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あらすじ

アドルフ・ヒトラーの姿をした男が突如街に現れたら?

「不謹慎なコスプレ男?」顔が似ていれば、「ものまね芸人?」

リストラされたテレビマンに発掘され、復帰の足がかりにテレビ出演させられた男は、長い沈黙の後、痛快な演説を繰り出し、視聴者の度肝を抜く。

自信に満ちた演説は、かつてのヒトラーを模した完成度の高い芸と認識され、大衆の心を掴み始める。


しかし、皆気づいていなかった。

彼が1945年からタイムスリップしてきた本物のヒトラーで、思想も70年前と全く変わっていないことを。

そして、天才扇動者である彼にとって、現代のネット社会は願ってもいない環境であることを。


概要

2012年ドイツで出版された風刺小説で、(2011年の)現代ドイツに蘇ったヒトラーが巻き起こす騒動を描いている。原題は「Er ist wieder da」で、直訳すると「彼が帰ってきた」。著者はドイツ人ジャーナリストのティムール・ヴェルメシュ。

ドイツでベストセラーとなり、2015年に映画化された。日本では2016年6月に公開。興業収入は約二億円。


作中のヒトラーはただの悪人でなく、高い知能と強い責任感を備えた人気者として描かれている。逆に現代の政治家やマスコミはナチス以下といわんばかりに惰弱な描写が多く、ヒトラーに次々論破される様はさながらピカレスクロマンである。

なぜヒトラーをかくも魅力的に描いたかについて、著者は「ヒトラーをただの悪魔に描いても問題を矮小化するだけだ。彼が魅力的だったからこそ、ドイツ国民がホロコーストに賛同したのだ」と痛烈に指摘している。

しかし、そのために原作小説をストレートにヒトラー礼賛物として読む者が続出し(出版当初の読者レビューで顕著)、ユダヤ人団体が「本作は風刺作品である」と解説を行う事態となった。


映画版では、いくつかの設定が改変されている(ザヴァツキが「コメディアンとしてのヒトラー」の人気にあやかろうとしているだけの落ちこぼれのテレビ番組制作者で、演説内容に特に共感するところはないなど)。また「帰ってきたヒトラーはヒトラー礼賛もの」という前述の誤読を防ぐためか、ヒトラーの性格がやや粗暴になり、周囲の人間から好かれる描写も減っている。

ヒトラーがドイツ各地を巡る場面では、ヒトラーに扮装させた役者をヒトラー本人として行動させ町の人々と接触させるという手法で撮られており、このパートにおけるドイツ市民の反応は演技ではなく素である(後日、映画で使用する旨の許諾を一人ずつ得ているとのこと)。ヒトラーの語るナチズムの論理に納得してしまっている市民もおり、ドイツ社会の複雑な様相がうかがい知れる。

またそれ以外の場面でも、監督が一方の役者や観衆に状況を伏せたまま撮影したシーンもあり、リアルな反応を映画に取り入れている。


登場人物

アドルフ・ヒトラー

ドイツ第三帝国総統。70年以上の未来に飛ばされたにもかかわらず、その優れた頭脳で的確に状況を把握し、連合国によって分断されたドイツを統一し、誇りを取り戻すべく再び活動するが、周りから理解されることは少ない。

作中の彼は自分の価値観を隠そうともせず、思ったことを率直に言っていることがほとんどなのだが、本物のヒトラーがタイムスリップしているというありえなさと理性的で魅力のあるふるまいをするために、ヒトラーになり切っているコメディアンであると誤解されてしまう。

因みに自殺する前後の事はよく覚えていないが、自殺に使った銃の事を思い出すと頭痛を感じる。

映画版では論破されて激高したり、犬を射殺したりと、やや小器になった。しかしそれでもめげずに自伝を執筆し、その売り上げを動物愛護団体に寄付して反省している姿勢を見せ、紳士的な人物であると民衆に思わせて人気を取り戻すなどのしたたかさも併せ持つ。

ちなみに吹き替えはかつてある作品総統代行と呼ばれていた人を演じた飛田展男である。


ベリーニ

テレビ番組制作会社・フラッシュライト社(映画版ではmytv社、以下略)の女副社長。社長より能力があるらしい。ヒトラーからはレニ・リーフェンシュタール並だとその芸術的才覚を高く評価されている。

念のためにヒトラーの経歴を調査したが、なにひとつとしてわからなかったことからヒトラーがタイムスリップしてきた本物ではないかと薄々感づいている。が、同時に常識的に考えてありえないとの認識が強すぎて信じれずにいる。

映画版ではヒトラーをコメディアンに採用したのが会社の総意というより、ベリーニが一部の会社幹部の不満を抑えて採用したような描写になっており、不満を溜め込んでる幹部から「ゲッベルス閣下」と呼ばれるシーンがある。


