アウグスト・クビツェク
あうぐすとくびつぇく
クビツェクはアドルフ・ヒトラーの青少年時代ほぼ唯一の友人である。
2人はオーストリア第3の町リンツのオペラ劇場で知り合うこととなり、一方的にしゃべり倒すヒトラーと聞き上手のクビツェクは不思議と馬が合い意気投合し、以降数年にわたり親しい友人関係を結んだ。ヒトラーからの信頼は厚く、黒歴史にしたいようなヒトラーの恋愛沙汰に関わっていたり、後に再会を熱望する手紙において彼がめったに使わない「Du」というドイツ語で親しい間柄で使われる二人称が用いられているほどだった。
また、ヒトラーの母クララはクビツェクに「アドルフに父が望んだような生き方を選ぶようにと、説得して欲しい」としばしば頼んでいたという。クララが病に倒れた後の見舞いでは彼女からヒトラーに対する怒りや悲しみを含めた愚痴を聞かされており、クララからは信頼されていた模様である。
しかし、ウィーンに2人が移住して以降2人の間に距離感ができるようになる。地道な勉強を怠らなかったクビツェクをよそに嫌いなものはとことんサボり読書と夢想にふけるヒトラーは落ちぶれていき、二度目のアカデミー試験に失敗した際にヒトラーは彼の前から姿を消した。ヒトラーが姿を消したのは徴兵忌避の理由もあったが、親友に試験の失敗した姿を見られなくなかったためでもあった。そのことを察したのか、クビツェクもヒトラーを探したりはしなかった。
その後クビツェクは順調に指揮者としてデビューしたが、その音楽家としてのキャリアは第一次世界大戦によって潰え、敗戦後は役場に転職して音楽活動は地元のアマチュア楽団を主宰するにとどまっていた。
1933年にヒトラーの首相就任を受けて祝電を送った事をきっかけに二人は再び関わることとなる。この時のヒトラーはクビツェクに手紙を返信しており、再会を熱望している。そして、1938年に二人は思い出の地リンツで再会を果たす。その時、ヒトラーはクビツェクに役場での昇進や息子たちの音楽教育の支援を持ちかけたが、クビツェクは固辞した。これに業を煮やしたヒトラーはなんとしても友情に報いたい一心で共通のファンであるワーグナーの一族が主催するバイロイト音楽祭にヒトラーは2度も全日招待した。これにはクビツェクも「人生で最大の幸福」と感激したという。
2人が最後に面会したのは1940年のバイロイト音楽祭最終日だった。フランスを下し、独ソ戦前にもかかわらず物憂げなことしか言わないヒトラーにクビツェクは驚いたらしい。ヒトラーが最後にクビツェクに残した言葉は「戦争が終わったら私は君を新しい建築のために呼ぶ。君はずっと私といるべきだ」だった。
1943年にはヒトラーの命令を受けたマルティン・ボルマンにより地区戸籍局長に任じられている。
クビツェクは政治に関心がなく、せいぜい党員向けの冊子の製作スタッフとして一時的に雇われたり、友情に応えるためにナチスへ入党した以外目立った活動は行わなかった。ヒトラーとの再会以降は同僚が怯えたり、あるいはコネ目的でごまをすったりすることにうんざりしていたようである。
第二次世界大戦後、連合軍により長期にわたり取り調べを受けた。この時、連合軍の関係者から『何故ヒトラーと再会した時に、彼を殺さなかったのか?』と難詰されたが、クビツェクは『友人だから』と返したとされている。
結局、罪を問われることはなく釈放。晩年にはヒトラーとの青少年時代の思い出をつづった著書を出版しており、記憶違いや誇張などが指摘されるが当時のヒトラーを知る上での貴重な資料としてみなされている。
- 服装などの趣味はいいとこの坊ちゃんで、常に清潔。
- 喋りだしたら止まらず相手が聴いていようといまいと長時間話し続ける。
- 女性関係に対して非常に奥手で内気。一目ぼれした女性にまともに話しかけられずクビツェクに泣きつく始末。
- 家事炊事は母や妹任せ。しかし、母が末期癌であると知ると人が変わったように熱心に家事の手伝いを行った。
