概要
海の男達の歌(Songs of Sailor and Sea)とは、アメリカの作曲家ロバート・W・スミス(Robert W. Smith)の作曲による吹奏楽曲。
アメリカ海軍バンドのジョン・R・パスティン少佐の委嘱(いしょく)により作曲され、1996年12月のミッドウェスト・バンド・クリニックで委嘱主によって初演された。楽曲のグレードは4。
原題を正しく訳すと『船乗りと海の歌』になるものの、『海の男達の歌』という邦題についても広く知れ渡っており、コンサートのプログラムなどにどちらの題名を表記するかについてはしばしば議論の的になっている。
「海の男達」「船乗りと海」という題名が示すように、どこまでも広がる大海原、押し寄せる荒々しい波濤(はとう)、神秘的な深みと静けさの夜の海、そして海とともに生き、挑戦し続ける勇敢な船乗りたちの姿を曲全体を通して描いている。
曲の構成
冒頭
Reflective,yet flowing(♩=68-72) ~ Powerful(♩=64-68)
オーシャンドラムによる波の音色のささやきのなか、トランペットとホルンの二重奏による静かなメロディが奏でられる。
シップスベルが打ち鳴らされ、低音楽器の静かな広がりとウインドチャイムのまばゆい煌(きら)めきとともに再度メロディが流れると、木管楽器とティンパニの湧き上がるようなクレッシェンドに乗り、曲は一挙に強奏のコラールへと盛り上がる。
出航を告げる鐘が高らかに響き渡り、ホルンとサックスの力強い旋律が航海への意気を高めていくと、曲は広大な大海原へとその舞台を移していく。
シーシャンティ("Sea Chanty")
Lively(2分音符=98) 2分の2拍子
行く手に広がる海原を突き進み、陽気に仕事をこなす船乗りたちの「舟歌」がモチーフになっている。
チューバ、トロンボーンのシンコペーションを効かせたベースライン、フルートやピッコロによる3連符の揺れ動きに乗って、クラリネットやトランペットが勇ましくも陽気な男たちの歌を歌い上げる。
また、曲の途中では各種管楽器による3連符のトゥッティとアンカー・チェーン(鎖)の打ち下ろしにより、船乗り全員が力を合わせて作業をする描写もなされている。
鯨の歌("Whale Song")
Misterious(♩=76-80)
激しい航海から一転し、穏やかに凪ぐ夜の海、どこからか聴こえるザトウクジラ(Humpback whale)たちの声が描かれる。
無音のなか、ティンパニの特殊な奏法による鯨の鳴き声が響くと、低音楽器とウインドチャイムによる神秘的な雰囲気のもとにユーフォニアムの3音のフレーズが静かに流れていく。
やがてそのフレーズはオーボエへと受け渡され、Expressive(表現力豊かに)の情感を込めた美しい調べのもとに船乗りたちを労わっていく。
最後に旋律はふたたびユーフォニアムに戻り、静かにまとまる響きのなか、ティンパニの鯨の歌だけが鳴き交わされる。
ヤンキー・クリッパーの航海("Racing the Yankee Clipper")
Majestic(♩=124-132)
19世紀のなかばに登場し、1世紀以上にわたって破られることのない航海記録を打ち立てた快速帆船『ヤンキー・クリッパー』の華々しい活躍を讃えている。
静寂を割って鳴り響くホルンの堂々としたソリ(Soli)とパーカッションの抜錨(ばつびょう)の号令によって幕を開けたセクションは、華々しく整然とした出航のファンファーレ(Broadening)のもとに士気高らかに大海原へと繰り出していく。
船出とともに曲はふたたび「シーシャンティ」の調子へと戻り、巻き上がったテンポ(Aggressive!)に乗りながら、荒れ狂う連符の木管楽器とトロンボーン、ホルンらによる豪快なオブリガードが真っ向から激しくぶつかり合っていく。次第に高まる曲中の不穏さはFuriousで頂点を迎え、うなりを上げて逆巻く怒涛(どとう)とその真っただなかを進みゆく船との一騎打ちの様相を呈する。
Powerful(♩=64-68) ~ With unyiedling intensity(2分音符=98)
そして、緩まるテンポとともにふたたび冒頭の盛り上がりを見せると、ベルトーンで重なる金管楽器、舞い上がる連符の木管楽器が圧巻の終幕に向けて流れを加速させていく。
主な演奏団体(関連動画)
海上自衛隊東京音楽隊(JMSDF BAND, TOKYO)
アメリカ海軍バンド(The United States Navy Band)
大阪市音楽団(Osaka Municipal Symphonic Band)
フィルハーモニック・ウインズ 大阪(Osakan Philharmonic Winds)
関連タグ
SOULCATCHER(S) - Op.75(第75話)以降に登場。
吹奏楽コンクール西関東大会(支部大会)および全国大会において、竹風高校吹奏楽部がコンクール自由曲として演奏を披露する。
響け!ユーフォニアム - 原作小説の公式ガイドブック『北宇治高校の吹奏楽部日誌』収録の短編、『冬色ラプソディー~北宇治高校 定期演奏会~』に曲名が登場。
3年生の田中あすかが定期演奏会の希望曲のひとつとして挙げており、また、簡単な曲の解説も披露している。
外部リンク
参考文献
- 秋山紀夫『吹奏楽曲プログラム・ノート』 株式会社ミュージックエイト 2003年6月18日発行 485~486ページ
- 中橋愛生(解説) 東京佼成ウインドオーケストラ『吹奏楽燦選 嗚呼!アフリカン・シンフォニー』CDブックレット 日本コロムビア 2014年10月22日リリース 5ページ