719系
ななひゃくじゅうきゅうけい
スペック
営業最高速度 | 110km/h |
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設計最高速度 | 不明 |
起動加速度 | 2km/h/s |
減速度 | 不明 |
歯車比 | 85:14=6.07:1 |
駆動方式 | 中空軸平行カルダン駆動 |
主電動機 | 直流直巻式整流子電動機・1時間定格出力130kW・MT61形 |
制御方式 | サイリスタ連続位相制御 |
制動方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ(抑速・耐雪ブレーキ付) |
台車 |
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製造所 | 東急車輛(0番台)・日本車輌(5000番台) |
概要
JR東日本が運用していた近郊形電車。老朽化が進み、2扉デッキ付クロスシートの客室でラッシュ時の運用にも難があった451・453系電車や50系客車の換用として製造・投入された。
1M1Tの2両編成を取る軽量ステンレス車両で、外見は211系に近似しているが、側面の窓配置が異なる。帯色はイラストにある通り、仙台地区用は緑・白・赤、山形地区用は緑・白・オレンジ(ただし後述の一部例外もあり)。
仙台地区の狭軌線区用の0番台(廃形式)、山形地区の標準軌線区用の5000番台、そして0番台を改造した観光列車用の700番台『フルーティア(廃形式)』に区分される(詳細は後述)。
車体
211系に準じたビード付の軽量ステンレス製の拡幅車体を採用。0番台は東北地方の客車向けの低床ホームに対応するため、扉部分にはステップが設けられている。奥羽本線用の5000番台は、山形新幹線開業時にホームの嵩上げが行われたためステップは無い。
扉間の窓の配置が後述の通り集団見合い式のクロスシートを採用したため異なり、戸袋窓が廃止され正方形に近い窓が3つ並ぶ。
他地区の211系系統の前面を持つ車両と異なり、貫通扉が塗装されているのがポイント。
車内
片側3扉デッキ無客室を採用。座席はセミクロスシートであるが、クロスシート部分が「集団見合い型」と呼ばれるものとなっており、独特の配置をしている。座席構造や表地色は211系に準拠している。
製造当時は鉄道車両内での喫煙がまだ可能であったため、クモハ方のみ内装に所々灰皿を取付けたネジ穴跡が残っているのが特徴。
機器
制御装置は国鉄後期に開発されたサイリスタ連続位相制御方式(阿武隈急行8100系も同系)、モーターは205・211系も採用するMT61形等、当時最新のものを用いた。一方、台車やパンタグラフを始め、一部部品はコストダウンのため、廃車発生品を流用している。
台車は451・453系や485系から流用したDT32・TR69形を用いる。乗り心地に優れた1級品と評されることが多い台車であるが、719系においては軽量ステンレス車体と旧式重量級台車というアンバランスな組み合わせが仇となった。
特に勾配区間において車輪空転が多発したことで、運用面に大きな制約が生じることとなった。導入当初は砂撒き装置がなく、尚更空転が多発。延が常態化する原因となっており、急遽設計変更または改造により、砂撒き装置が取付けられた程である。
廃車発生品を流用したことで流用品老朽化が早くから進行。それに加え、東日本大震災発生時にはMT61形を代表とする直流モーター消耗部品を製造する工場が一時操業を停止したため、部品が枯渇する、後年には制御装置に用いる半導体が旧式化し確保が難しくなるといった問題が発生。保守上の不都合が露わとなった。
番台区分
0番台(狭軌線区用・メイン画像)
全42編成84両が投入され、仙台車両センターに配置。
全盛期には東北本線黒磯 - 利府・一ノ関間・仙山線仙台 - 山形間・磐越西線郡山 - 会津若松・喜多方間(2007年以降)と広範囲で運用された。奥羽本線で山形新幹線関連工事が行われていた時期には、車両運用都合で同線で運用されたこともある。
また、本系列は全て2両1編成であるが、この0番台はワンマン対応化がされないまま比較的利用客が多い仙台地区で運用されていた。そのためワンマン対応701系電車が1994年に投入されると、0番台は同系列での4 - 8両編成運行が基本となり、2007年3月の磐越西線導入までは2両での定期運転が存在しなかった。その磐越西線でも前述の勾配区間との相性もあってか、ほとんどが4両以上での運行となった。結果、4両以上で固定ながら定員数は増やせないといった、1編成2両である意味がほぼない状態となった。
では、後述する5000番台の様にこちらもワンマン運転対応工事をすれば…と思うかもしれないが、車体構造上、そうなると定員数を犠牲にせざるを得ず、利用客が多い仙台地区では困難と見られた。
こうした運用上の不都合に加え、2007年に701系との併結を前提に設計されたE721系が登場したことで、他形式との併結運用を行えないことが問題点として浮上。さらには前述の保守上の問題が表面化したこともキッカケとなり、製造後25 - 30年程度と登場からさして年月が経たないうちに置き換えが始まることとなる。
まず、2013年3月ダイヤ改正でE721系0番台に押し出される形でかつて独壇場ともいえる活躍の舞台であった仙山線から撤退。
その後、2016年11月から順次廃車が進行。同時にE721系磐越西線転用及び追加増備(4両固定編成1000番台新製)が始まったことで、2017年3月ダイヤ改正以降、後述の形で他地区転属となった一部を除き、0番台運用は激減。
