アダム・マルコビッチ
あだむまるこびっち
「異論は無いな?レディー」
サムス・アランの軍人時代の上官。
親、あるいはそれ同然の存在を二度も失ったサムスが銀河連邦軍所属時代に父のように慕った人物。
当時ミッションブリーフィングの最後に「異論は無いな?レディー」(「コドモ向け」モードでは『わかったな、レディー』、英語では『Any objections, Lady?(直訳すると「何か異論は、レディ?」)』)と、女子供扱いを忌避していたかつての彼女の神経を逆撫でするようなセリフを決まり文句としていたが、これは彼なりの気遣いから出たジョーク。
彼の思いを理解できなかったサムスは決まってその言葉にサムズダウンで返答していた(本来はサムズアップで以てミッション内容への合意を示すものなのだが、レディー扱いが不満だったサムスは『異論なし(=ミッションへの合意)』と『レディー断固拒否』を示すために敢えてただ一人サムズダウンを貫いていた。後に当人は当時を「幼過ぎた」と回想している)。
『メトロイドフュージョン』において銀河連邦からサムスに付けられたナビゲートAIの言動が彼に似ていたため、サムスがそのAIをアダムと呼び始めたのが初出。アダム本人はすでにフュージョン時点で故人のため、本人の初登場はマガジンZのコミカライズとなる。
後に『METROID Other M』においてついにゲームに登場し、同時にプレイヤーは彼の最期を見届けることになる。
メトロイドフュージョン
上記の通り連邦軍から貸与された宇宙船にインストールされているAIをサムスが皮肉を込めて心中でアダムと呼び始めた。本来は識別名を持たない。
Xのはびこる地獄と化したBIOLOGIC宇宙生物研究所【B.S.L.】においてサムスをナビゲートする。当初は普通にサムスをサポートしていたが、話が進んでくると途端に慎重になる。それを訝しむサムスだったが…。
サムスは【B.S.L.】の最深部にてメトロイドを培養するシークレットラボを発見する。
ラボを探索するサムスだったが、最深部に足を踏み入れた瞬間爆発音が響く。
現場に引き返したサムスの目の前ではSA-Xがメトロイドのカプセルに攻撃を仕掛けており、逃げ出したメトロイドがSA-Xを襲っていた。
メトロイドの脱走とSA-Xの破壊行為により、シークレットラボは【B.S.L.】から切り離され自爆。サムスは命からがら脱出する。
その後、AIはSA-Xが先刻シークレットラボにいた以外に少なくとも10体【B.S.L.】を徘徊していること、そのSA-Xを捕獲し軍事利用する計画が連邦軍で持ち上がっていることを明かす。
無論、逆に殲滅され連邦軍のコピーが何食わぬ顔で銀河連邦に戻り阿鼻叫喚を生み出すことは火を見るよりも明らかであった。
あまりに愚かしい計画を開示し、協力が得られないだろうサムスをナビゲーションブースに閉じ込めておく予定だと語るAIにサムスは激昂。
「連邦軍は絶対に立ち入らせてはならない!それを許せばどうなるか…わかるだろう!?アダム!」
これまで密かにそう呼んでいた彼を直接アダムと呼び、「アダムであれば即座に【B.S.L.】を自爆させよ」と命ずるはずだと語る。行くべき者が行き、残るべき者が残る。あの日彼がそうしたように。
だが、アダムはこう返す。
「おろかな考えだ」
「ここを爆破しようとも、SR388にいる無数のXはそのまま残る、つまりなんの解決にもならず…」
「今回の連邦軍の計画にとって邪魔なサムス・アランという勇敢な戦士が、この宇宙から消え去るだけだ」
論破され黙り込むサムス、しかし彼は思わぬ一言を続ける。
「…このステーションをSR388に衝突させれば、Xの根絶は可能だろう」
「今すぐ推進エンジンを起動し、SR388へと向かえば、連邦軍は追いつけまい」
「サムス、最終ミッションだ。君は今からコントロールブリッジに向かい、目的地を惑星SR388にセットせよ」
「そして激突までの間にシップへと戻り、脱出するのだ。速やかに行動し、必ず生還せよ。これは命令だ!」
「異論は無いな?レディー」
アダム・マルコビッチの頭脳は、その豊富な経験と的確な判断力を買われ、本人の死後もAIとなり任務を続けていたのだ。
