ムウ・ラ・フラガ「垂直軸線、誤差修正!射出電圧、臨界! いけーっ!!」
概要
ZGMF-X42S デスティニー専用の追加装備。
ザフトがデスティニーと同時期(C.E.73年10月~12月の間)に開発していたが、あまりに破壊力が大き過ぎるが故に第二次連合・プラント大戦では使用されないまま終戦を迎えた。その後、経緯こそ不明ながらC.E.75年では世界平和監視機構コンパス及びモルゲンレーテ社が保有しており、ファウンデーション王国戦において実戦投入された。
その名称からインパルス系列のシルエットシステムを発展させた装備と思われるが、仕様は大きく異なる。シルエットシステムは換装により機体特性を変更することによりMS単位にて様々な状況に対応させるシステムだが、本装備は大型の実弾による砲撃に特化した拠点攻撃用装備である。その点では従来のシルエットシステムよりもミーティアの方が近いと言える。
機体重量増加による機動性低下を軽減するため、両脚の膝から下を覆うように装着されるブースターによって対象機体の推力を上昇させており、装着対象がデスティニーだったとはいえヴォワチュール・リュミエールを使用せずともミーティアに追走できるだけの加速力を与えることができる。さらに、この推力は砲撃の膨大な反作用を相殺するためにも活用される。ただし、図体が大きすぎて近接戦のような機敏な動きは当然できない上、MS本体の武装を削ってまでドッキングする関係上ミーティア以上に特殊装備としての側面は強い。
なお、上記の通りデスティニー専用ではあるものの規格が同一のMS(18m級)であれば装着は問題ないようで、本編ではデスティニーの改修機であるZGMF/A-42S2 デスティニーSpecⅡの他初期GAT-Xシリーズと同型のフレームを持つORB-01 アカツキが装備・使用している。また、本編の半年前に起きたフリーダム強奪事件ではZGMF-X20A ストライクフリーダムも装着していた可能性が示唆されている。
機構
鳥のような形状を取って単独にて飛行可能な単機形態から、6つのパーツ(機首、胴体、主翼×2、ミサイルポッド、後端)に分離し、この内機首を除いたパーツが対象となる機体に装着される。具体的には、胴体が背部兼胸部ユニットとして胴部に、主翼が追加スラスターとして両脚部に装着され、ミサイルポッドと後端は背部ウェポンラックあるいはそれを担う接続パーツへ接続される。着脱は数秒程度で行うことができ、特にパージに関しては1秒とかからない。
また、装着時にはインパルスのドッキングにて見られたレーザーのような光線が照射されており、従来のシルエットシステムの技術を使用していると思われる。この誘導があるためか、装着対象が直線的とはいえ高速飛行している最中であっても迅速かつ正確に装着できる。
その構造上、本来のドッキング相手であるデスティニーでさえも背面のウェポンラックとの接続が加わる関係からか、既にマウントされている背部の各武装「MMI-714 アロンダイト ビームソード」及び「M2000GX 高エネルギー長射程ビーム砲」をパージする必要がある(ただしウイングユニットについては多少避ける必要こそあれど外す必要が無いよう設計されている)。また、装備の使用に両手を使う上にリアスカートも埋まるため「MA-BAR73/S 高エネルギービームライフル」をはじめとする携行火器も装備できない。アカツキの場合は、背面にデスティニーのウェポンラックを再現するための接続パーツが装備されており、アカツキにとって武装と機動力の大半を担う専用ストライカーパックをはじめとする着脱式バックパックはおろか、デスティニーと同じ理由で「72D5式 ビームライフル ヒャクライ」さえも装備できない。
MS単体の継戦能力が著しく低下する点は欠点と言えるが、そもそも高火力なビーム系の武装を多数搭載しているデスティニーでは理論上大抵のMS・MA・戦艦は単体で撃破できるため、ゼウスシルエットは対大型施設・戦術兵器用の特殊装備として完全に割り切った設計にしたものと考えられる。また、デスティニーの場合は頭部バルカン・掌部ビーム砲・肩部ビームブーメラン・シールド類は健在なため、中近距離における最低限の継戦能力は確保できている。
武装
リニアキャノン
MSの全長を優に超える(立体物から換算すると50m弱ほどの)超大型の携行式リニアキャノン。単機形態における胴部と後端の一部が合体したものであり、背部ユニットとは大型のジョイントアームによって接続している。
