もしかして:『おジャ魔女どれみ16』
メディア作品群『おジャ魔女どれみシリーズ』を構成するライトノベル。
『おジャ魔女どれみ16シリーズ』と同じく講談社ラノベ文庫刊。
物語上は『おジャ魔女どれみ16シリーズ』の番外編的な立ち位置(TVアニメ版に対する『おジャ魔女どれみナ・イ・ショ』と、ほぼ同じ位置付けの作品)にあたるが、著者は『16』を担当したメインライターの栗山緑ではなく、アニメ版『どれみ』にて主要サブライターのひとりとして活躍(『16』でもCDドラマの脚本を担当)した影山由美が担当している。
挿絵イラストは引き続き馬越嘉彦が担当しているが、本作オリジナルとなる新たなMAHO堂の外観設計などは『どれみ』の美術担当である行信三が行っている。
概要
AnimeJapan2019で行われた『おジャ魔女どれみ20周年記念 ~マジカルステージ~』において発表された「おジャ魔女どれみ20周年記念作品群」のうちの1作で、同作品群の初作を飾る作品……だったのだが企画と執筆が遅れたことで『おジャ魔女どれみお笑い劇場』に次ぐ「記念作品群第2弾作品」となった。
なおタイトルが『20』ではなく『20's』となっているのは「どれみ20歳の物語」ではなく「どれみ20代の物語」であるため。そのため『20's』と謳っていても物語の内容は、どれみが21~22歳ごろの年代のもの(平たく言えば東日本大震災よりもあとで、それから少し経ち混乱が収まって復興支援ボランティアなどがマトモに活動するようになった時点の物語。さらに言えば『おジャ魔女どれみ19』のエピローグより前の時間軸の物語)である。
『おジャ魔女どれみ19』で触れられ、サラリと流された「どれみの就職浪人時代」にスポットを当てた作品で、この時期を中心としたMAHO堂メンバーの成長に伴うモラトリアムを伴った恋愛模様が主なテーマとなっている。
また企画を行った『どれみ』原作者の一角である関弘美の「『どれみ』をリアルタイムで楽しんでくれた子たちも、もう大人であり様々な苦難を乗り越えてきたはず。その人たちに寄り添った作品にしたい」との意向により、特に「魔法のない(もう魔法なんていらない)『おジャ魔女どれみ』の物語」を強く意識して制作された作品。
恋愛模様がテーマとされたのもMAHO堂メンバーがいずれは経験する成人(ひいては母親へとステップを踏むための過渡期)への成長を強く意識した上での必然ゆえとされる。
ちなみに本作で執筆者が影山由美に切り替わったのは『16』著者にして原作者の一角である栗山緑こと山田隆司が関の立てた企画に対して「 『コイバナ』は苦手だ。 あとは任せた! 」として影山に投げたため。(影山は、コバルト・ピンキー版『ママレード・ボーイ』の執筆担当者であり同アニメ版でも主要サブであり、アニメ版『花より男子』のシリーズ構成。そのため栗山と異なり『コイバナ』は本領とされる)ただし、影山が執筆するための各種資料(キャラごとの成長年表やそれに合わせた世間動向の対比表など)などはキチンと作成しており、影山自身もそれを元に執筆を進めている。
物語自体は『16シリーズ』から作内の時間経過があり独立しているため、様々な経過設定を「そういうことになったのか」と飲み込めば(『どれみシリーズ』に対する基礎知識さえあれば)他の物語に触れず本巻のみ単巻にて読み進める事も出来る。
ただし、きちんとアニメシリーズから16シリーズまでの通読をした方が、物語を深く読み込める事は言うまでもない。
あらすじ
『おジャ魔女どれみ18』で無事におジャ魔女たちを送り出したマジョリカは、再びMAHO堂を改装し、新たなる商売を始めようとする。
マジョリカの目論む、新しい商売はシェアハウス。それを聞きつけた就職浪人中(臨時教員としてバイト中)のどれみは「シェアハウスMAHO堂」の管理人を買って出る。当初は渋るマジョリカだが、シェアハウスにすると多くの人間と触れ合う羽目になり魔女としては窮屈な暮らしになるだろうと、どれみに指摘されたためにオーナーとして魔女界から水晶玉で様子見をする事となった。
かくてシェアハウスMAHO堂には、どれみの他にハナちゃん、ももこも加わりつつ、数名の一般人の入居も決まり、時にお馴染みなどれみのドジもありながらもおおむねは順調に滑り出す。
そして、彼女たちは各々に自らのモラトリアムと人間関係へと徐々に向き合うことになっていくのだった。
書誌情報
ISBN:978-4-06-516234-7