隊主力を突破する必要もあるため、ザフトとしては非常に攻めにくい場所にあるとも言える。
その利便性を生かし、ロード・ジブリールはオーブ連合首長国から宇宙へ脱出する際に、アルザッヘル基地ではなくダイダロス基地へ直行しており、自ら指示を飛ばしてレクイエムをプラントに向けて発射している。
中継コロニー以上にレクイエムを運用する上で重大な施設であるためか、防衛戦力もヘブンズベースに次いで多く、作中ではダガーLやウィンダムといったモビルスーツやザムザザー、ゲルズゲー、ユークリッド等の拠点防衛用MAは勿論、大型MSのデストロイも三機配備されている。
中継コロニー(ビーム偏光ステーション)
過去の戦闘(時期は『SEED』よりも前の戦闘)の影響で廃棄されたオニール型コロニーの残骸を再利用したもの。輪切りにされたコロニーの残骸の両端には、かつてフォビドゥンに搭載されていたエネルギー偏向装置「ゲシュマイディッヒパンツァー」の超巨大モデルが追加されている。ちなみに、コロニーの内部にはかつて人が住んでいたことを物語るようにビルなどの住居がそのまま並んでいる。
地球連合軍はこの中継コロニーを5基配備しており、各地点の中継コロニーはアニメ本編では「フォーレ」「チェルニー」「グノー」という名称が判明しているが、これはそれぞれ現実で鎮魂歌を手掛けたことで有名な作曲家の名前(ガブリアル・フォーレ、カール・チェルニー、シャルル・グノー)に由来している。ちなみに作中で具体的に呼称された廃棄コロニーはこの3基だけだが、小説版では中継コロニーは他にも「ヴェルディ」「マルタン」(それぞれジュゼッペ・ヴェルディ、フランク・マルタンに由来)が確認されている。
地球連合軍では中継コロニーの配置を「ファースト・ムーブメント」「セカンド・ムーブメント」と呼称している。ムーブメントは西洋音楽においては「楽章(Movement)」を意味し、一つの楽曲ながら別の楽曲に見立てる際に使用される。そのため、ファーストが付いた場合は「第一楽章」となる。レクイエムの発射を一つの楽章と定義している様であり、「葬送曲(Requiem)」を意識した名称であろう。ちなみに最後の楽章は「フィナーレ」を呼ぶのが一般的である。
この中継コロニーそのものに戦闘能力も無ければ、防御手段も無い。外壁には姿勢制御用の大型スラスターが多数敷設されており、これらが破壊されるとポジション維持も困難となってしまう。とにかく攻撃には脆弱であるため、防衛戦力の配備が必須となる(故に使用する際には中継コロニーにも多くの戦力を割く必要があることもレクイエム運用時の弱点だと言える)。連合軍側も攻撃された際のためにドレイク級護衛艦リフレクターパドル搭載型やザムザザー、ユークリッドといった陽電子リフレクター搭載した部隊を配置して攻撃を凌ぐ態勢を整えていた。
ザフト運用時
後にザフトに接収された際に、地表に出ているレクイエムの外殻部分(砲口周辺とも)へ陽電子リフレクターが装備される事になり、防御面が改善されている。
さらに、中継コロニーの名称は「ステーション」と呼ばれるようになる(例えば第一次中継点はフォーレから「ステーション・ワン」と改名されている)。
劇中では
オーブ連合首長国からダイダロス基地へと逃亡したジブリールはギルバート・デュランダルを確実に討つべく、自らの手でレクイエムのトリガーを取りプラントの首都であるアプリリウス市に向かって発射。イザーク・ジュールやディアッカ・エルスマンを中心とした部隊の尽力によって最終中継コロニーの軸がずれたことでアプリリウスへの直撃は免れたものの、ヤヌアリウス・ワンからフォーに直撃し、その崩壊に巻き込まれる形でディセンベル・セブン、エイトの合計6つのプラントを破壊する大被害を与えた。