ゼンゼンブリンク

テレビ番組制作会社・フラッシュライト社の社員。

知り合いのキオスクの主人に紹介されたヒトラーに、コメディアンとしての才覚を見出してスカウトするが、ヒトラーからは「小心な中間管理職」という評価をされる。

映画版では出世欲と反ナチ思想のためにヒトラー人気を失墜させようと暗躍するキャラになっており、ヒトラーをスカウトする役目はザヴァツキに変更されている。が、最終的に会社の利益のためにヒトラーを全面的に押し出していくようになる。

終盤の総統閣下シリーズは必見。


ザヴァツキ

ヒトラーの演説に感激したフラッシュライト社の社員。

立ち位置的にはルドルフ・ヘスヨーゼフ・ゲッベルスを足して二を割った感じの立ち位置。クレマイヤーに片思いしている。じょじょに熱烈なヒトラーシンパと化していき、ヒトラーからも能力や行動力も含めて高く評価されている。終盤でヒトラーに政界進出を提案したのも彼である。

映画版では前述の通りただの落ちこぼれ社員であり、ヒトラーの人気にあやかろうとしているだけで思想的には彼と相容れない。当然、ヘスやゲッベルスのような役割を担うわけでもなく、共通点と言えばクレマイヤーとの恋愛関係ぐらいである。


クレマイヤー

ヒトラーに付けられた専属の女秘書。ヒトラーにインターネッツの素晴らしさを教えた。

タブーを恐れずにコメディアンとしておのれの道を突き進むヒトラーのことを尊敬し、仕事にやりがいを感じている。

ヒトラーからは自分の秘書だったトラウデル・ユンゲと姿を重ねて見られている。

終盤にてユダヤ人の祖母からホロコーストの事実を聞かされ、衝撃を受けてヒトラーを問い詰めるが、過去の悲劇を克服することはドイツの未来のためにやらねばならないことなのだと説得され、これまでなにも変わらずヒトラーに従い続けることを誓ってしまう。

(ただしヒトラーとしては彼女を騙したつもりは一切なく、彼のいう過去の悲劇とは連合国にドイツが敗けた為にナチスの事業の薄暗い面ばかり喧伝されていることを指して言っている)


ホルガー・アプフェル

実在の人物で、「ナチスの後継者」を自称するドイツ国家民主党の党首。

ヒトラーが国家民主党に突撃取材しにいくわけだが、民族主義に殉じて倒れた同胞達に対して不誠実極まる態度にヒトラーがブチ切れ、ろくな反論ができぬまま圧倒され、マスコミの前で「ドイツの若者はこんな党に関わるべきではない」とまでヒトラーに言われてしまう。

この国家民主党へのヒトラー突撃取材番組により、フラッシュライト社はグリメ賞(日本でいうギャラクシー賞的なもの)を授与された。

映画版ではアプフェル(林檎)をもじったビルネ(梨)という人物に変更された。


レナーテ・キュナスト

実在の人物で、緑の党の元党首でヒトラー主演番組のゲストとして登場。

同じエコロジー政策を推進していたという理由でナチ党との連立をヒトラーから提案されて困惑し、エコロジー政策を推進した政治信念がまったく違うだろうと断ったが、理由がどうあろうが政権を取れないことには政策を実行できないのだから、実行したい政策が一致しているなら我が党と連立して政権をとるべきではないだろうかと反論されて閉口する。


キオスクの主人

タイムスリップしてきたヒトラーを雇い、生活の面倒をみていたキオスクの主人。

基本的な常識を教えたりしていたが、時折噛み合わないことがあっても、完成度の高いヒトラーの演技だと感心している。

政治的にリベラルな色が強いことをヒトラーは問題視していたが、生粋のドイツ人魂の持ち主と評価されており、将来自分の同志となりうる可能性の高い人物であるとも認識していた。

過激発言を繰り返すヒトラーと仲良くしていたことをビルト誌から攻撃されるが、それを逆に自分は新聞に登場していることを宣伝して自慢し、自店の売上を伸ばしに行くしたたかさを持っている。これには自分へのバッシングに巻き込んでしまったことを謝罪しようとしていたヒトラーも困惑を隠せなかった。


ビルト誌

実在するドイツ最大のゴシップ誌。

創業以来の親ユダヤ誌であることからヒトラーを猛攻撃するが、そのやり口はデマを使った低俗なもので要領を得ず、ヒトラーとザヴァツキの反撃に完敗。手打ちのためにヒトラーの提灯記事を書くハメになった。

原作出版直後のEUではこのくだりがマスゴミ批判として人気を博し、レビューに安易なヒトラー礼賛コメントを書く読者が続出。映画版では一連のやりとりが完全に削除されている。


関連動画

映画版トレーラー


外部リンク


関連タグ

映画 小説 ヒトラー ナチス


ヒトラー~最期の12日間~:2004年公開のヒトラーの末期を描いた映画、日本国内外でMAD動画の総統閣下シリーズでも知られ、『帰ってきたヒトラー』でも映像が引用されたほか、後半でそのまんまのパロディシーンが描かれている(公式が病気)。ただし、やるのはヒトラー以外のある人物。


同様の歴史上の有名人本人が現代に現れたとの設定の作品

映画「帰ってきたスターリン」

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