砲身前方部分(銃砲腔)は交換式となっており予備を含め3本携行している(単機形態における後端部分)。予備の2本は背部右側のウェポンラックにマウントされる。加えて、砲弾は砲身後部に挿弾子の如く剝き出しのまま装填されている。また、砲身部分の交換は装着したMSが手作業にて行う。
リニアキャノンは爆薬に陽電子を用いた地中貫通弾/陽電子砲弾(バンカーバスター)を超高速にて射出することにより大型の拠点を一撃で破壊するほどの威力を誇り、レクイエムの偏向リングをたった一撃で破壊し、その余波により側にいた偏向リング設置艦も跡形も無く吹き飛ばしている。しかし、一発撃つだけで莫大な電力を消費するため、基本的には核動力機での使用が前提となり、バッテリー機では精々一発が限界となる。また、膨大な電力を用いた電磁加速の熱により銃砲腔が一度の発射で焼き切れてしまうため、発射可能数が予備砲身の数に左右される。しかし、出力を絞れば一本の砲身にて複数発射できるのか、砲身の総数より砲弾の総数の方が倍近く多い。
なお、発射時の反動は脚部ブースターでも完全には相殺しきれない(とはいえかなり抑え込めるので吹き飛ぶわけではない)ため、デスティニーの場合は発射直前に補助ブースターとしてヴォワチュール・リュミエールを展開することで相殺しきっている。アカツキの場合、補助ブースターに使えるスラスターがないため脚部ブースターの出力を上昇させて可能な限り抑え込み、その上で生じた反動は作戦行動に利用している(陽電子砲弾による偏向リングの爆発から離れるとともに少しながらレクイエム砲口に接近し、ヤタノカガミでのビーム反射に繋げた)。
側面にMSの実体シールドをマウント可能なラックが存在しており、実体シールドについては投棄する必要が無いようになっている。また、このマウントはデスティニーの小型なシールドからアカツキの比較的大型なシールドまで幅広く対応している。
余談
小説版ではアカツキが使用したものが「陽電子砲弾」、デスティニーSpecⅡが使用したものが地中貫通弾と別々で記載されているが、前者は貫通弾として使わなかったために表現が変えられている。
ミサイルポッド
背部左側のウェポンラックに装備された誘導ミサイル発射管。発射口は専用ハッチにより保護されている。
構成はレドームを挟んで前面左右にそれぞれ4連装、さらに両側面にそれぞれ20連装となっており、その総砲門数は48門にも及ぶ。また、前面と側面にてミサイルの種類が異なり、前面の方が大型のものを装填している。
なお、右側面の発射管はその正面にリニアキャノンの予備銃身をマウントしたユニットが存在するため射線が確保できてない。おそらくは単機形態時に使用する前提と思われる。
ミサイルランチャー
脚部両側に備え付けられた誘導ミサイル発射管。こちらはスライド展開式のハッチにより保護されている。
4連装×4基備え付けられており、ミサイルはミサイルポッド前面のものと同じものを装填している。これを加えると、本ユニットの総砲門数は65(1+48+16)門となり、ミーティアより一回り少ない程度となるが前述した構造的問題により一部の発射管の射線が取れていないため実際の砲門数は45門程度となる。
なお、こちらは側部に備え付けられながらも発射口が機体正面に向いているため自機により射線を遮られることは無いが、逆に単機形態時に自機が正面にくるため射線を確保できなくなる。
劇中の活躍
ムウ・ラ・フラガの乗るアカツキとドッキングした状態でミラージュコロイドコンテナに入り、オーブ連合首長国・カグヤのマスドライバーより打ち上げられレクイエム砲口付近に潜伏、レクイエム中継ステーションのミラージュコロイド・ステルス解除と共にこちらもミラージュコロイドを解除、リニアキャノンで第一中継地点の偏向リングをその設置艦ごと一撃で破壊する。
アカツキがヤタノカガミでレクイエムのビームを反射するために通常装甲材の本装備を巻き込ませないよう一旦パージされ、反射終了と同時に単機形態に移行、アカツキが再度本装備を手に取りスラスターを全開にして離脱した。この時、ゼウスシルエット使用によるアカツキのエネルギー残量がギリギリであったことや、レクイエムが陽電子リフレクターを再展開して防御を固めていた事もあり、砲身への直接攻撃はせず中継ステーションの破壊による時間稼ぎに徹した。この際、先の反射でレクイエムの外殻へダメージを与えた上に、レクイエム周辺に展開されていた艦隊を半ば壊滅させている。