- 他人には薄情だが友人にはどこまでも義理堅い。クビツェクが音楽家としての勉強をできるようになったのも、彼が反対するクビツェクの父を熱心に説得したおかげ。
- 職人の様な職業に偏見があった。そのため、クビツェクが父の仕事を手伝って音楽鑑賞の待ち合わせに遅れた時には「そんなことのために貴重な芸術の時間をムダにするなんて」と怒っていたという。
- 青年時代から反ユダヤ的な言動を行っていたとされる。
関連記事
親記事
兄弟記事
コメント
pixivに投稿されたイラスト
すべて見るpixivに投稿された小説
すべて見る独裁者の友達がお盆に国に合う話【史実ヘタリア】【閲覧注意】
どうも妹です。 前回の作品に「最後にレスしている人は誰なんですか?」 とのコメントをいただきましたのでこんなものを作ってみました。 ■ブクマ、コメント、評価ありがとうございます! 注意! 某ちょび髭の友達が国たちに絡んでいます。 オーストリアさんがとんでもない迷子を繰り広げるなどいろいろぶっ飛んでいます。5,026文字pixiv小説作品- 青春の友二人で現代パロ
獣に似た花の咲き方
【キャプションというより後書き】 オメガバースの方が辛い展開になってきたので息抜きに幸せな二人を……と書き始めたら思いのほか長くなり、こっちも辛くなってしまった、というお話です。 でも、ここから何とか幸せな展開にしていきます。 一人称視点で、二人の視点が時々入れ替わりますが、分かりにくかったかな? という反省が残りますね。10,698文字pixiv小説作品 - 青春の友二人で現代パロ
片恋に似た罪の抱え方
第4話と同日の尊くんパートです。 彼の中にも誰かいるみたいですね。 《 》の中の言葉を、どうも本人はすぐ忘れていくようですが……(Wordで書いた時は取り消し線でしたがpixiv投稿では表示されなかったので《 》で代用しています)。 【追記】 三月中にやっと更新できました……体調不良と繫忙期が重なり、加えて執筆途中に三時間分の作業が消えるというトラブルもあり、進捗が今一つな一ヶ月でした。 4月は頑張ります。19,256文字pixiv小説作品 - 青春の友二人で現代パロ
虚言に似た母の葬り方
青春の友二人で現代パロ第九話です。 ※ある登場人物が同性愛について差別的な発言をするシーンがあります。章タイトルに注意書きがある章を読み飛ばしても展開は分かります。苦手な方は避けてください。 クビツェクの回想録で「アドルフの母がクビツェクに息子の愚痴を溢す」というシーンがあります。 子どもの悪口や欠点を本人のいない場で親が親しい人に話すことは、ありふれた光景ではありますが、子どもにしてみれば嫌なものではないでしょうか。 それを頻繁にしていたアドルフ母は、片親の心細さもあったとはいえ、やはり、母親として弱く狡猾だったと思います。 グストルも嫌だったろうな……アドルフはグストルから母の愚痴を聞いていたのか、聞いたとしたら何を思い言ったのか……そんな思いからこの話はできました。 史実では無かった、母の弱さと狡猾さと対決する息子を書けて満足です。 母親と息子の問題は現代にも通じる問題であり、ひょっとしたら十九世紀より今日のほうがずっと深刻かもしれません。12,423文字pixiv小説作品 晴天の下、碑に辺りす
秋月達郎『天国の門』という小説の二次創作です。 原作未読の人にも分かる話ですが、ネタバレを含みますことをご了承ください。 物語の終盤でヒトラーがエーファ・ブラウンにだけ打ち明けた過去を親友クビツェクにも打ち明けていたら……という妄想と阿部良男『ヒトラー全記録』1916年12月にヒトラーがクビツェクの以前の住所に宛てて手紙を書いているという指摘から産まれた作品です。 子どもが作るパフェのように好きな具材をドカドカ盛っていくうちに大きくなりました。 胃もたれしそうな作品ですが、年末年始に楽しんでいただけたら幸いです。 「すき!」やブックマークありがとうございます。 励みになっております。 それでは良いお年を〜 【追記】 同じ設定、同じ出来事をヒトラーの視点から書いた『荒天の下、碑は立てり』(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21500307)も併せてお楽しみいただけると嬉しいです。19,200文字pixiv小説作品- 浮かべる月の、その影に
