戦国自衛隊
せんごくじえいたい
歴史は我々に何をさせようというのか?
概要
1971年に雑誌「SFマガジン」にて発表された、タイムトラベルを題材とした半村良のSF小説。
「近代装備を保有した自衛隊と刀や弓矢で武装した戦国武将が戦ったらどうなるのか」という疑問に対して真正面から向き合った架空戦記の金字塔として知られており、映画や演劇など様々な派生作品が世に出ている。
何れの作品もメディアによって展開に差異が見られるが、「自衛隊が戦国時代にタイムスリップし歴史に介入する」という大筋は共通であり、それに伴う「歴史の改変と改変の修正」が物語の中核として組み込まれている。
架空戦記というジャンルを確定させた一作である事から、後年には本作と類似した世界観を持つ様々な作品が発表されており、本作が与えた影響の大きさを知る事ができる。
1975年から1976年まで「プレイコミック」で田辺節雄作画による劇画版が連載された。
1979年に映画化され、主演はアクションスターで有名な千葉真一。
撮影に際して千葉と夏木勲は自衛隊に体験入隊し、江藤潤ら他の出演者も東宝撮影所内で匍匐前進の訓練を行った。
しかし「過去の時代とは言え自衛官が日本人に銃を向ける」、「無許可で隊を離脱する」、「民衆を襲う」、「自衛官同士の内紛」などの描写に防衛庁が難色を示し、本格的な撮影協力には至っていない。
そのため隊員たちの衣装は陸上自衛隊ではなく米軍のものを用いている。
2023年には、長らく所在不明だった劇中曲や未使用曲を収録した、完全版オリジナルサウンドトラックが販売された(サントラ自体は何度か販売されていた)。
ストーリー
日本海側で大演習を展開していた自衛隊を、突如<時震>が襲った。
突風が渦を巻きあげた瞬間、彼らの姿は跡形もなく消えてしまったのだ。
伊庭三尉を中心とする一団は、いつの間にか群雄が割拠する戦国時代にタイムスリップし、そこでのちに上杉謙信となる武将とめぐり逢う。
<歴史>は、哨戒艇、装甲車、ヘリコプターなどの最新兵器を携えた彼らに、何をさせるつもりなのか。
(新装版より)
登場車両・航空機・火器
小説版・劇画版
派生作品
映画がヒットした1980年代には続編が企画され、監督に長谷川和彦、助監督に三池崇史を起用する形で進められたが実現には至らなかった。
また本作の大ファンである今井雅之は続編のシナリオを執筆、2001年には角川春樹と映画化の話まで進んだが当時の角川の事情に伴い実現しなかった。
映画『戦国自衛隊1549』
『戦国自衛隊』を題する映像作品としては2005年に『戦国自衛隊1549』という江口洋介が主演の映画が公開された。前作において問題になったとされる「自衛官同士の内紛」に関しては緩和されたようで、防衛庁の協力を得ている。
映画版のリメイク的なコンセプトを有してはいるが、『亡国のイージス』で知られる福井晴敏によるオリジナル作品であり『戦国自衛隊』との直接のつながりはない。
その一方で『戦国自衛隊』では説明されなかったタイムスリップの原因について本作独自の設定がされている。
詳細は作品記事参照。
ドラマ『戦国自衛隊・関ヶ原の戦い』
2006年には同じく『戦国自衛隊』の名を借りたオリジナル作品としてドラマ『戦国自衛隊・関ヶ原の戦い』も制作された。
「火曜サスペンス劇場」の後番組である「DRAMA COMPLEX」枠で放送され、反町隆史が主演を務めた。
タイトル通り関ヶ原の戦いが舞台になっているが、後述の『続・戦国自衛隊』との関係はなく歴史への干渉を避けたい伊庭(反町)と残り少ない命を戦国の世で完全燃焼させたい嶋村(渡部篤郎)の対立が主軸となっている。
劇画『続・戦国自衛隊』
1970年代に描かれた劇画版の続編で、劇画版の作画を手掛けた田辺節雄のオリジナルストーリー。2000年から2008年まで書下ろしで刊行された。
関ヶ原の戦いで自衛隊が西軍、米軍が東軍に加勢して戦い、大坂の陣を経て島原の乱で生き残った自衛官が最後の戦いを繰り広げるまでを描く。
劇画『戦国自衛隊』
1970年代の田辺版とは別作品。作画は森秀樹。
2013年から2017年に「コミック乱ツインズ」、「コミック乱増刊」で連載された。
本能寺の変で救出された織田信長が現代兵器を手に入れて世界征服の野心を抱き、自衛隊と対決するという『戦国自衛隊1549』と『続・戦国自衛隊』を組み合わせたようなオリジナル作品。