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月刊少年エース』(角川書店)に2007年から2010年まで連載されていた漫画作品。

商店街下町)を舞台にした、ライトファンタジーのご近所様ハートフル人情コメディ


作者はコンプ系およびエース系関連雑誌で『Canvas2』『FORTUNE ARTERIAL ~赤い約束~』のコミカライズ作画を担当していた児玉樹

本作は児玉にとって初のオリジナル連載となった作品。


単行本は雑誌刊行元より全5巻。電子書籍版もあるが配信サイトのバージョンによってはカバー下のオマケ漫画が収録されていないのでご注意。


あらすじ編集

進学校として知られた男子高に通っていた幸村天志は、とある事情で大学受験に見事失敗し卒業と共に学校の寮から追い出され、実家のケーキ屋がある商店街・天神通りへと帰ってくることになった。

6年ぶりに実家へと帰宅したその足で天志は親に連れられて町内会の寄り合いに参加させられる。すると天志はその寄り合いで何も説明されないままにクジを引かされ当たりを引き町内会長に任命させられる。

大学受験にも失敗した若輩の自分には荷が重いと辞退しようとするが、町内会の人々(両親含む)の異様なノリにあれよあれよという間に断れなくなってしまい「自分は認めてない」と苦情を言っても聞き入れられず、結果、天志は町内会長の役と仕事を町会から強制的にやらされることとなってしまう。

街の人々いわく、町内会長の仕事とは「ご町内の平和を守ること」……とはいうものの、その実は町内の雑用係に過ぎない。仕方なく黙々と町内会長の雑用をこなす天志だったが、そんな彼に向けられたのは期待外れの視線。高卒直前、受験の失敗で中高を共に過ごしてきた同級生・親友・教師らから「もはや人生の落後者」と嘲られ見下され絶縁を言い渡されるというヒドい手のひら返しを受けてきた天志にとって、その視線は否応にもトラウマを刺激されるもの。それゆえに苛立ちは募り、天志はついに無邪気に自分を慕ってくれる隣家の和菓子屋の看板娘・天井御菓子に対して「期待なんかされたくない! 帰ってくるんじゃなかった! 」と、その不満を当たり散らし、あげく御菓子を泣かせてしまい自己嫌悪に陥る羽目になる。

そんな天志の前に一人の少女が、突然、怒りも露わに姿を見せてドロップキックをぶちかます。おフクと名乗る、その少女は自らを「天神通りの福の神」と称して天志に町内会長の本当の仕事を教える。実は「天神通りの町内会長」とは、この町内に住まう「八百万の神々」と「町内の人々」との調整役。町内で起こる神と人を取り巻くトラブルを、神の力を借りて即座に解決する神聖な職なのだ、と。人々の期待外れの視線は天志が「神の力」を使わない(=神と人とを取り持ってくれていない)がゆえの事だった。

それを聞いた天志は「だったらますます自分にはふさわしくない!」として町内会長の責務を放棄しようとするも、生来のお人好しから困っている人々は見捨てられず、結果として不承不承ながらも、おフクと共に「ご町内の平和を守る」ためにドタバタの日々を駆け抜けていく。


