この台詞の飛び出した状況
主人公、ガンダムおたく教師にして妄想王「暴尾亜空(あばおあくう)」が楽しく居酒屋で仲間と一緒にドムの妄想を繰り広げていた際に、現れたSF者「千巣負湾打(せんすおぶわんだ)」
千巣負湾打はドムの開発秘話妄想をSFと称する暴尾に対し、巨大ロボット物自体が非科学的であり、巨大ロボットの科学考証を行い、そんな幼稚なジャンルがSFを語るなと言い放つ。
彼の言い分としては
- あまたの戦争を経験したことで被弾しやすい兵器の巨大化という概念は否定されている。リアルな戦場では兵器は車体を低くし前方投影面積を極力小さくするのが主流。わざわざ被弾しやすく巨大にする必要はない。
- (ガンダムにはミノフスキー粒子というレーダーを無効化する特殊な粒子があり、有視界戦闘の条件下で大口径カメラを高い位置に装備する必要があるという反論に対し)仮にモビルスーツを作るほどの科学技術があるならば戦車にカメラアイを搭載した伸縮自在のアームを装備すれば事足りるし、高低無関係の宇宙空間でもあの大きさで交戦しているのもおかしい。
- パワードスーツのように人間が直接着込んでいるならまだしもコックピットから操縦する兵器が人型とは馬鹿げている。歩兵の攻撃で足首のジョイントを壊されたらおしまいだ。
- モビルスーツの製造費がいくらなのかはわからないが、バズーカよりは明らかに高額。費用対効果的に大損。
これに対し暴尾は、お前の言う事は正しい、ではお前の言うとおりに科学考証の完璧な一年戦争を作ったとして
そこにワンダーはあるのかい
と、返し一転攻勢
過去の千巣負湾打とてSF物にハマった切っ掛けは科学考証の浅いスペオペであり、その事を周りに指摘されたコンプレックスから理論武装を行い、SFを純粋に楽しむのではなく、SFのレベルを高く保とうとしているつもりだが、守っているのは頭が良いと思われたい自分であり、考証マニアの設定バカに落ちていったことを指摘
いいかっキサマが語っているのはSF考証であってSFそのものではない。そこにワンダーはカケラもない
極論すればSFとはワンダーでありワンダーとはおもしろいデタラメだ。その「1」のデタラメをデタラメでなくワンダーと感じさせるための「99」のSF考証が確かに必要だッ。だがッその逆では決してない
極私論だが「一年戦争」はロボットアニメのデタラメを巨大人型兵器のデタラメをワンダーへと昇華させようとした世界でありたとえ考証に多少の不備があろうともオレにとって極上のSF
他人の評価を恐れて自分の愛したものを否定するな!目を覚ませフューチャーメン!背中のサイモン教授が泣いているぞ
と叫び、千巣負湾打にキャプテンフューチャーを愛していた頃の気持ちを思い出させ、退かせるのである。
このシーンの肝
どこの界隈にもいるが、意識高い系のおたくを気取ってファンに冷や水を浴びせてくる輩が居る。だが、その指摘が正しくともそれが物語をつまらなくしてしまっては本末転倒であり、またそういう人間も嘗ては熱い心を持っていたのだという事を熱く語る本作の名シーンである。
過去を振り返れば、ブラック・ジャックにて病気の描写が現実に即していない事を指摘した医師などもこの手合いかも知れない。
そういう経緯を無視して一部のまとめブログ等では、千巣負湾打の考証部分のみ抜出し記事にしている例が有る。
そのような記事を目にした少年少女が、ワンダーを楽しめない大人にならない事を祈るばかりである。
一方で、所謂ガノタと呼ばれる人間がマジンガーZやゲッターロボといったスーパーロボットアニメを「荒唐無稽な子供向けアニメ」と馬鹿にしていた時代もあった。時代は繰り返すと言うかなんというか…。
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