シリーズ全体を指すこともあるが、本項ではその第1作(無印)について記す。
シリーズ全体については略称のFFCCを参照。
概要
スクウェア・エニックスとゲームデザイナーズ・スタジオが共同開発し、任天堂が発売したアクションRPG。2003年8月8日に発売。ファイナルファンタジーシリーズの流れを汲む外伝的作品であり、ファイナルファンタジークリスタルクロニクルシリーズの第一作でもある。ゲーム進行で必須となるクリスタルケージやステージ毎に使い切りの魔石など、過去のファイナルファンタジーシリーズとは趣を異にするが物語と有機的に結びついたゲームデザインが特徴。遊び方がゲームキューブ単体でのシングルプレイとゲームボーイアドバンスを連動させたマルチプレイの二通り存在し、それぞれでプレイ感覚が若干異なる。
2003年当時としては綺麗なグラフィックで映し出される美しい風景とケルト風の民族音楽調のBGMによって牧歌的かつ幻想的な世界観が演出されている。そうしたフィールドを一人しみじみ、あるいは友人たちと協力しながら賑やかに旅することができる、ゲームキューブの名作ソフトの1つである。
なお、ファイナルファンタジーシリーズの中では日本国内に限り任天堂が発売元になったのは最初で最後である。(後述)
主題歌はオープニングは「カゼノネ」、エンディングは「星月夜」。
Yae氏は各ダンジョンの突入前のムービーのナレーションも担当している。
ファイナルファンタジーの名を冠するタイトルで唯一4コママンガ劇場の題材となった(『新約聖剣伝説』も「ファイナルファンタジー外伝」ではあるが)。
ストーリー
世界は瘴気に包まれた。
ひとたび触れると、もはや生命を保つ事が不可能な瘴気。
しかし、人々はその瘴気から逃れる術を得ていた。
クリスタル————。
その存在は、人々を瘴気から守る存在であった。
しかし、クリスタルの力も永遠ではない。
人々はその力を維持するために、年に一度ミルラの木からミルラの雫を得て、その雫でクリスタルを清めなければならなかった。
そのため人々は毎年、それぞれの村からクリスタル・キャラバンと呼ばれる若者達を送り出し、
ミルラの雫を得る事を続けてきたのだ。
この物語は、そうしたとある辺境の村・ティパの村の、若者達の物語である。
キャラメイク
このゲームは元々決められた名前や設定を持つ主人公はおらず、ポケモンやモンハンのようにキャラメイクをするところから始まる。
設定できる項目は「名前」「種族」「性別」「外見のデザイン」「実家の家業」の5つ。
種族は作中世界に存在している以下の4つの種族から選択する。武器・防具の種類(鎧は全種族共通、2種類目が専用)と「まもる」コマンドのアクション、ステータスの特徴がこれによって決まる。その他、一部の場面では特定の種族が有利になるシチュエーションなどもある。
- 温の民クラヴァット
剣と盾を装備する。武器攻撃・魔法ともにバランスの取れたステータス配分。いわゆるバランス型だが、防具の種類が他種族より若干豊富で、鎧・盾とも他種族の最強装備より一段階上位のものが存在するため防御力特化とも言える。まもるコマンドの動作は盾を前に構えて正面からの物理攻撃を無効化する。
- 武の民リルティ
武器攻撃特化。一方で魔法は不得手であり、詠唱にかかる時間が長く射程距離が短い。そのためサポートキャラには適しておらず、ガンガン斬り込んでゆく前衛に向いている。
武器・専用防具は槍と小手で、まもるコマンドの動作は槍を横に構えて正面からの物理攻撃を受け止める。
武器の種類がクラヴァット・セルキーより1種類多く、最強武器の威力値も他の種族より高い40となっている。
- 智の民ユーク
リルティとは逆に魔法特化型で、武器攻撃が不得手。よって魔法で援護する後衛に適しており、シングルプレイにはあまり向いていない。武器・専用防具はハンマーと兜。まもるコマンドはボタンを押し続けている間身体を半透明にして全ての攻撃を透過するという半ば反則のようなもので、囮としての性能が高い。