おもな登場人物編集

  • 幸村天志(ゆきむら たかし)
    • 本作の主人公にして天神通り商店街の町内会長。代々の町内会長に受け継がれる神器会長ばっぢ」を託されて町内会長にされた、大学受験に大失敗したばかりの18歳。商店街にあるパティスリー「カンパニュラ」の一人息子。(大学受験には失敗したが実家の従業員となり町内会長職も遂行しているので、いわゆる浪人ではない)
    • 本来、一本気で気風のよい真っ直ぐな性格である一方、物事(特に人間関係)に不器用で短気。三白眼(時に四白眼)にツンツンの短髪頭。お人好しの常識人で困っている人を放っておけない苦労性。人に頼ろうとせずに何でもかんでも自分一人で物事を解決しようとして、あらゆる問題を自分一人で抱え込む悪癖を持っている。(自分が助けてほしい状態でも人に助けを求められない性格)幼馴染の冬子からは不器用朴念仁という評を奉られる。
    • 物語当初は、大学受験時から卒業期にかけての経験によるトラウマで「人から期待される事(→人からの期待に応えられずに失望されてしまう事)」を何よりも恐れ「どうせ期待に応えられずに失望されるなら、はじめから何もせずに失望されても同じ」として「人に期待されるような事なんかしたくない」と考えていた。
    • 幼馴染や気安いご近所さんからは(てん)と呼ばれている。(天ちゃん/天/天坊など)
  • おフク
    • 天神通りに住まう八百万の神の一柱たるロリっ娘福の神。神々の中においては天神通りの長(町内会長)のマネージャー役にある。
    • 下町育ち&天志の歪みっぷりから言動が粗暴で威厳も無い。(物語当初の)天志に対しては「ヘタレ長」「このアホンダラが!」と手厳しい。
    • 普段の幼女姿では人間の目には見ることができない存在だが、顕現(けんげん:神が目に見える形で人の前に現わすこと)をする事によって手のひらサイズの人形に変幻する事ができ、その姿なら人間に「見られる」上で「ものに触れる、人間の食べ物を食べる」事が可能になる。シュークリームが好物。
  • 天井御菓子(あまのい みかこ)
    • 「カンパニュラ」の隣にある甘味処(和菓子屋)「天井屋」の看板娘。天志の幼馴染。本作のメインヒロイン。天志に無条件の親愛を向ける。その親愛は徐々に恋愛に近づいて行っているが自身は気付いておらず冬子からは恋愛鈍感娘と称されている。
    • どんな時にも笑顔を絶やさない博愛の看板娘である一方、ドコかヌけてる天然娘。ただ天志同様、自分が決めた事にはテコでも動かない頑固さの持ち主でもある。
    • 本来なら高校に通っている年齢(16歳)だが、幼少期に母親を亡くしたこともあり「家に負担をかけられないし、家業を学ぶなら早いほうがいい」として、中卒で店員として家の手伝いに入ることを決め、進学の道を自ら放棄している。
  • 北原冬子(きたはら ふゆこ)
    • 商店街のそば屋「喜多風」(きたかぜ)の看板娘。高校生で学校では陸上部に所属。御菓子と同級生で同い年の16歳にして、同じく天志の幼馴染。ただ天志にとっては御菓子とは異なり、ほぼ完全に「男友達」的な間柄。
    • 草輔から想いを寄せられておりアピールを受けているが、自身からは真剣にはとても見えず、いつも彼に鉄拳制裁を下して黙らせている。実は恋愛が苦手な(恋愛できない)人で「一度確定した関係が変化する事」に対してものすごくストレスを抱くタイプ。そのくせ他人の恋バナは(他人事ゆえに)大好物だったりする。
    • 根っからの商売人気質で店に出ているときは営業スマイルを絶やさず、嫌な客にも愛想よく対処する。6ケタ暗算が得意。
    • 実は幽霊やオカルトが苦手。苦手なのだが、裏を返せば「そういったもの」の認識をしやすいという事でもあり超常現象へのエンカウント率は高く、その度にパニックを起こす。
  • 真名井草輔(まない そうすけ)
    • 商店街の書画骨董店「まない」の代行店主。先代町内会長の孫であり付喪神とコミュニケーションをとる事ができる霊能力者。ただしコミュニケーションをとれる相手は物品を媒介とする付喪神のみであり、おフクのような福の神や依り代の無い自然神(ほむら、みなせ、はやて、など)は認識ができない。
    • 冬子の事が好きだが、彼女の事を思うあまりに事ある毎に自身の気持ちをまぜっかえして伝えてしまう(好意は伝えたいが関係性を壊して冬子に負担をかけさせたくない、という複雑な葛藤に起因する理由による)ため、冬子からは真剣味を疑われてストーカー扱いされている。
    • 天志と同じ視点で彼ら彼女ら以上にはしゃぎまわるために幼く見られがちだが、実は20歳の成人である。
  • 真名井草十郎(まない そうじゅうろう)
    • 草輔の祖父であり「まない」の店主。先代町内会長。町内会長引退後は店を孫に任せて楽隠居し、世界中を放浪している。
    • 天志がその性格から天神通りの神々とトラブルを起こした際には神器のばっぢの無い状態でありながら、天志を導き神々たちを説き伏せ、その偉大なる背中を見せた。
    • 老齢ゆえに町内会長の座を天志に譲るも、ひとつだけ「やり残した仕事」があり、結果的にそれを天志に託す形となっている。(なお天志は本作の最終章でそれを見事にやり遂げている)
  • 湖宮頼子(こみや よりこ)
