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インドネシア・エアアジア8501便墜落事故

いろいろぼなん

インドネシア・エアアジア8501便墜落事故とは2014年にジャワ海にエアバスA320が墜落した事故である。操縦士だけでなくそれを取り巻く人々にも色々ツッコまざるを得ないカオスな原因で視聴者たちを呆れさせた。
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大まかな概要編集

発生日時2014年12月28日
発生場所インドネシア、ジャワ海上空
機材エアバスA320-216
乗員7名(うちパイロット2名)
乗客155名
犠牲者162名(すなわち全滅)

突然の消失編集

インドネシアのスラバヤにあるジュアンダ国際空港を飛び立ちシンガポールチャンギ国際空港に向かったインドネシア・エアアジア8501便(QZ8501/AWQ8501)は、進路上にある悪天候を避けるために飛行コースの変更と高度上昇のリクエストを管制に行う。それに対し管制は進路変更は認めるが高度に関してはしばらく先にせよという指示を返すが、8501便は何故か反応を返してこない。しばらくすると同便の高度が急激に上昇してゆき、後発の便に抜かれるほどに速度を失ってゆく。


そして唖然とする管制官の目の前で失速しすぎて揚力を失った同便はレーダーから消失。同日のインドネシア時間の6時55分にエアアジアは8501便が行方不明になったことを発表する。


その日漁に出た地元漁師は海に浮かんでいた残骸を発見するが、当の本人は墜落した飛行機とは露にも思わず翌日まで仕事をして帰宅。すると「ジャワ海で8501便が行方不明になった」というニュースが報道されており、気になった彼は警察を通して当局に通報。次の日の12月30日に彼の証言をもとに捜索してみたところ、機体の残骸や遺体が発見された。


ツッコミどころ満載の状況編集

海上に墜落したことで衝撃により機体は粉々になって大半が海底に沈んだ上、この時期のジャワ海は時化ていたため、NTSC主体の調査は難航した。


まずは、残骸が集まる前に管制塔のデータをもとに飛行経路と天気図を照らし合わせたが、8501便は悪天候の空域には入っていなかったことが判明。取り敢えず拾い集めた残骸に焦げた跡や衝撃で膨らんだ形跡はなかったので、爆弾テロの可能性は除外された。更には破片の散乱範囲が比較的狭かったことから空中分解の線も消える。


なんとか送信信号の期限までに回収できたブラックボックスCVRやFDR)を真水に漬けて塩分を洗い流し、データの取り出しも成功。調査班はCVRから手を付けてコックピットでの出来事に触れ始める。


そして8501便は些か厄介なトラブルに見舞われていたことが判明した。


離陸直後からECAMが度々警報を鳴らし、それを手順に従って警報を解除しては再び鳴らされるというゲンナリするような行動を強いられていた。この手続きに手間取り手順の合間に航路変更のリクエストは出来たものの、それに対する復唱がECAM警報に気を取られて出来ていなかったことが分かる。


そして何度目かのECAM警報が鳴るが……


機長「いや、いい方法がある


機長が何を思ったのか手順とは異なる何らかの行動を実行。それにより、今度はオートパイロットがまるごと解除された。これにより機体が失速したという警報が鳴り、それに対してパイロットは失速防止システムが働かないため手動で何とかしようとするが、混乱して有効な手立てを見出せず落下していった。


FDRのデータの取り出しにてこずったために、一旦機体の整備記録に目を通したところ、警報の原因が判明。事故機はRTLU(Rudder Travel Limiter Unitの略、方向舵リミッターユニット)の故障を抱えており、一年近く23回(そのうち11回は事故の2~3か月前から)も不具合を起こしていたのである。それに対しインドネシア・エアアジアは小手先で警報をリセットして処理するだけで根本的な検査はしていなかった。


そしてデータを見てみたところ、破綻した4回目ではコンピューターの電源が丸ごと切れて方向舵が2度左に向き、それに伴い機体が50度以上も左に傾いたのにそれに対応し始めるのに9秒もかかってしまったことが記録されていた。その後副操縦士は操縦桿を右に左に激しく傾けながら引いてしまいピッチ角が45度になり、その後失速していったようだ。


……しかし一体何をやったらこのような不可解な現象が起こるのだろうか……?


