概要
アウェイデー(Awayday)とは、イギリスの作曲家アダム・ゴーブ(Adam Gorb)の作曲による吹奏楽曲。
イングランドの北部にあるロイヤル・ノーザン音楽大学ウインドアンサンブルと同楽団の指揮者であるティモシー・レイニッシュからの委嘱(いしょく)を受けて作曲され、1996年11月27日に委嘱主によって初演された。楽曲のグレードは5。
レナード・バーンスタインの『ウエストサイド物語』をはじめとするアメリカのミュージカル・コメディ、およびそれらが隆盛を誇っていた時代からインスピレーションを受けて作曲されており、曲全体を通してモダンかつ都会的、そしてシャープでヤングアダルトな雰囲気を漂わせているのが特徴である。また、曲名である『アウェイデー』には、”日常の仕事から離れた休日のひととき”という意味のほかにも、かつてのブロードウェイ・ミュージカルの華やかなりしころへの追想である”過ぎ去った日”という、二つの異なった意味が含まれている。
余談だが、作曲者であるゴーブはこの作品のスピード感を言葉で表すために「ジョージ・ガーシュウィン、バーンスタイン、イーゴリ・ストラヴィンスキー、そしてジェームズ・ボンドがみんな一緒にオープントップのスポーツカーに乗り込み、時速100マイルの猛スピードでかっ飛ばしている様子を想像してみよう(※)」というコメントをプログラムノートに寄せている。
(※"If you can picture George Gershwin, Bernstein, Igor Stravinsky, and James Bond traveling together at a hundred miles an hour in an open-top sports car, I think you'll get the idea.")
曲の構成
冒頭~前半部
Presto (2分音符=144) 2分の3拍子→2分の2拍子
曲は単一楽章で、”急・緩・急”の繰り返しによるソナタ形式をとっている。
二つの8分音符からなる鋭利なトゥッティで幕を開けた曲は、フルート、クラリネットらの下降系連符の受け渡し、トロンボーンに端を発するジャジーなパターンの提示を経て、ドラムスの刻みと低音楽器のリズミカルな4ビートを伴った快活な第1主題へと流れていく。
次いで現れたサックスが、dolceの指定がなされた緩やかなシンコペーションの第2主題を示し、和声とメロディを効かせた構成で第1主題との対比を見せる。このメロディはフルートやオーボエをはじめとする木管楽器の高音部へと引き継がれていき、ピアノやグロッケンに飾られる幅広い流れを見せたのちにチャイムとともに終息する。
やがて、ファゴットによってふたたびリズミカルな動機が示されると、冒頭の8分音符二つのトゥッティの再現に続いて金管楽器の下降フレーズと木管楽器の絶え間ない連符の奔流(ほんりゅう)が同時並行的に展開されていく。
展開部
ミュートをつけて奏でられる金管楽器の弱奏の上で、クラリネット、オーボエ、フルートらが切れ目ないフレーズを紡いでいき、その終わりと同時にピアノの小気味いいバッキングを受けたリズミカルな展開部が始まる。
導入部のリズムを応用しつつ、サックスらの木管楽器群によって少しずつテンションを上げていくそのフレーズは、発展の途上でアゴゴベルやドラムスなどを巻き込みつつ、ひとときの安堵(あんど)を挟んだのちにパーカッションを前面に押し出した激しいラテン調の狂騒を繰り広げる。
再現部
パーカッションの熱い狂騒を経て再現部に入った曲は、そこからふたたび第1主題と第2主題を繰り返す。
ドラムスのハイハットとベースの刻む4ビートに乗ったスピーディーな第1主題のフレーズののちにコードを変えた第2主題が現れ、よりきらびやかになったサウンドを木管高音群とトランペットが柔らかに歌い上げる。余韻に浸るかのようなクラリネットやフルートらの連符が過ぎ去ると、トロンボーンとミュートのトランペットが主題の終わりを優しく締めくくる。
その穏やかな雰囲気を打ち破るようにして金管低音群が割って入ると、それに続いてクラリネットをはじめとするほかの楽器も次第に加勢し、トランペットが高らかに奏でるコーダへと突き進んでいく。
最後は冒頭でトロンボーンが示したジャジーなモチーフを全員で奏でつつトゥッティと下降連符へとなだれ込み、その一気呵成(かせい)な勢いのままに4つの音型を炸裂させて幕を閉じる。
主な演奏団体(関連動画)
ロイヤル・ノーザン音楽大学ウインドオーケストラ(Royal Northern College of Music Wind Orchestra)
ノーステキサス・ウインドシンフォニー(North Texas Wind Symphony)
ジョージア大学ウインドアンサンブル(University of Georgia Wind Ensemble)
アメリカ海兵隊バンド(The United States Marine Band)
オーケストラ・コレクティブ・シンガポール(Orchestra Collective Singapore)
東京藝大ウインドオーケストラ(Tokyo Geidai Wind Orchestra)
関連タグ
ミュージカル スポーツカー バーンスタイン イーゴリ・ストラヴィンスキー ジェームズ・ボンド
外部リンク
参考文献
- 樋口幸弘(解説) 東京佼成ウインドオーケストラ『パリのスケッチ』CDブックレット 株式会社佼成出版社 2000年12月9日リリース 10~11ページ
- 秋山紀夫『吹奏楽曲プログラム・ノート2』 株式会社ミュージックエイト 2014年5月14日発行 96ページ
- 伊藤康英・鈴木英史・滝澤尚哉『吹奏楽作品 世界遺産100 後世に受け継がれゆく不朽の名曲たち』 株式会社音楽之友社 2024年4月5日第1刷発行 86ページ