そしてサムスはミッションを完遂しステーションを離脱。SR388は【B.S.L.】もろとも宇宙から消え去った。
彼は再び、サムスと共に銀河の危機を救ったのである。
なお、レベル4のロックを解錠したあと、スピードブースターを使用してのシーケンスブレイクでナビゲーションブースに戻ってくると、そのことに驚くという小ネタがある。更には、サムスを褒め称える何者かが連邦軍の計画を話そうとするのを遮り、本来の攻略ルートに戻るように言い聞かせる。
METROID Other M
銀河連邦軍第07小隊の指揮官として登場。
生物兵器の類には「生命の身勝手な利用」「生物は生まれた時点で完成されたもの」と徹底して否定の姿勢をとっている(そのため、惑星SR388からベビーメトロイドを持ち帰ったことに思うことがあったのではないかとサムスは独白している)。
本作でイアンという弟がいたこと、彼が過去に起きた宇宙旅客機救出ミッションにて殉職してしまったことが判明。この時のアダムの対応に納得できなかったことが、サムスが連邦軍を離れフリーの賞金稼ぎになったきっかけであることも明かされた(少しでも躊躇していれば乗客のみならずサムス達も危険だった状況であり、サムスも現在は「あの場で一番辛かったのはアダムだった」、「私が幼すぎた」と評している)。
スペースコロニー【ボトルシップ】の調査に部下を率いて訪れた所でサムスと出会うが、再開を喜ぶような顔は見せず淡々と来訪の経緯を問い質した。
経緯を釈明した彼女に逆にボトルシップへやって来た理由を問われるもあくまで部外者である彼女に情報を明かすようなこともしなかったが、突如として現れたクリーチャーとの戦闘では咄嗟にサムスに指揮を飛ばし連携して撃退。
戦闘後サムスの進言を受け入れ『我々のミッションに協力して貰わねばならないようだ』と告げるが、サムスの火力は過剰であるとして『全ての行動は、私の指示に従ってもらう。武器の使用も制限する』と付け加えた。
このため本作ではサムスの各種装備はアダムから許可が出るまで使用制限がかかる。
バリアスーツの解放判断が遅すぎて「生命維持の機能ぐらいは最初から普通に使わせてくれよ」と突っ込んだプレイヤーも多いことだろう。
加えてパワーボムは絶対に解禁しないと明言される(理由は破壊力が高すぎて起爆すれば周囲の生存者や仲間が一瞬にして蒸発してしまうため)が、これが最終盤のとあるシーンでの初見殺しに繋がっている(アダムがいない時に解放される他の装備とも違って使用の解禁が一切アナウンスされないため「使えない」という先入観から存在を忘れているプレイヤーも少なくなかったとか)。
コロニー全域に通信障害が発生した状況の中でサムスのみ問題なく通信が可能だったため彼女を指揮しナビゲートしていくが、探索中のサムスがあるものと接敵したのと前後して連絡が途絶えてしまう。
この時彼は部隊内に潜んでいた始末屋である「デリーター」から襲撃を受けていたが、返り討ちにした模様。
しかし襲撃の結果アダム側の送信機器が破損し、サムス側の映像と音声を受信するしかできず応答が不可能になっていた。
行方を晦ましてからしばらくした後、セクター0と呼ばれる秘匿エリアでサムスを背後からフリーズガンで銃撃する形で再登場。
眼前に現れたメトロイドの幼体に完全に気をとられていたサムスは不意打ちに激しく動揺し、パワードスーツの維持ができず行動不能になった。
セクター0への侵入前に【メトロイド軍事化計画】のレポート作成者という経歴が明かされたためサムスからは疑念を抱かれていたが、肝心のレポートの内容は「メトロイドの外見、特性、特徴、攻撃手段、繁殖方法、進化方法などを書き連ねて重大な危険性について解き『計画を行うべきではない』と結論付けたもの」であった。
が、これがメトロイドの軍事利用を画策していた連邦軍の一派に余計なヒントを与えてしまい、セクター0で繁殖していたメトロイドは「低温環境に弱い」という弱点を遺伝子操作で克服されてしまっていた。
(先程のメトロイドが凍結したのは小さな個体であったからと推測している)