迷走の原因編集

そうやって調査官が事故の状況に首を傾げていると、一通の電話が飛び込んできた。電話の主はどうやらエアアジアの整備士の一人の模様。事故で気をもんでいた彼は数日前の経緯を説明した。


12月25日、警報の頻発に頭を悩ませていた8501便と同じ機長が地上の空港で事故機を待機させているさなかにその整備士に対応を依頼していた。整備士はまず手順通りにECAMの警報解除を行うが、再び起動しても警報は鳴り止まなかった。するとその整備士は……


整備士「いい手がある


……と言いながらメインコンピューターの回路そのものを遮断。これにより警報を黙らせた。すると機長は何を思ったのか


機長「また鳴ったら、同じようにやればいい?」

整備士「……まぁ……ECAMに従うことですね」


この手順で対応すればいいのか問いかけてきたのだが、まさか飛行中にこの操作をやるとは思いもしなかった整備士は素直にECAMの普通の手順で対応することを勧めたそうだ。


だが、8501便で短時間で警報が頻発したのにキレたのか、どうやら機長はこの時に整備士に止められていた手順をやらかしてしまったらしい。


試しに調査官がシミュレーターで同じように「機長が操縦席を離れてメインコンピューターの回路を弄り遮断する」という手順をやったところ、やはりフライトレコーダーと同じように、自動操縦やオートスロットルといった機体を制御するシステムそのものが切れてしまっていた。


更にはそれで数秒間機体が大きく傾いたが、副操縦士は姿勢指示器を見ていなかったのか傾きに気づかない。機長がようやく戻って慌ててそれを指摘し副操縦士に姿勢を戻すよう指示したが、数秒間も斜めに傾いていたため内耳のバランスが偏り平衡感覚が狂っていた副操縦士は空間識失調を起こしていた。傾いたと誤認して混乱していた副操縦士は機体が降下していると勘違いし、再び操縦桿を激しく動かしながら引いて機体を傾けてしまい、その結果飛行機はバランスを崩す。


それに対する機長の対応も効果はなかった。機長は機首下げを行うべく「引き下げろ!(Pull down!)」と絶叫したが、この時に引く(Pull)と押す(Push)を言い間違えた(※)ことで完全に矛盾した指示になってしまい、副操縦士はますます混乱して操縦桿を手前に引き続けた。更には機長がこのままじゃ埒が明かないと操縦を交代しようとしたが、操縦桿のボタンを押す時間が足りなかったため操縦桿の権限を握り切れておらず、機長と副操縦士の同時操縦で舵の操作が相殺されてしまい、失速して墜落。せめて「私が操縦する!」と指示して混乱している副操縦士を操縦から一旦外すべきであった。


(※)航空機は「操縦桿を引く」ことで「機首が上がる」ため、機首上げ操作を指示する場合は「引き上げろ(Pull up)」と言う。反対に「操縦桿を押す」ことで「機首が下がる」ため、機首下げ操作を指示する場合は「押し下げろ(Push down)」と言う。機長が伝えたかったのは「(機体を)引き下げる」というものだったが、この言い間違いによって副操縦士は「(操縦桿を)引き下げる」という指示だと誤認してしまった。


そうして8501便の調査が大詰めを迎えたころ、エアバスに送ったRTLUの検査結果が届いた。なんと電子基板のはんだに亀裂が入っており、回路がつながったり切れたりしていたのである。ソフトの問題ではなくハードそのものが壊れているという可能性に頭がいかなかった整備班にも問題があり、生兵法の対処法で事態を悪化させ大惨事を引き起こしてしまっていたのだった。調査官にも「寧ろ外してしまった方がよかったぐらいです」とツッコまれている。


関連タグ編集

エールフランス447便墜落事故:副操縦士が混乱して機首を上げようと操縦桿を引きすぎた結果、操縦桿の効果が相殺され、失速して墜落した数年前の航空事故。状況があまりに似ていたことから同様の原因が疑われただけでなく、8501便では機長も副操縦士もやらかしたためメーデー民からダブルボナンとか言われてしまっている。


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