血のバレンタイン以来のプラントそのものの被害にアークエンジェル組は唖然茫然、ミネルバクルーの中には家族がいた者もあり、その悲鳴は非常に苦痛。
ちなみに、レクイエムの標的にされたギルバート・デュランダルはアプリリウス市から既に離れており、機動要塞メサイアからザフトを指揮していた。プラントへの被害が出た際に怒りをあらわにしたが、激昂するまでの様子を見るに演技であり、後述の行動を考えるとむしろプラントへの直接攻撃も議長の思惑に含まれていたと言える。
第二射の発射を阻止すべくミネルバが急遽宇宙へ上がり、宇宙のザフト軍と連携し全戦力を挙げて尽力。地球連合軍側はアルザッヘル・ダイダロス両基地から月艦隊を次々に打ち上げて第一中継点「フォーレ」周辺では熾烈な戦闘が繰り広げられる。
当初、地球連合軍側はフォーレ周辺でザフトの猛攻を防いでおり、レクイエムのエネルギーチャージは順調に進んでいた。しかし、フォーレの戦闘に大兵力を集中させていたため、基地自体への警戒が薄くミネルバ隊による強襲を受ける。デストロイ、ザムザザー、ゲルズゲー、ユークリッド、ウィンダムといった最新兵器で迎撃するも次々に守備隊は撃破されてしまう。ここで更にフォーレの防御網を搔い潜ったザフトの攻撃がフォーレの姿勢制御システムに損傷を与える事に成功。プラント直接攻撃の手段を失ったジブリールはレクイエムでフォーレに展開中のザフト軍艦隊を薙ぎ払う様に基地司令官へ命じた後、ダイダロスからアルザッヘルへの脱出を図る。
しかし、発射直前に内部に潜入したルナマリア・ホークの駆るブラストインパルスによってコントロール施設を破壊され、発射は失敗。ガーティ・ルーで脱出を図ったジブリールもレジェンドのドラグーンによって乗艦ごと爆破され死亡した。
その後、ダイダロス基地はザフトによって接収されたが、デュランダルの密命を受けた部隊が修復、地球連合軍から接収した陽電子リフレクターを防御面に搭載するなどの改良が加えられている。
時期が来たと判断したデュランダルは、自らが考案した人類救済策「デスティニープラン」を発表、この救済策に反対の意思表明をした地球連合軍の艦隊とアルザッヘル基地を「人類救済の障害」と糾弾し、レクイエムを用いて壊滅させた。
この、6つものプラントを破壊し数多くの犠牲者を出した大量殺戮兵器を破棄せず裏で修復し、そして自身の反対勢力に躊躇なく使用したデュランダルの姿勢は、ザフト内部からですら彼に対する大きな不信感を招かせる事にも繋がり、デュランダルに恩義を感じていたイザーク・ジュールたちが離反してラクス・クライン側に付き、ザフトはデュランダル派と反デュランダル派による内部分裂へつながってしまう。また、この攻撃によりオーブはレクイエム破壊のために宇宙艦隊をダイダロス基地に派遣し、更に地球連合軍の残存勢力も合流。ザフト軍側も機動要塞メサイアを月面に展開して応戦したため、メサイア攻防戦が発生。
メサイア攻防戦にて、デュランダルはオーブを討つ事を決めてレクイエムの照準を向けようとしていたが、防衛に用いた陽電子リフレクターには「耐ビームコーティング化された物体を防げない」と言う弱点があり、これを突いたインフィニットジャスティスはビームシールドとVPS装甲の重ね掛け装備である「MX2002 ビームキャリーシールド」を使用してリフレクターに穴を開け、更に全身がビームコーティングそのものであるアカツキには全く効果が無く素通りされ、2機がレクイエムへ侵入するのを止める事が出来なかった。インフィニットジャスティスからのファトゥム-01が砲口へ突撃し、アカツキのドラグーンからの追撃も受けて発射寸前で破壊された。
関連項目
