ゆかてんとは、東方Projectにおける二次創作のカップリングのひとつ。
八雲紫と比那名居天子のカップリング絵につけられるタグである。
原作での関係
異変を起こしたものの霊夢に倒され、博麗神社の建て直しをさせられることになった天子であったが、
それらはすべて天子の計画通りであり、神社に細工を施して密かに自分との縁を結び付けようとしていた。
天子の企みを看破した紫は、新生神社の落成式において天子を捕まえ、激戦の末、ぎったぎたに叩きのめす。
(戦いによって神社は再度倒壊し、今度は萃香が復興を手伝うこととなる。)
この時、天子に向かって紫が放ったセリフ「美しく残酷にこの大地から往ね!」は印象的。
紫が怒った理由には様々な説があり、「もともと天人が嫌い」「地震が起これば幻想郷が壊滅するところだったから」
「広い住処を持ちながら地上にも住もうとしたから」「博麗神社倒壊の際、結界に危険が及んだから」など。
むしろ、これら全部かもしれない。
紫とは旧知の仲として知られるキャラとして、西行寺幽々子と伊吹萃香がいるが、
作中での描写を見る限り、萃香は天子とも仲がよく、幽々子にいたっては異変による「夏の雪」を楽しんだため、
異変を起こした天子に対して逆に感謝しているところも興味深い。
天子についてはその天人らしからぬ感情豊かで子供っぽいわがままぶりなどをして「 天界のオアシス 」とされ天子自身も天界に飽きている様子も見せており、一方の紫もまた静謐な世界である月の都に対して「 自分には都会の喧騒が必要なのだ 」(『東方儚月抄』)として月の都の平坦な時間感覚ではなく時には可能性が花開くための「 混乱 」さえ肯定する(紫、『東方紺珠伝』)など、実はそれぞの肌に合う環境は多様な可能性と刺激に満ちた地上の、幻想郷的な世界であるという共通点もまた持つ。
また文々春新報創刊号には天子がコラムを寄せ、紫もとあるインタビューに応えているなど同一誌面で各々の言葉が語られている機会も持つ(『東方文果真報』)。このときも天子は「食」への感動という地上での喜び、紫は今の特定の外来人さえも受け入れる幻想郷の在り方の支持といった両者それぞれの形での新しい刺激への肯定を見出しており、紫と天子はそのメンタリティにも共感する部分を持つ。
投我以桃、報之以李
「東方緋想天」の対戦モードにおいて、紫を使用して天子に勝利した時のセリフ。
読み方は「我ニ投ズルニ桃ヲ以ッテスレバ、コレニ報ユルニ李ヲ以ッテス」。(「李」とは「すもも」のこと。)
紫のセリフは、このあと「私に桃を持ってくれば、李を持って許しましょう」と続く。
中国最古の詩篇である「詩経」からの引用であり、漢文を嗜む天子にあわせた粋な言い回しといえる。
「きちんとした対応をしてくれれば、ある程度は仲良くしてもいい」というニュアンスの発言であるため、
多少なりとも天子を受け入れる姿勢をみせていることがうかがえる。
緋想の剣を持った紫
黄昏フロンティアが発売した東方緋想天のサウンドトラックCD「全人類ノ天楽録」のジャケット絵には、
緋想の剣を持った八雲紫が描かれている。
設定では「緋想の剣は天人しか扱えない」が、天人以外では気質を操ることが出来ないというだけで、
手に持つだけならば誰でも出来るということになる。
そのため、この絵のように、妖怪である八雲紫が緋想の剣を手に持っていても別段おかしいことはない。
とはいえ、ゲーム本編で「美しく残酷にこの大地から往ね!」とまで言い放った相手の持ち物を持っているのは、ただごとではないだろう。
普通ならば、嫌っている相手の持ち物を手にしようとは思わないからである。
天子にとっても、緋想の剣は本来自分の持ち物ではないとしても、相当大事なものには違いない。
自分の分身ともいえるこの剣を渡してしまえる人物は、天子にとって相当気を許せる相手だということになる。
このことから、この絵は「ゲーム本編から時間が経って、天子と紫は大事なものを渡し合えるほど仲が良くなっている」
と解釈することもできる。
幻想郷での再会
『東方憑依華』では天子はとある事情から地上へと降りており、当時幻想郷に蔓延っていた都市伝説異変を応用した完全憑依異変に触れることとなった。完全憑依異変は紫も対処に乗り出しており、黒幕こそ見出したもののその黒幕らが用いる方法が紫にとっても難儀なものであったために決定打を見出せずにいた。
そんな折に紫が出会った夢の世界の住人らとの関係を通して完全憑依異変に夢の世界が関わっていることを知り、ここから一計を案じて博麗霊夢を鍛えるのであるが、この鍛錬の段階で紫は、『緋想天』などでも見られたようないつもの調子で地上制覇を目指す天子と再会するのである。
天子は完全憑依のコンビとして少名針妙丸と組んでいたが、この針妙丸が実際には夢の世界の住人で、しかも自らの意思で天子も気づかぬままに以前まで組んでいた現側の針妙丸とすり替わっていた。
この現象を目にした紫はこれまで得た完全憑依と夢の世界の関わりに関する情報と共に完全憑依を打ち破る方策を見出す。完全憑依異変への対抗には紫が大きく関与したが、その紫に具体的な方策を見出させたのは偶然にも天子とその縁であったのである。
その実紫は、再会当時の状況が切羽詰まっていたことや先述の『緋想天』での経緯もあってか天子との再会に苦い様子も見せており、一方の天子はかつて辛酸をなめさせられた紫との再会を再戦の機会として喜々としているなど、両者の心理のベクトルの噛みあわなさが本作でもみられている。
天子が乱入してきてからの紫は一時、他の場面で見られるようないつもの捉えどころのないような余裕も失くし、感情(嫌悪感)を表に出すなどの様子が見られている。
また『憑依華』では自由対戦モードにおいて任意に完全憑依のコンビを設定することが出来、この際には作中での二名の二つ名にあわせて完全憑依のコンビの二つ名もまたそれぞれ設定されるというシステムがある。紫と天子の場合はそれぞれの二つ名をベースに、紫がマスターの場合(「紫&天子」)は「 神出鬼没で浮世離れした二人 」、天子がマスターの場合(「天子&紫」)は「 緋想的で裏表のある二人 」となる。この対決で紫が勝利すると天子に対して笑顔で皮肉を言うなど、相変わらずの互いのそりの合わなさが描かれている。
二次創作における関係
飄々とした性格の紫が珍しく感情を露にした相手として、天子を「特別な存在」と見る傾向がある。
天子にしても、作中、手加減抜きで敗北した数少ない相手であること。
また、二次では寂しがり屋な側面を強調されることが多いため、
全力の怒りをもってぶつかってきた紫との関係には妄想も広がるのではないかと推察する。
関連イラスト
- 憑依華での再会