概要
白亜紀後期の南半球で栄えた肉食恐竜のグループ。時代は新しいが系統は原始的で、大きなくくりではケラトサウルスの仲間になる。
いくつか完全な標本があり、それらは高度に短縮した前肢と、短く丈の高い奇妙な頭骨の形態で特徴づけられる。しかし、白亜紀後期より前の時代(前期以前)からは保存の良い頭骨が見つかっていないため、いかに派生したかは不明であった。
癒合した頭蓋はごつごつした粗面で装飾されており、マジュンガサウルスやカルノタウルスのように頭頂骨が角やドーム状に発達しているものもいる。
また高度に可動性の下顎内関節をもつ。
カルカロドントサウルス科やその近縁グループ(アロサウルス上科)が台頭する時代においては南半球の頂点捕食者としては長い間、二番手に甘んじていたが白亜紀後期序盤を過ぎた頃にカルカロドントサウルス科が何らかの環境変化で姿を消すと、その地位を引き継ぎ、名実共に南半球の覇者となった。同じく、カルカロドントサウルス科の後継になったと思われるメガラプトル科とは形態が完全に真逆(メガラプトル科は頭部が細く、前肢が巨大)であり、両者が生息する南米等の地域では、恐らくは獲物が異なる事で喰い分けの形で併存する「二頭制」だったと思われる。アベリサウルス科は同じように「前肢が小さく頭部が太く巨大という特徴」があるティラノサウルスのように顎を主に使って獲物を狩ったと思われ、ティラノサウルスがそうであるように大物狙いだったとも推測される。
アフリカ大陸、マダガスカル島、インド亜大陸、南米大陸と当時の南半球にあたる広範な地域(旧ゴンドワナ大陸)から、その化石は発見されている。一部の種はアフリカの北にある欧州(当時は大半が浅い海に覆われた多島海だった)にまで分布を広げていたようだ。一方で同じ旧ゴンドワナ大陸ながら南極大陸やそこと連結していたオーストラリア大陸ではアベリサウルス科の化石の発見が乏しい。これらの大陸及び南極半島を介して南極・オーストラリアと繋がっていた南米南部ではメガラプトル科の方が目立っていた傾向が見受けられる。単に良好な化石がまだ発見されていないだけかもしれないが、あるいは寒冷な気候等の苦手な環境があり、そのせいで、一部地域ではメガラプトル科の台頭を許していたのかもしれない(逆にマダガスカル、インド、アフリカのようにもっぱらアベリサウルス科の化石が発見されており、メガラプトル科の化石が見つかっていない地域も多い)。いずれにせよ、アベリサウルス科は比較的最近になって研究が始まったばかりのグループであり(科がもうけられたのは1985年)更なる発見と研究が待たれる。
アベリサウルス科一覧
- エオアベリサウルス
- アベリサウルス
- カルノタウルス
- マジュンガサウルス
- スコルピオヴェナトル
- アウカサウルス
- ルゴプス
- インドスクス
- ラジャサウルス
- タラスコサウルス
- アルコヴェナトル
- インドサウルス
- クリプトプス
- ピクノネモサウルス
- エクリクシナトサウルス