寂滅の月
第三帝国で青春の友二人でオメガバースの二作目。 グストル君がちょっと下衆い。 『アドルフ・ヒトラーの青春ーー親友クビツェクの回想と証言』を読んでいると、本当にこの二人は若くて未熟なんだな……とやるせない気持ちになる場面も多いですね。4,442文字pixiv小説作品 - 青春の友二人で現代パロ
同胞に似た輩の乞い方
青春の友二人で現代パロの第四話。 『「はらから」に似た「ともがら」の乞い方』と読みます。 今回は第三者視点でのパートと、狼貴くんの視点からのパートで構成されています。 担任の先生にも名前が付きました。 某鬼斬漫画の主人公の名前が出ていますが、こういう時事ネタを入れられるのが現代パロの楽しいところだと思います。13,511文字pixiv小説作品 - 青春の友二人で現代パロ
重波に似た思いの違え方
青春の友二人で現代パロ第八話です。 途中で『動物のお医者さん』のトスカ回パロディが入っていますが、あくまでパロディなので舞台が北海道というわけではありません。 青春の友二人の現代パロを書き始めた時からやってみたいと思っていたシーンが書けてとても楽しかったです。 アドルフがグストルから離れた理由には彼我の格差やプライドの高さもあるでしょうが、同時に「迷惑をかけたくない」「相手を利用したくない」という気持ちも強かったのではないかと思います。 後年散々に人を利用していくアドルフがグストルだけは利用しなかった、というのが二人の関係がお互いにとって特別なものだったことの現れかもしれません。16,325文字pixiv小説作品 - 青春の友二人で現代パロ
虚に似た鏡の割れ方
青春の友二人で現代パロ第七話です。 名前のあるキャラがもう一人登場ですが、何だか不穏な人ですね。 【追伸】 繁忙期のため五月は更新できず、ごめんなさい。 もう少しするとまた繁忙期のため、月一の更新が限界かと思いますがお付き合いくださいませ。23,378文字pixiv小説作品 - 青春の友二人で現代パロ
乱に似た誓の交わし方
青春の友二人で現代パロ第十一話です。 次が完結編になると思います。 別シリーズのキャプションにも書きましたが、この二人の周囲に導き手となる大人がいなかったことは大きな不幸だと思います。 クビツェクの回想録を読みながら「子どもが若者に、若者が大人になるためには多くの大人の助けが必要なのに……」と何度も思ったことがこのシリーズに繋がりました。 微力ではあっても子どものために行動する大人たちを登場させているのはそのためです。15,614文字pixiv小説作品 - 浮かべる月の、その影に
赤い月は静かに昇る
第三帝国で、青春の友二人で、オメガバースの三作目です。 やっとオメガバースらしくなってきました。 このアドルフ君を書きたくてこのシリーズを始めたと言っても過言ではない……!3,826文字pixiv小説作品 荒天の下、碑は立てり
あけましておめでとうございます。 前回投稿した『晴天の下、碑に辺す』(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21305733)と同じ設定、同じ出来事をヒトラーの視点から描写した小説です。 前作で書ききれなかった、物足りないと思った部分を書いていったら2万字を超えました。 前作が「好きな具材をどんどん盛ったパフェ」なら今作は「残った具材を全部入れたパフェ」です。 月初めの息抜きにお楽しみください。20,977文字pixiv小説作品- 浮かべる月の、その影に
泣きし月夜に……