    • 商店街にある薬局「薬のコミヤ」の看板娘であり代行店主。外国を放浪しつつアヤしい材料を集めて自家薬を調合するのがシュミで、常に調剤の常識から外れたデタラメなレシピエントを構築する。しかしレシピエントはデタラメだが出来上がった薬は(タチの悪い事に)キチンと効果のあるモノとなっている。
    • 天志・御菓子・冬子の「幼馴染三人組」の姉貴分。幼いころから彼らの面倒をよく見ており、天志の中学受験では家庭教師も務めた。御菓子と冬子の事は、ものすごく甘やかしている一方、天志に対してはいらんちょっかいをかけるわ逆セクハラをかますわと基本的に(天志にとっては)トラブルメーカーな困ったおねーさん。
    • 設定上では20歳。そのため日本の正規薬学教育過程を真っ当に受けたと考えるのは難しい。(いわゆる薬学部などを通過して薬剤師になっていると考えると、連載当時は最低でも22歳は越えていないといけない。現行資格ではストレートでも24歳越えになる)可能性としては外国放浪癖があるため(海外短期留学の繰り返しとネットで)外国において飛び級などで薬剤師資格を取得したのちに日本の管轄機関(厚労省・薬剤師会など)に「薬剤師相当」と認めさせた(薬剤師法第15条2号に相当する者)としか考えられない。ただし一番、単純に考えられる可能性は「表向きは親の薬剤師名義を使って薬剤を調合している(薬学部に在籍はしているが資格は無い)」(薬剤師・調剤士としてはモグリ)というものだが、これは法律違反(名義貸し)になる。
  • 八雲(やくも)
    • 天神通りのある地区に名を馳せている高津原財閥を運営している高津原家に仕えているメイド。同家のお嬢様である五十鈴のお付きであり彼女の幼馴染としての立場も持つ。非常に運が悪く出川級不幸メイド(あるいは超ド級不幸メイド)とまで呼ばれる。
    • 神器の首輪を身に着け、その身に「高津原家の守り神」を宿すとする、依童巫女。しかし、おフクの感じるところでは彼女についているのは守り神どころか疫病神であるという。
    • その正体は本来、高津原家に降りかかるべき厄災を避雷針のように身代わりとして身に受け、その災禍を肩代わりする人柱。(主である五十鈴はその事実を知らない)
    • 実は後日談で八雲のドジと不幸は疫病神とは関係ない天然モノである事が証明されてしまった。
  • 高津原五十鈴(たかつはら いすず)
    • 高津原家のお嬢様。天志に「復讐」するため、彼をつけ狙っている。天志が大学受験に失敗した最大の原因
    • お嬢様(次期高津原を担う者)として八雲はじめ多くの使用人に傅かれているが、本人はその立場ゆえに両親からは愛情を受けるほどの接点を持たされず、対等の友人も存在しないという、結構、孤独な存在。それゆえに対人のコミュニケーションにおいては異常に不器用で、他人への愛情(親愛を含む)の向け方を全く知らず、その情の表出は、およそ敵意・害意にすり替わって表現される。(祖父・両親が「商売敵を叩き潰し、使用人をこき使う」有様が身近であったため、それが他人に対する当たり前の行動と認識している)
    • ただ人とのコミュニケーションの難を克服すれば、他者に情け深い愛情溢れる少女。実際、なんだかんだと言いながら超ド級不幸メイドの八雲を見限る事なく手をさし伸ばし続けている。(五十鈴は八雲の家に課せられた事情を全く知らないので、彼女の立場から見たら八雲の事は事ある毎に騒動を起こす単なる足手まといにしか見えない)そして実質上の幼馴染である八雲への信頼はお嬢様とメイドという立場を度外視しても強固なものとして成り立っておりとても篤い。ぶっちゃけテンプレツンデレお嬢
    • 実は高津原家自体が天神通りに対して大きな因縁を持つ存在なのだが、五十鈴本人はその事を知らない。
  • ほむら(炎の神)
    • 炎の神。少年姿。短気で気風は良く空気が読める漢。天志に対しては自分たちを頼ろうとしない事から苛立ちを抱いている。
  • みなせ(水の神)
    • 水の神。少女姿。飄々としておりアッサリとした人で、自ら否を認めて頭を下げた者には、それ以上の因縁は持ち越さない(まさに「水に流す」事が信条)。ほむら同様、天志に対しては自分たちを頼ろうとしない事から苛立ちを抱いていた。
  • はやて(風の神)
    • 風の神。風龍の姿。性格としては人懐っこく幼く、カタコトでコミュニケーションをとる。おフクと仲が良いため早いうちから天志に力を貸しており、天志にもよく懐いている。
  • まゆい(縁結びの神)
    • 縁結びの神。お姫様姿。能天気でかしまし気質の恋バナ大好き「きゃぴきゃぴ系」乙女。縁結びの神だが結ぶのは「縁」のみであり、そこからどうなるか(結ばれた縁をどう活用していくのか)は縁を結ばれた本人(人間)たち次第。
    • 実は顕現姿は人間そのもの。時折、お忍びで顕現しては天神通りで遊んでいる。ただし人間に顕現しても神としての気配は消しきれず、動物たちからは怯えられたり吠えられたりしている。それが原因で犬に吠えられた時、草輔に助けられ、彼に「恩返し」をしたいと考えている。
  • 疫病神
    • 高津原家に取り憑くも、高津原家の策略のために叶わず八雲に縛られている疫病神。なぜか、おフクに対して思うところがあるらしい。