パーティに1人でもユークがいれば、シェラの里に無条件で入村できる(そうでない場合はヴェオ・ル水門で拾える「シェラのあかし」というアイテムを入り口で渡す必要がある)。
武器の種類がクラヴァット・セルキーより1種類少なく、他種族であれば最強の1歩手前に位置付けられる「でんせつのぶき」が最上位装備である。裏を返せば他の種族より楽に最強武器を生成できるとも言えるが。
- 我の民セルキー
クラヴァット同様に武器攻撃・魔法ともそれなりのステータスをしているが、こちらは素早さ特化。素早さは何らかの方法によって強化することができない固定値のため、かなり大きなアドバンテージである。移動速度のほか、必殺技チャージ時間も最速。多人数では遊撃役に向いている他、2人プレイの前衛やシングルプレイのキャラとしても使いやすい。武器・専用防具は棍棒とベルト。
また、まもるコマンドはバク宙での回避。ユーク同様全ての攻撃が対象だが、こちらは一瞬しか効果がないので攻撃の瞬間にタイミングを合わせる必要がある。
コナル・クルハ湿原内にある古代セルキーが遺した石碑を解読できる。また、ルダの村では村人に話しかけるたび10ギル程度お金をスられるが、セルキーならスられずに済む。
なお、女性は皆もれなく巨乳で、よく見るとこれでもかというほど揺れる。
性別は男女どちらを選んでも大半の場面では特に影響しないが、一部のアクセサリーがどちらかの性別専用となっている。また、男女によって攻撃コマンドのモーションが違い、例えばクラヴァットの場合男は3段目が斬り上げ攻撃なのに対し女は水平に剣を振るため、飛翔・浮遊系の敵に対して男の方が攻撃が少し当たりやすいという差が生じる(実際そこまで気にするほどの性能差ではないが……)。
外見は各種族の各性別に対して4種類ずつが用意されている。違いは見た目だけでありステータスに影響はないので好みのものを選べばよい。なお、装備品によって服装が変わることはないが、武器とクラヴァットの盾は外見に反映される。
実家の職業は、それぞれに村に帰った際に親から何らかのアイテムを貰えたり値引きされるといった恩恵がある。プレイして親とやり取りすることで発展度が上がるため、鍛冶屋や商人など重要度の高い職業を優先的に普段使うキャラに設定するのがよい。特に、「きゅうきょくぶき」の製作は実家錬金術師・実家鍛冶屋・実家商人の3つを最大まで発展させる必要があるため、これらのキャラでゲームを進めていないと厳しい。
このように主人公はプレイヤーが好きに決められるが、公式にはクラヴァット男つんつんの「キアラン」をはじめ一応デフォルトキャラが設定されており、ディシディアの1作であるオペラオムニアにもキアランの名でこの作品から登場している。
ゲームシステム
村のクリスタルを維持するために必要な「ミルラの雫」を集めるために旅をするのがプレイヤーの主目的。ミルラの樹はラストのダンジョンを除く全てのダンジョンの最奥部に存在し、ボスを倒すと雫が手に入る。3回で1年分の雫が溜まるため、基本的にはダンジョン3つクリアするごとに1年というサイクルで進んでいく。クリスタルは1年以上雫を与えないと効果が失われ、その街や村は滅んでしまうという設定(現にそうして滅んだ元村という設定のダンジョンも存在する)だが、ゲーム上はどれだけプレイを放置しても自分の村が滅んだりはしない。
一度雫をとったダンジョンは再来年になると再び雫の採取が可能になるが、敵が増員・強化されるなどして難易度が上昇する(3段階目以降は固定)。なお、雫がない状態のダンジョンでも探索・ボス戦をすることはでき、ボス戦後の清算アイテム取得も可能である。年を経るごとにマップが解放され新ダンジョンの挑戦が可能になるが、何年目にどこに行くという制約は特になく、好きなダンジョンで雫を集めてよい。一応ラストダンジョンには最短6年目で到達できる。
RPGによくある経験値やレベルの概念は存在せず、装備品の強化とステータス増強アイテム「アーティファクト」の入手によって能力値を上げるのみである。そのため、敵が落とすアイテムやダンジョンクリア時のボーナスアイテムを必要とせず、ただダンジョンをクリアして雫を回収するだけなら敵を一々倒すメリットはあまりない。