オメガバース世界の青春の友二人です。 回想録を読んでいる時に「二人には導いてくれる大人がもっと必要だったのでは……」と思ったことが、このお話の基盤になりました。 未熟な二人が未熟なりに試行錯誤を重ね、未熟ゆえに相手と自身の欠点や失敗を受け入れられなかったことが二人の悲しさかなと思います。6,389文字pixiv小説作品 - 青春の友二人で現代パロ
未知に似た声の囁き方
青春の友二人で現代パロ第六話です。 お互いの「中の人」が出張ることが増えてきましたね。 【注意】 今更ながら、狼貴(アドルフ)が人に触られるのを嫌がる設定はグストルの回想録にあった「身体的な接触を慎重に避けていた」という記述や、その他読み漁った史料から作りました。 「前世」に原因を求める描写がありますが、あくまでも創作であり、現実にいる感覚過敏の方がそうだという意図ではありません。 人との接触に限らず、特定の感覚に強い嫌悪を感じる感覚過敏の多くは原因不明であり、本人の意志や性格の問題ではありません。 また、幼少期の体験も原因とは限りません。 悩んでいる方を傷つける言動は、どうか慎んでください。 【追記】 現代パロのほうが終わりが近づいてきたので、こちらの更新を優先しておりますが、オメガバースのほうもプロットは切ってあるので必ず更新します。 ウォッチリストに登録してくださった方々、今しばらくお待ちくださいませ。13,441文字pixiv小説作品 - 浮かべる月の、その影に
月を辿らむ
第三帝国で、青春の友二人で。オメガバースの四作目。 グストル君がすごく頑張ってます。 作中に「看護師」を「看護婦」とする表現が出てきますが、時代背景を考慮した結果です。4,820文字pixiv小説作品 - 青春の友二人で現代パロ
墓穴に似た道の迷い方
青春の友二人で現代パロの第三話。 オメガバースにも現代パロにも「おばあちゃん」が登場していますが、宗教学者の釈徹宗さん曰く「おばあちゃんは無条件の受容の象徴」なので導き役として出しやすいですね。 「酷い成績表を見て母は泣きました」のエピソードは回想録から取ってますが、一体どんな成績だったのか……?12,637文字pixiv小説作品 - 浮かべる月の、その影に
崩れた月
オメガバース世界の青春の友、三か月ぶりの更新です。 やっとアドルフが目を覚まします。 二人の思い出ばかりの回想録ですが、以前も書いたように導き手や良い影響を与えてくれる大人が二人の(とりわけアドルフの)身近にいなかったことは大きな不幸だと思います。 家族にも親族にも頼れなかったことが二人を強く結び付ける要因であると同時に、悲劇の要因でもあったのでしょう。 ※妊娠や堕胎、不妊についての描写がありますが、これはあくまでも創作であり医学的な正確性を担保するものではありません。 ※望まない妊娠等でお悩みの方は、決して一人で抱え込まず「にんしんSOS」等の信頼できる公的機関に相談してください。7,549文字pixiv小説作品 - 青春の友二人で現代パロ
退方に似た傍の在り方
青春の友二人で現代パロ第十話です。 「中の人」が随分と喋っています。 ※登場人物たちのセクシュアリティについては全て創作です。 ※元になった人物とも一切関係ありません。 また、現実の人たちに向けた差別やハラスメントは絶対にやめてください。 作者は全ての差別、人権侵害に反対します。 性愛やセクシュアリティを表す言葉が今より遥かに少なく「普通」の枠が非常に狭かった時代、現代ならば名が付くことを名前も自覚も持てずに抱え続けていた人たちのことを考えながら書きました。 「若いのだから」「男性ならば」当然あるとされる感情や欲動が無かった人も、名前の無い感情を後から自覚して一生の秘密にした人もきっといたでしょう。 翻って、現代は誰もが息をしやすい社会に少しでも近づいているのか……そんなことを思わずにはいられません。 残り一~二話くらいで完結する予定です。 最後までお付き合いいただければ幸いです。14,343文字pixiv小説作品