関連タグ編集

少年エース

商店街 福の神



※ 以下、ネタバレ注意!









キーキャラクター(ネタバレ)編集

  • 天神通りの福の神 / 疫病神
    • 50年前に天神通りより離れて高津原家へと就いた、天神通りの本来の福の神にしておフクのオリジン。五十鈴の祖父である高津原勲の甘言により、分霊のおフクを自らの代行として天神通りに残した。その際に自らの身を勲の持つ首輪の神器(現在、八雲へと受け継がれている首輪)へと縛る。その首輪も元々は「会長ばっぢ」と対を成す天神通りの神気だった。前述した先代町内会長の「やり残した仕事」とは、彼女と神器の奪還である。
    • 当初こそ福の神として高津原家に幸いをもたらし続けていたものの、店を成功に導いたら次の店、多くの店を持ったら地域、地域を制覇すれば国、国に名を轟かせれば世界、世界に冠すれば宇宙事業……と、際限なく膨らんでいく高津原家の欲望と、その犠牲となっていった人々の不幸と怨嗟に悲しみ苦しみ、あまつさえ高津原家に就いた時の「高津原家にもたらした福と財は天神通りへと還元する、その時には福の神も天神通りへと返す」という約定は果たされず、しかも勲はその約定を次世代に伝える事もせず、実質上、反故にしてしまった。これらの事象を理由として怒りを募らせ高津原家への怨嗟に囚われて闇堕ちし、結果、疫病神へと転化してしまう。
    • ところが事態を察知した勲の奸計により本来ならば高津原家に行くはずの彼女の放つ災いは、八雲の一族が被る災いへと転化される事となってしまう。
    • これらの事態を改善し、高津原家にしかるべき報いを受けさせることを願い力を欲する。そして八雲と五十鈴の事情から再び天神通りに関わる事となり、そして自らがかつて残した力の分身が成長していた事を知る。これにより、かつて分けた力を自らの下に取り戻す事を狙い、五十鈴と八雲を言葉巧みに誘導。天志に病厄を降ろし、おフクをおびき寄せて自らに同化させることに成功してしまう。
    • が、天神通りの人々(特に草輔と幼馴染たち)によって復活した天志の呼びかけ(……というか罵倒)におフクが(怒りの)復活。この、おフク覚醒イベントにより人格の主従が逆転し、おフクの魂の奥底に封じ込められてしまう。(おフクはおフクで急成長し、首輪の縛りも覚醒の勢いで解除させてしまった)
    • のちに天志に対し彼の夢の中で「自分はただ帰りたいだけだった。それなのに、そのために天神通りに馴染めない疫病神になってしまった」と悔い嘆き、せめて償いにと天志を導こうとするが逆に天志から「だったらあんたも一緒に来い! あんたも元は天神通りの住人だろうが!」(自分たち天神通りの皆は、厄だろうが何だろうが気にしない)と活を入れられ、おフクから再分離して復帰。復帰後は天神通りの神々の一柱となるが、結果おフクは再び成長前の姿に戻ってしまったために激怒。その後はぶっちゃけおフクの母親としてふるまい「娘」のおフクを教示し導こうとする……が、その肝心の娘には反発されまくりだったりする。
  • 高津原勲(たかつはら いさお)
    • 五十鈴の祖父。高津原財閥の創業者。物語開始時点で既に故人。そして天神通りの出身者であり、もうひとつの神器「首輪」を受け継ぐ一族の末裔。
    • 戦後に好景気と都市圏集中の波を見据え「このまま天神通りにいては未来など無い」と考え、そこから脱却するために当時の町内会長である草十郎を説き伏せ、天神通りから神器と福の神を持ち出し、その力で高津原財閥を立ち上げた。しかし彼にとって全ては「天神通りという小さな泥船のごとき愚かしい世界」から離れるための方便にしかすぎず、その後の天神通りと、また自らについてきてくれた福の神との約定をことごとく破棄。自らを地の希望よと送り出してくれた人々に対し、彼らを下らない日常に縛られて何もできない愚かしい負け犬、生きるしかできないバカな弱者よと嘲笑った。
    • のちには福の神を迎えに行こうと勲のもとに赴いた草十郎を様々な手段で手ひどく追い返し、トドメには八雲の一族に恩を着せて(状況を鑑みるに、いわゆるマッチポンプの可能性が高いが)未来永劫子々孫々代々に至るまで自ら喜んで疫病神の防波堤となるように仕向け、自ら及び高津原家の子々孫々累々に疫病神の類が及ばぬようにするという外道な手段をとった。
    • さらには、その様を当然のこととして考えており、それゆえに子どもの教育も「そういう方向」に発露され、最終的には五十鈴の精神的な病理にまで類が及んでいる。

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