その後はアカツキのダメージとリニアキャノンを使用したことによるバッテリー消費が大きかったためか共に戦闘宙域を一旦離脱していたがレクイエムから少し離れた月面周辺にて待機し続けており、ブラックナイトスコード ルドラを撃破してレクイエム破壊に向かうシン・アスカのデスティニーSpecⅡが合流すると、本装備は再度分離形態となってデスティニーSpecⅡに装着される。ミーティア装備のインパルスSpecⅡとキャバリアーアイフリッド-0に乗ったインフィニットジャスティス弐式の援護を受けつつレクイエムの砲口へ向かい(一応ミサイルポッドを用いて防衛部隊に対処はしている)、インパルスの攻撃にて陽電子リフレクター発生装置が破壊された直後、発射寸前のレクイエム砲口に向けてリニアキャノンを放ち、地下の反応炉まで貫通した陽電子砲弾が爆発、レクイエムの完全破壊に成功した。
ちなみに、レクイエムの反応炉は解体不可能とされ仕方なくプラント(ザフト)が動力炉として使用する手筈となっていた産物であり、それを地表からの一撃で破壊していることから本装備の圧倒的な破壊力がうかがえる。
レクイエム破壊後、インパルスSpecⅡと共にアグネス・ギーベンラートを回収しに向かった際もデスティニーSpecⅡが装着し続けていたため、その後はデスティニーSpecⅡと共にミレニアムに収容されたと思われる。
立体化
METAL ROBOT魂はデスティニーSpecⅡと同時発売。こちらはあくまでデスティニーSpecⅡ用の装備として扱われているため、同METAL ROBOT魂の「アカツキガンダム(シラヌイ装備)SEED FREEDOM Ver.」と劇場版名義なのだが“装着ができない”。
なお、価格はデスティニーSpecⅡより僅かに高い。
- デスティニーガンダムSpecⅡ…税込18,700円
- ゼウスシルエット…税込19,800円
- デスティニーガンダムSpecⅡ専用光の翼&エフェクトセット…税込7,150円
合計…税込45,650円(税率10%)
「HGCE 1/144 デスティニーガンダムSpecⅡ + ゼウスシルエット」として2024年11月23日にセット販売された。
なお、同年12月14日に「RG アカツキガンダム(オオワシ装備)」も発売される、こちらはHGとRGでブランドが違う上、さらに『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』名義なのだが“装着が可能”。
※ただし装着にはプレミアムバンダイで販売の「RG 1/144 アカツキガンダム用シラヌイパック & HG ゼウスシルエット用接続パーツ」が必要。
なお、ゼウスシルエット単体で全長500㎜を超える超大型サイズであり、HGミーティアユニット(485㎜)以上である。
もし、RGアカツキにHGCEゼウスシルエットを装着させようとすると…
- HG 1/144 デスティニーガンダムSpecⅡ & ゼウスシルエット…税込7,920円
- RG 1/144 アカツキガンダム(オオワシ装備)…税込8,800円
- RG 1/144 アカツキガンダム用シラヌイパック & HG ゼウスシルエット用接続パーツ…税込4,400円
合計…税込21,120円(税率10%)
余談
- 本装備は劇中にて呼称されることが一切なかった上、豪華版含むパンフレットでも記載されておらず、果てには他の新規機体が早期の1月29日に情報公開されたのにもかかわらずに公開されなかった。そこで2月2日から週替わり入場者プレゼント第2弾の本作に登場するキャラ・メカの設定を一部抜粋した「ミニ設定冊子」で公開されるかと思われたがそこでも記載されず、2月8日のMETAL ROBOT魂での情報解禁によりようやく名称が判明するに至った。
- ゼウスはその名の通り、ギリシャ神話の最高神である雷神ゼウスから取られている。
- スーパーロボット大戦シリーズにおいて初めてシンの救済、及びミネルバ隊側の視点に寄り添ったストーリーを展開したことでシンがユーザーから「リアル系男主人公」と評されるほど大活躍した『スーパーロボット大戦Z』の自軍部隊のデフォルト名が(綴りこそ異なるものの)文字通りの「ゼウス」(ZEUTH)であり、偶然かもしれないがシンの最大の活躍を演出するための装備として、何とも粋なネーミングになったと言える。
- 本記事でも記載されていたが、ゼウスを「天帝」と故意に拡大解釈することで、同シリーズ内のプロヴィデンスとの関連をこじつける風説が、X(旧Twitter)等を中心に広がってしまった。
- 「プロヴィデンス」は「天の意思」を概念として示すキリスト教発祥の言葉であり、用法としての「天帝」はそもそもゼウスのような特定の神を呼称した名詞ではない。
- このこじつけがデザインを務めた射尾卓弥氏の目に留まり、自身のSNSにてゼウスシルエットのネーミングはプロヴィデンスとは無関係である事を明言している。