2019年3月改正以降の仙台地区での定期運用は、2018年3月改正から設定された常磐線岩沼 - 原ノ町 - 浪江間及び東北本線仙台 - 岩沼間運用のみとなった。なお、仙台 - 原ノ町間は早朝・深夜の出入庫運用の1往復のみで、それ以外は全て原ノ町 - 浪江間を往復する運用であった。
2019年には「あかべぇカラー」「秋田色」(いずれも後述)の編成も全廃となった。
2020年3月14日ダイヤ改正で震災の影響で一部不通となっていた常磐線が全線で運行再開。原ノ町以南区間にE531系が投入された。これに伴い、0番台は全編成が運用を離脱した。同年6月までに後述の700番台改造車を除く全車両が廃車されている。
なお、廃車されたうちの1編成は現在も仙台近郊訓練施設で車籍がない訓練機械として使用中である。
東北地方の車両としては早期置換となったが廃車発生品は大量にストックされ後述する山形線の車両の維持のため有効活用された。
「あかべぇ」カラー
磐越西線用編成は会津地区観光キャンペーンに合わせて帯色が赤。黒の2色(通称『あかべぇ色』)に変更され、マスコットキャラ「あかべぇ」が描かれていた他、パンタグラフ・排障器(スカート)が異なる構造であった(パンタグラフ・スカートが異なり、帯色が従来のもの物という編成も存在)。
2019年3月ダイヤ改正で置換えられて以降も代走用に使われていたが、同年7月運用を最後に全廃となった。
秋田色
仙台支社以外での運用では、事故で運用を離れた701系代走及び保安装置更新に伴う車両不足解消を目的に2017年となって磐越西線用4両が秋田支社に転属。帯色が前面は黒、側面はマゼンタに変更され、秋田支社管内の奥羽本線院内 - 追分間で2年間運用された。2019年11月に運用離脱、翌2020年3月限りで廃車解体されている。
700番台『フルーティアふくしま』
2015年4月から行われた「福島デスティネーションキャンペーン」に合わせ0番台1本がジョイフルトレインに改造され、新たな番台区分である700番台となった。
「フルーティアふくしま」として主に磐越西線郡山 - 会津若松 - 喜多方間(冬期は東北本線郡山 - 仙台間)を週末中心に運行されていた。当初は磐越西線では定期列車に併結されての1日2往復運行であったが、0番台置換に伴い、2019年より1往復のみの単独運行となった。
うち1両はカフェカウンター車両として「クシ」の記号が付く。なお、この列車は全座席をスイーツセット旅行商品として発売していた。
2023年12月24日限りで引退。翌年1月に廃車回送された。
なお、これにより本系列のうち、狭軌用車両は全て運用離脱したこととなる。
5000番台(標準軌路線専用)
5000番台は山形新幹線開通に際して、標準軌に改軌される奥羽本線福島 - 山形間(現在は福島 - 新庄間・通称「山形線」)用にJRグループ初の標準軌車両として12編成24両が新製された。走行機器等が標準軌・耐雪仕様となっており、前述の通り扉部分にステップがない等、内装・設備が微妙に異なる。台車は205・211系に用いられるDT50系列をベースに標準軌仕様としたボルスタレス台車が新造されたため、基本番台の様な重量的ミスマッチは余り問題となっていない。帯色も赤部分がオレンジ(山形県花・ベニバナをイメージしたもの)となっている。一部編成はワンマン対応改造され、運転台後部座席が撤去され、座席が少ない。
こちらはまだまだ現役であり、奥羽本線福島 - 米沢間運用は全てこの車両である。保守部品枯渇は避けられないが、後継車両も未だ存在しない(後述する通り、701系は性能面から板谷峠での営業運行が困難)ため、仙台地区で廃車となった車両部品を最大限活用し、可能な限り延命を行っている。
- 0番台デビュー前年まで、これもラッシュ時輸送への対応を目的に455系の一部が717系電車に改造されており、前述の部品流用から、見方によっては「717系追加投入」と見ることも可能。113系と211系、415系0・1500番台の様な関係、と考えれば分かりやすいであろう。顔も似ていることであるし。
- 717系が廃車となってから10年後の2017年、運用を離脱した0番台はその大半が廃車まで留置されることとなったが、その主な留置先が奇しくもかつての717系同様陸前山王であり、「大量の車両が駅構内に留置される」という10年前と同じ光景が見られた。投入目的から廃車手順、置換で投入された車両(いずれもE721系)までがほぼ一致したこととなる。
- ちなみに、本形式廃車回送には電気機関車ではなく、稼働中の同系列車両が使用された。この点は717系等とはやや異なる所。
- なお、本形式廃車は同じ制御機器を使用している阿武隈急行8100系電車車両メンテナンスにも影響を与えており、結果として同社は新型車(AB900系)導入を当初予定より数年早めることとなっている。やはりというべきか、こちらの新型車もE721系派生型である。
- 標準軌専用5000番台定期検査は当初、仙台近郊新幹線車両センターに送って行われる予定であったが、あくまで在来線車両である同系列は東北新幹線内の保安装置や電圧(50Hz・25000V。ちなみに、在来線は20000V・50Hz)に対応しておらず、自走不可能であった。そのため、新幹線区間牽引車としてクモヤ143を交流・標準軌化改造したクモヤ743が用意された(1992年登場)。新幹線区間で実際に牽引した状態での試運転まで行われていたとのこと。
- しかし、結局701系共々山形で検査を済ませてしまうこととなったため、同車は山形線内の落ち葉掃きや構内入替程度の活用に留まり、2014年に廃車となった。
- 前述の通り、構造上の理由から勾配区間での運用に難があった0番台とは逆に奥羽本線701系5500番台は余りにも軽過ぎ、結果的にこちらも勾配区間での空転が酷いため、通常は板谷峠区間で運用は行われない(仙台支社所属についても、同様の理由から仙山線での運用は僅かとなっている)。