エカチェリーナ2世
えかちぇりーなにせい
ロシアの女帝。ピョートル1世と並び大帝(ヴェリーカヤ)と称される。数多くの愛人を抱えたことでも有名。
ドイツのアンハルト・ツェルプスト公の娘であり、ロシア人としての血は全くひいてない。出生時の名はゾフィー・アウグステ・フリーデリケ。ロシア正教に改宗した際にエカチェリーナ・アレクセーエヴナに改名。
ピョートル大帝の娘であるエリザヴェータ女帝の推薦で、女帝の姉の子(女帝の甥、ピョートル大帝の孫)であるピョートル3世に嫁した(エカチェリーナの母方の伯父カール・アウグストがエリザヴェータ女帝の若い頃に死別した婚約者だった事が推薦の大きな理由とされる)。息子のパーヴェル1世をもうけるも、性格の合わない夫との仲は最悪であった(そのためパーヴェル1世も実は愛人のロシア人貴族との子ではないかという風聞まであるが、公的には夫ピョートル3世の子とされている。近年の遺伝解析ではパーヴェル1世の三男のニコライ1世の遺伝子調査の結果、ロシア人にほとんどいないY染色体の持ち主であることが確実視されおり、父系祖先がロシア人でない確率が高いため、やはりピョートル3世の実子だった可能性は強まっている。ピョートル3世の父親カール・フリードリヒはドイツ人貴族だったため、この調査に合致する)
1762年、ピョートル3世の即位の半年後に近衛連隊のクーデタで夫を廃位・殺害して即位した。夫のピョートル3世もエカチェリーナ同様にドイツ生まれドイツ育ちであったが、彼はロシアの慣習を嫌って、ドイツを懐かしむ人物で、即位すると亡き叔母のエリザヴェータ女帝によって勝利しかけていたドイツ・プロイセン王国との戦争(七年戦争)を早々に中断し、プロイセン優位の講和を結んでしまった。そのためピョートル3世は軍はじめ国内の猛反発を招き、これが政治的致命傷となった。一方でエカチェリーナはロシアの慣習に積極的に馴染もうとしたため、人望を得ていた(これだけではピョートル3世が何ら情状酌量の余地がないようだが、一応、彼にもそうなる背景はあった。両親を早くに亡くした彼は教育係のドイツ軍人ブリュンマーから「良きドイツ軍人」になる事を叩きこまれる虐待に近い教育を受けて育ったため、ロシア皇帝となっても、まさにそう振舞ってしまったのである。エカチェリーナと不仲となるほどの性格の不一致も、この歪んだ教育によって人格形成に問題があった事が大きいとされる)。
30年以上にわたる治世の前半期は啓蒙専制君主としての姿勢を取っていたが、1773年に起きた大規模な国内反乱であるプガチョフの乱以降は反動化。約2年かけて反乱を鎮圧後、農奴制を極限にまで強化した。晩年になってフランス革命が起きた事は反動化を更に強めることになった。
ピョートル大帝に続き、ロシアの領土拡張に務め、オスマン帝国と2度に渡り戦い、クリミアを併合(露土戦争)。またポーランド分割にも加わり、更に領土を獲得。1792年にラスクマンを根室へ派遣し、江戸幕府へ開国を迫っている。
1796年脳卒中のため67歳で死亡。不仲であった息子のパーヴェル1世をとばしてお気に入りの孫アレクサンドル1世を皇帝に据えようと準備をしていた中での死だった。後を継いだ息子のパーヴェル1世は母の所業を嫌っており、エカチェリーナ2世を全否定する政策を打ち出したが、これまた国内の反対派の反感を大いに買い、数年後に暗殺されてしまった。ナポレオン・ボナパルトと矛を交えナポレオン没落に貢献したアレクサンドル1世、その後を継いだニコライ1世はパーヴェル1世の息子達である。
- 多くの男性と関係を持っており、女帝を「娼婦」と揶揄する者もいた(孫にあたるニコライ1世もその一人)。しかし陸軍軍人のグリゴリー・ポチョムキンとは秘密結婚であったものの、彼とだけは生涯唯一の真実の夫と言うべき関係であった。ポチョムキンは自分の代役として「エカチェリーナの好みの男」を愛人として斡旋することさえしていたという。公的な子は第一子のパーヴェル1世のみだったが、生涯で数人の隠し子を愛人の貴族達との間にもうけた。これらの子達はエカチェリーナの元から離されて養育され、女帝の子ではなく貴族の私生児として扱われた。
- 文芸に優れた才をみせるなど自らも文化人であるばかりでなく、女性教育に力を注いだとされ、近年再評価の傾向がある。
- 日本人漂流者・大黒屋光太夫を日本へ送還した(開国を促すためでもあった)。
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