- 後の福田監督のインタビューによると『あれを使えるのは、核動力を搭載したフリーダム、ジャスティス、デスティニーとあのクラスのMSだけ、一時的に借りていたアカツキ(のバッテリー)はリニアキャノンを一発撃つだけで限界であった』とも語られている。
- もっとも、『FREEDOM』時点でのバッテリー技術での話という点もあり、同作では核動力を搭載したMS専用のモジュールであるミーティアをバッテリー機のインパルスSpecⅡが運用している事から、今後バッテリーの技術が上がればバッテリー機でもゼウスシルエットが使える可能性はある。
- また、元々の用途としてはバンカーバスターとして運用することより、オーブ行政府地下の司令室等に逃げ込んだ連中を一撃でバラバラにするといった類のものであり、それが巡り巡って劇中ではデスティニー共々オーブを守るために用いられることとなった。
- ビーム兵器の普及したC.E.世界では先祖返りしたかのような実弾砲だが、実際のところ『DESTINY』でのレクイエムの中継地点ステーション・ワンの破壊に要した時間を見るに大型拠点や施設への攻撃力はどうやら実弾砲に軍配が上がるようである。
- 一撃で全てを吹き飛ばしている描写を見る限り、熱量により点的に破壊するビーム兵器では不可能な、実弾を爆発させることによる広範囲破壊が拠点破壊に効果的なようである。
- ただし『DESTINY』時点での中継ステーションは廃棄コロニーの残骸を利用した超大型構造物であり、ファウンデーションが小型化に成功した新型偏向リングとは規模が大きく異なる点には留意すべきである。
- なぜこれほどの武装をザフトが手放していたのかは不明となっているが、第一次大戦後のフリーダムやミーティアの処遇を考えると、ユニウス条約に抵触する危険性のある兵器(ゼウスシルエット自体にニュートロンジャマーキャンセラー(以下NJC)は積んでいないもののNJC搭載型核動力機による運用が前提の設計である)を厄介払いした可能性はある。
- ユニウス条約の効力だが、今回のファウンデーションの騒動で使用されたザフト所属の核動力機であるデュエルブリッツ・ライトニングバスターもプラント最高評議会議長ワルター・ド・ラメントにより今回限りの超法規的措置(それもハリ・ジャガンナートらが起こしたクーデターの鎮圧が目的)として特別に使用許可が下りているものであり、兵器にNJCを使用することは変わらず制限されているようである。
- 映画本編ではシンがハーケン隊との会話でフリーダム強奪事件を回想するシーンがあるが、当時ストライクフリーダムと交戦中のブラックナイトスコード ルドラ(スピネル)の少し後ろに粉砕された本装備らしき物体が突き刺さっているのが確認されている。
- 詳細は不明だが、ファンからは「改修したストライクフリーダムと共にアークエンジェルに引き渡す予定だったが、丸ごと強奪されてルドラに破壊されたのでは?」と考察されている。それであれば、ストライクフリーダム共々モルゲンレーテ社に回収・修復されていたことにも説明が付く。
- 前掲にあるゼウスシルエットを運用可能なMSの一例には『フリーダム』も挙げられている。劇中でフリーダムと呼称されるMSはオリジナルのフリーダムの他ハイパーデュートリオンエンジンのストライクフリーダムや次世代機のライジングフリーダムも含まれる。さらに『奪われた機体による地上施設への攻撃』と言う事態がゼウスシルエットの本来の用途とも合致している。この場合は、ストライクフリーダムとして暴れていたのではなくストライクフリーダムを動力源(複数回の使用は核動力が必要な為)とした移動砲台が暴れていたという状況になるため、ストライクフリーダムのピーキーな操作性も問題にはならない。奪う側からすれば"地上施設攻撃セット"だったとも言える。
- 設計上はデスティニーインパルスRにも装備可能と思われる。同機のデスティニーRシルエットにはデスティニーと同じ形状のウェポンラックが搭載されており、マウントされているウルフスベイン長射程ビーム砲塔を外すだけで対応できる。
- なお、デスティニーRシルエットそのものはストライカーパックの接続に対応しているため、シルエットの性能を十全に使おうと考えなければストライカーパック対応MSなら大抵は装備可能と言える。
- 従来のシルエットシステムには、そのシルエット名が装着機体名の前に付く(例えば、フォースシルエットを装着したインパルスはフォースインパルス)という命名規則があり、これが適用されるなら本装備を装着したデスティニーSpecⅡは「ゼウスデスティニーSpecⅡ」という名前になる。