概要
角川映画が角川グループ60周年記念作品として2005年に製作した特撮映画。
半村良の小説『戦国自衛隊』のコンセプトをもとに、『亡国のイージス』の福井晴敏がプロットを手掛けた。そのため、旧作とのつながりはない。
旧作映画では燃料などの補給手段やタイムスリップの原因が説明されなかったのに対し、本作ではそれぞれ独自の説明がなされている。
また歴史への影響をなるべく避けるために実弾は基本的に使用せず、戦国時代の人々はなるべく殺傷しないという設定になっている。
そのため旧作で見られた自衛隊の火器が戦国時代の人々に向けて使われるシーンは少なく、基本的にはタイムスリップした二つの自衛隊部隊同士の内紛となっている。
旧作では自衛官が民間人を襲う描写があったことから防衛庁の協力が得られなかったが、本作では自衛隊の内紛が主題となったことから陸上自衛隊の全面協力を得ている。
撮影は東富士演習場にオープンセットを建設して行われ、現役自衛官200名以上がエキストラとして出演している。
あらすじ
西暦2003年。陸上自衛隊東富士駐屯地にて対ソーラーマキシマムの人工磁場シールド発生実験の最中に事故が発生し、その場に居合わせた的場一等陸佐率いる「第三特別実験中隊」が地面ごと消滅した。
それから3日後、磁場の揺り戻しにより現代に戦国時代の武将・七兵衛がやってきてしまう。
彼の話により、第三特別実験中隊の生存が確認されたが彼らは西暦1547年に飛ばされそこで歴史を改変しようともくろんでいるらしく、その影響と思われる「虚数空間」通称「ホール」が現代の日本各地に出現し、侵食を始める。ホールの侵食が進めばこの世界は消滅してしまうと予測される。
2年後、第三特別実験中隊を救出するべく「オペレーション・ロメオ」が発令。特殊編成部隊「ロメオ隊」がタイムスリップを行う。かつて的場が創設した特殊部隊「Fユニット」の一員だった元自衛官の鹿島勇祐もオブザーバーとして参加し、七兵衛も同行する。到着先は戦国時代に飛ばされてから2年後の1549年。現代に戻れるタイムリミットは、74時間26分。
しかし到着したロメオ隊は対人戦に異常に手馴れした謎の襲撃者によって隊員の半数以上が殺されてしまう。鹿島は指揮官の森に実弾を使うよう迫るが、ロメオ隊は「非常事態」を除き実弾の使用の一切を禁じられているとして、頑なに拒否する。
翌日、鹿島たちのもとにあの襲撃者達が訪ねてくる。「天導衆」を名乗る彼らはなんと実験中隊の面々だった。彼らに案内されたのは、現代兵器で武装された要塞「天母城」だった。そこでは的場陸佐が自らを織田信長と自称し、日本をより強固な国にするべく歴史改変を目論んでいた。
出演者
鹿島勇祐:江口洋介
神崎怜二等陸尉:鈴木京香
森彰彦三等陸佐:生瀬勝久
三國陸曹長:嶋大輔
高梨二等陸尉:井川哲也
的場毅一等陸佐:鹿賀丈史
与田二等陸尉:的場浩司
紅林二等陸尉:入江雅人
飯沼七兵衛:北村一輝
藤助:中尾明慶
スタッフ
原作:福井晴敏
原案:半村良
監督:手塚昌明
脚本:竹内清人、松浦靖
特技監督:尾上克郎
音楽:shezoo
企画協力:渡邊健一、樋口真嗣
登場装備
天導衆
一貫して天導衆の主戦力として活躍した。
騎馬武者の攻撃を受けた際に反撃、主力として活躍していた。
騎馬武者の攻撃を受けた際に退避を試みるが乗員2名が殺害されてしまう。
指揮車として運用されていた。
- AH-1S対戦車ヘリコプター
航空戦力として威嚇にも用いられた。
発射機のみで事実上使用不能。
1発しか使えず割に合わないと判断されたのか使用されている描写がない。
本車のクレーンを使用して天母城を建設したとされている。
ロメオ隊
指揮車両として活躍。
天導衆に鹵獲されてしまうが、藤助が奪還して天母城の脱出に用いる。
2両が投入された。1両はタイムスリップ初日に織田軍に焼き討ちにされて破壊されたが、残る1両はロメオ隊の主戦力として活躍した。
車内を医療用に改造した架空の野戦救急車。
- UH-1J多用途ヘリコプター
タイムスリップ初日に織田軍に鹵獲されてしまうが、天母城脱出の際に奪還。生存者の脱出に用いられた。
- OH-1観測ヘリコプター
タイムスリップ初日に周囲の偵察に用いられたが天母城から放たれた誘導弾に撃墜されてしまった。
パイロットの山瀬二等陸尉を演じたのは東地宏樹。
小説版
2005年5月には福井による小説版も発表された。映画版のプロット的位置づけであり、登場人物の思想や行動、登場する装備などに相違点がみられる。
やはり原典の『戦国自衛隊』との関連性はなく、むしろ福井の過去作品『亡国のイージス』の流れをくむ自衛隊の存在意義を主題にした作品である。
的場のフルネームが「的場丈史」に、的場の創設した特殊部隊の名前が「海兵旅団」に変更されているなど、『Twelve Y.O.』の後日談要素もある。
漫画版
小説版に続いてArk Performanceによる漫画版も発売された。2005年5月に刊行された前編は概ね小説版・映画版を踏襲しているが、12月に刊行された後編では意外な人物がロメオ隊の協力者となるなど大きく異なる展開を迎える。
『Op.ローズダスト』に登場したT-Pexが登場するが、的場のフルネームと特殊部隊の名前は映画版と共通である。
関連タグ
Twelve Y.O.:的場の前歴と思われる「的場二等海佐」が登場する。