凍結しなくなったメトロイド相手にサムスの勝ち目は限りなく薄い。
そう判断したアダムはセクター0突入前にサムスを止めようと追いかけてきたのだった。
そんな時、ボトルシップの推進装置が稼働を始める。
メトロイドたちを統率する人工知能『MB』による銀河連邦への襲撃開始の狼煙であった。
最早一刻の猶予もないと判断したアダムは、行動不能になったサムスに『生存者の保護』『コロニーの推進装置停止』『リドリーの討伐』を命じ、『マデリーン・バーグマンは味方ではない』と忠告。自身は『自爆装置を起動し人工知能『MB』と強化されたメトロイド諸共セクター0を爆破する』ために単身乗り込もうとする。
自身を犠牲にする選択を選ぶアダムを前に、サムスは感情を露わに声を荒らげる。
『私がメトロイドを倒す可能性に賭けるべきだ』『私が信じられないのか!?』と。
二人が袂を分かったあの日、イアンが殉職したあの時と全く同じ構図。
……だがアダムの返答はあの時とは違っていた。
『私はリドリーと戦えない。君のように、銀河を守れはしない。ただの人間だ』
『………だが、君を守れる』
多くを語らず冷徹に振る舞ったあの時とは違い、優しく諭すように語り掛けるアダム。
手荒な真似をして行動不能にしたことを詫びるとセクター0へ一人で足を踏み入れ、隔壁をロックしてしまう。
泣きながら隔壁を叩き、行かないでくれと叫ぶサムスを振り返った彼は最後の言葉を告げた。
『異論はないな …レディ(No objections. Right, lady?)』
行くべきモノが行き、残るべき者が残る。
今行くべきは、アダムだった。
最後まで自身にサムズダウンを返したサムスを見て安心したのか、果たすべき任務へ挑むアダム。サムスの目に写ったのは、父としての彼の背中だった。
かくしてセクター0はボトルシップからパージされ自爆。
凍結しなくなったメトロイドという悪夢の兵器は、一人の偉大な戦士の命と引き換えにこの宇宙から消えたのだった。
メトロイドドレッド
時系列では『メトロイド フュージョン』の後である本作でも、引き続きサムスのサポートAIとして登場。
元は連邦軍からの貸与品扱いだったはずだが、【B.S.L.】の事件後そのまま貰っていったのかは不明(『メトロイド フュージョン』で連邦軍がやらかした事を考えれば、騙した慰謝料代わりとして持っていったとも考えられる)。
舞台となる惑星ZDRが未探の惑星である事と妨害電波の影響で逐次サポートすることはできず、『フュージョン』のように惑星内部のアクセスステーションにて現在の探索状況を話し合うという形で接触することになる。
なお冒頭で、今回の報酬が依頼内容に対して少なく不釣り合いと愚痴るがサムスに無視されるという、従来作の堅物な性格を考えると非常に俗っぽい意外なやり取りを見ることができる(もっとも、サムスの仕事内容を考えれば何かと費用が掛かりそうであり、それに反して報酬に無頓着となれば元上官かつ親代わりとして愚痴りたくもなりそうではある)。
- 小山力也:『METROID Other M』日本語版音声
- Dave Elvin:『METROID Other M』海外版音声
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託されし者
メ ト ロ イ ド プ ラ イ ム 4 ビ ヨ ン ド 2 0 2 5 年 発 売 予 定 ! ! メトロイドシリーズ二次創作小説、第三弾です。 マガジンZ版から始まりゼロミッションを経て最新作ドレッドまで、サムスの半生と共に長い歴史を持つメトロイドシリーズ。 今回はサムス視点でそれらを俯瞰したお話になります。 例によってシリーズ間の繋がりを補完するための大小様々な独自解釈があります。ご了承くださいませ。 パイレーツの跋扈、惑星ゼーベスの陥落とマザーブレインの暴走、様々な形で利用されるメトロイド、寄生生命体Xの脅威、そしてマオキンの野望。 その全てを、受け継いだ意志と力で打ち倒してきた宇宙戦士サムス・アランの物語。 お楽しみいただければ幸いです。29,333文字pixiv小説作品