概要
天に住み織物をしながら暮らしていた蝙蝠の女神で、名前の意味は「こうもり(カパト)の奥方(トノマト)」である。
あるとき山に菜摘みに来ていたアイヌの女たちの恋の歌や輪唱に誘われ、沢を下りアイヌモシリに降り立った。
疲れたので服を脱いでヤチダモの木に掛け、小さな胸に風をあてて休憩をしていたところ、いきなり現れた地上の男に胸を押さえつけられてしまった。
驚いた女神はその男をしこたま叩きのめして、周囲に霧を放って天に逃げ帰っていった。
天に帰ってから、その男のことが気になった女神は地上を覗き見た。
実は男の正体は英雄アイヌラックルであり、女神にもう一度会いたいと恋煩いになり、食事が喉を通らず骨と皮のようになってしまっている様子が見えた。
そこで女神は男の住まいに舞い降りると、男から料理を作ってほしいと頼まれた。
女神はそれに応えて鍋を作り、椀で痩せ衰えた男に与えると、男は半分だけを食べて礼儀正しく返してきた。
それこそが求婚の作法であり、その椀を受け取った女神は残りの半分を食べて男を受け入れた。
そしてアイヌラックルとカパトトノマトは夫婦になり、末永く暮らしたのだという。