アドアストラペルアスペラ
あどあすとらぺるあすとら
ある日、地球の日常は終わった。
宇宙の中央よりやってきた「帝国」による突然の侵攻と侵略。地球人類は圧倒的な科学力および武力の差によってアッサリと敗北し、その支配を受け入れざるをえなくなる。そして、地球は………。
旧時代からは考えられない、かつてないほどの地球人類には決して築く事などできない、超!平和!を謳歌する事となった!
しかし、その平和と引き換えに人類に課されたのは永遠の停滞であった。
こ◯亀も麦わら帽子の海賊も七龍玉も、じっちゃんの名に懸けた名探偵も、永遠に終わらない世界。当然小さくなった名探偵だって大きくなれず幼馴染とは永遠に両思いにはなれない。むしろ黒の組織と永遠に戦い続ける。貧乏執事は先生と生徒会長を筆頭とする面々におちょくられながらお嬢さまに永遠に借金を返し続けなくてはいけない。
そんな世界がもたらされてしまった。
で、そんな地球に生きる葉月忍は幼い頃、何らかの事故によって実の両親を喪い、両親が残したロボットを母として育った、超素直な少年であった。
しかし、その育ちと素直さが災いし、通う学校では異端者としていじめに遭う日々。
それでも学校から離れれば友人のシャトーちゃんと仲良く過ごしていた。しかし、このシャトーちゃんは帝国の支配に不満をブチ撒ける反抗期真っ盛りの中二病患者であった。それでも自分と仲良くしてくれるシャトーちゃんとの触れ合いは忍にとっては数少ない「人間とのふれあい」、人間らしくあれる時間だった。
しかし、そんな忍の日常は以外な形で崩れ去る。
忍はふとしたきっかけで帝国のロボット兵器を見つけてしまったのだ。
拾ってしまったものだから役所に届けようと言う忍に対してシャトーちゃんは、このロボットさえあれば帝国に対抗できると有頂天になり、稼働させてしまう。
帝国の兵器を地球人が勝手に動かすことは、その理由の如何に関わらず、その条項の既知の如何にか関わらず、帝国への反逆行為と見なし捕えそれが胎児や赤子であっても死刑に処す―――
この事実にシャトーちゃんは青くなり、兵器から脱出。迷わず忍を帝国に売った。
濡れ衣を着せられた忍は困惑し、なんとか説明をと試みるが、その度に操作ミスを起こしてロボットを動かしてしまい、あげく帝国兵たちの先入観による情報操作によって、あれよあれよという間に何万回もの転生と死刑を受けてなお赦されぬ凶悪指名手配犯に仕立て上げられてしまう。
途方にくれる忍だったが、その彼の前にひとつの映像データが示される。それはシャトーちゃんが忍を裏切った一部始終が記録されていた動画だった。
この真実を公表すれば、あの裏切り者の命と引き換えに、お前は助かる。
ロボットから示された、この誘惑にしかして忍は「たとえ裏切られても友達は友達だ!」として、自らデータを消去してしまう。
その忍の反応を面白がり、ロボットの隠し部屋から一人の少女が飛び出す。パティと名乗ったその少女こそは、このロボット兵器ヴェルサイユの本当のマスターであった。
そしてパティは語る。
「お前の死刑を取り下げられるのは、帝国のトップである皇帝以外にはいない。帝国の指名手配と包囲をかいくぐり、皇帝に謁見して誤解を解くことができれば、あるいは……」
それは万難の道。それは数多の困難の果て。
決して到達不可能な夢物語より、なおタチの悪い幻影。
しかし忍は、その困難に立ち向かう道を選ぶ。
少年は今こそ信念を貫くため「万難を廃し、栄光をつかむ(アド アストラ ペル アスペラ)」旅へと飛び立つ―――!