ロード・ジブリール:使用者。
DEW:「指向性エネルギー兵器」の略称であり、ある意味リアルレクイエム。
反射衛星砲、エクスキャリバー、バベルの塔:他作品(それぞれ宇宙戦艦ヤマト、エースコンバットZERO、ふしぎの海のナディア)に登場する兵器。それぞれ「本体から発射したビームを、複数の中継機器によって偏向させて目標に命中させる」という点で共通している。
劇場版ネタバレ注意
劇場版『SEED FREEDOM』でも登場。
メサイア戦後は解体されたことになっていたが、実際にはファウンデーション王国、あるいはその思想に恭順していたザフトの強硬派によって秘密裏に修復されていた。
小説版ではレクイエムの反応炉がダイダロス基地のかなり深い地下に建設されているため解体が不可能であり、プラントがレクイエム本体を解体し、反応炉はザフト軍が別途運用に利用するとの協定を地球連合と結んでいたが、ジャガンナートによって解体されるはずのレクイエム本体も修復されてしまっていた。そのため、東アジア共和国代表はプラントの協定違反を責め立てており、事実プラント政府の監督責任を問われる事態となっている。
エネルギー偏向装置「ゲシュマイディッヒパンツァー」で射線を変えるなど、基本的に『DESTINY』の時と(欠点も含め)あまり変わっていないが、最大の相違点として中継点は中継コロニーから巨大な偏向リングへ変更されている。偏向リングには専用の設置艦が添えられており、中継点の移動も中継コロニーのそれよりも速い。しかも、その偏向リングと設置艦は何れもミラージュコロイド・ステルスで秘匿されているため、発射直前まで発射経路を特定・阻止されないようになっている。阻止するには、構造上必ず砲口の上空にある第一次中継点の偏向リングを狙うしかない。
劇中では宇宙要塞アルテミスと共にアウラ・マハ・ハイバルらファウンデーション王国によって占拠され、自国への核攻撃(実際は親衛隊ブラックナイトスコードによる自作自演だった)の報復としてユーラシア連邦の首都モスクワを攻撃して壊滅させる。アウラたちは地球圏の国家に対しデスティニープランの導入を強要し、従わない場合はレクイエムを発射して軍民問わない無差別攻撃を行うという恫喝を行った。この後、ファウンデーション軍及びザフト反乱軍と交戦していたアガメムノン級宇宙母艦「ベオウルフ」を中心とした連合軍宇宙艦隊に対して発射され、これを壊滅に追いやっている。この時犠牲になったモスクワの人々や艦隊の乗組員達は、ビームが着弾するよりも前に全身が炎に包まれて一瞬で消し炭と化している。それほどまで発する熱エネルギーが凄まじかったのか道を歩いていた幼い少女やカフェでお茶をしていた客たちが一瞬で火だるまになり灰となって消滅していく様はえげつない描写である。
その後レクイエム破壊とアルテミスに捕えられたラクス・クラインの救出を目的にオーブから発進したミレニアムを口実にオーブ首都オロファトにその照準を向けるが、ミレニアムに座乗したキラ・ヤマトが自らの生存の事実を国際救難チャンネルを使って知らせたため、「大量殺人犯」との煽りに激怒したアウラは激怒しミレニアムに目標を変更して発射させる。
アウラ「言わせておけばッ…あの出来損ないを殺せ!」
オルフェ「母上!?」
アウラ「レクイエム、目標はミレニアムじゃ!撃て、妾の命じゃ!!」
しかし元々レクイエムでミレニアムを狙うのは小説版曰く大砲で蝿を狙うようなものであり、マリュー・ラミアスらミレニアムのクルー、主にアーノルド・ノイマンによる的確な回避運動で回避されオーブ近海に着弾しただけで終わった。
劇中では冷静さを失ったアウラの采配ミスの様に描写されているが、何時でも打てるオーブ本国よりも、こちらに向かってくるミレニアムを狙ったのは決して間違ってはいない(実際次の発射のタイミングにミレニアムは間に合っていない)。
それどころか自分たちの大義名分であった核攻撃の真実を知っていてなおかつ証拠もあると言うキラたちは最優先で排除しなければならない存在であった(万が一、本当に世界に知られてしまったら、ファウンデーションの所業で被害を被ったユーラシア連邦や大西洋連邦、ザフト正規軍、オーブと戦いになるのは想像に難くない)。
しかし、結果としてここで1発無駄撃ちしてしまったことが致命的ミスとなってしまった。
- なお、核兵器やジェネシスとは違い環境への影響は無いことを祈る。「津波が心配」という観客の声も。
- ちなみにだが『機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人』にて木星帝国が「神の雷」計画という、木星圏からコロニーレーザーを計12回地球に向けて発射する計画を立てており、実現された場合は照射を受けた地域は一瞬で蒸発、発生した熱量による二次被害もあることながら、地球全体が向こう30年は異常気象に見舞われるとされた(ちなみに似たようなことは『SEED』のジェネシスで計画している)。『FREEDOM』ではモスクワ、オーブ近海にと二度も撃たれており、威力がコロニーレーザーと同等として単純計算するなら5年は地球は異常気象が続くことになるが大丈夫なのだろうか。
オルフェ「レクイエム発射だ!オーブを焼き払え!貴様がやったことの報いを受け取れ、キラ・ヤマト!」
最終決戦ではオルフェの指示で再びオロファトにその照準が合わせられるが、発射直前にミラージュコロイド・ステルスを解除したコンテナが射線を遮り、コンテナ内部から出現したアカツキ(ゼウスシルエット装備)の奇襲を受けて、第一次中継点の偏向リングを破壊される。さらに、砲撃は拮抗こそしたがヤタノカガミによって分散反射されてしまう(反射後の盾で防ぎきれなかったアカツキは機体端部が赤熱化、ヤタノカガミをほぼ失っており、流石に威力全てを防ぎきれはしなかった様子)。
反射されたビームで外殻の一部を破損し修理と再充填、さらにレクイエム周辺の防御艦隊も失ったことで立て直しを余儀なくされたことにより、キラたちにラクス救出と反撃の時間を与えてしまうことになる。
アウラ「ええい、撃ち落とせ!レクイエムはまだか!?」
最終的に修復を終え、今度こそオロファトを狙って砲撃を指示するものの、ミーティアを装備したフォースインパルスSpecⅡによって陽電子リフレクター発生器ごと外殻を破壊され、アカツキから託されたゼウスシルエットを装備するデスティニーSpecⅡによって内部にある本体のビーム砲及び反応炉に対してバンカーバスターを撃ち込まれ暴発を起こし、今度こそ破壊・無力化された。しかも、ほぼ同時にグルヴェイグの撃沈でアウラは戦死。親衛隊ブラックナイトスコードも宰相機のブラックナイトスコードカルラが撃破された事で壊滅し、ファウンデーション王国は全滅という完全敗北に終わった。
かつては、曲がりなりにも世界平和を目指していたデュランダルが構想していたデスティニープランの要となるはずで、以前はレクイエムの守護者でもあったデスティニーによって、アウラが目論む偽りのデスティニープランが完全に打ち砕かれる皮肉な形で最悪のレクイエムは流れること無く今度こそ消え去るのであった。
映画の余談
映画の関連項目
アウラ・マハ・ハイバル:使用者。
アーノルド・ノイマン、アカツキ、不可能を可能にする男:天敵達。
粛聖!!ロリ神レクイエム☆:上記のアウラの見た目が幼女である事と、本兵器の名前から、メイン画像のように併せてネタにされている