「(武器で)たたかう」「まもる」および各種魔法などのコマンドを切り替え、Aボタンを押して選択中のコマンドを実行するだけのシンプルな戦闘システムだが、複数人で同じ場所に合わせて魔法を発動することで行う合体魔法(マジックパイル)が特徴的。ファイア、ブリザド、サンダー、ケアル、レイズ、クリアの6種の基本魔法以外は全てこれによって行う必要があるため、ファイラ、ファイガなどの上位魔法や飛行する敵を落とすグラビデ、霊系の敵を実体化するホーリーなどは使うたびにプレイヤー同士の連携が試される。ちなみにシングルプレイに限って、コマンドリスト上で2つの魔石を並べて合成することで2人でできる合体魔法までは1人で実行できる。また、ケージ運搬役のモーグリが時々ファイア・ブリザド・サンダーのいずれかを唱えてくれることもある。
6種の基本魔法はステージ内でそれぞれに対応する魔石と呼ばれるアイテムを拾得することで使うことができるが、これはそのダンジョンから出ると失われるため、ダンジョンに入るたびにどこかで拾う必要がある。ただし、しばらくゲームを進めると永久魔石と呼ばれるアーティファクトが登場し、これを入手すればその魔法の魔石は拾う必要がなくなる。
世界が瘴気に犯されているという設定のため、ダンジョン内では瘴気を浄化するクリスタルがついた「クリスタルケージ」(ミルラの雫を集める容器を兼ねる)が張る結界の中に居なければ少しずつダメージを受けてしまう。マルチプレイでは移動する際に誰かがこれを運搬せねばならないが、運んでいる間は動く以外のあらゆるアクションができなくなるので注意が必要。シングルプレイではCPUのモーグリが運んでくれるので不自由しない。ちなみに、街や村には大きなクリスタルがあって街全体に結界を張っているので自由に動き回れる。
また、ケージに付いているクリスタルには「火」「水」「土」「風」の属性があり、ダンジョン内のホットスポットを使って変更できる。この属性は後述の瘴気ストリーム通過に関係するほか、火なら炎上、水なら凍結、土なら石化と毒、風なら麻痺に対する耐性がパーティに付与される。
マップ
ワールドマップはいくつかのエリアに分断されており、それらは瘴気ストリームという道を通過するか、船を使うことで行き来できる。
瘴気ストリームを通るためには各ダンジョン内にあるホットスポットを用いてクリスタルケージの属性をそのストリームの属性に合わせる必要があるが、あるイベントをこなすとケージ属性が「?」になり、どのストリームも通れるようになる。ただしその代わり「?」属性には先述のようなダンジョン内での耐性追加効果は何もない。
船は乗るたびに距離に応じた運賃がかかるが、特定の条件を満たすとそれ以降乗り放題になる。
街・村など
- ティパの村
- ティパの港
- マール峠
- ジェゴン川
- アルフィタリア城
- シェラの里
- ファム大農場
- ルダの村
- マグ・メル
ダンジョン
名称 | ボス | ホットスポット | 備考 |
---|---|---|---|
リバーベル街道 | ジャイアントクラブ | 水・風 | 『RoF』『EoT』におまけステージとして登場 |
ゴブリンの壁 | ゴブリンキング | 火・土 | 2年目になると追加 |
キノコの森 | モルボル | 水 | |
カトゥリゲス鉱山 | オークキング | 火 | |
ティダの村 | アームストロング | 風・土 | サイドストーリーに関係 |
ジャック・モキートの館 | ジャック・モキート | 火・水 | |
ヴェオ・ル水門 | ゴーレム | なし | ジェゴン川が枯れた際、ここであることを行うと川が復活する |
セレパティオン洞窟 | ケイブウォーム | 風 | |
デーモンズ・コート | リザードマンキング | なし | ここであるギミックを発動させるとコナル・クルハ湿原で特定のエリアに入れるようになる |
コナル・クルハ湿原 | ドラゴンゾンビ | なし | 最長ダンジョン |
レベナ・テ・ラ | リッチ | なし | 隕石衝突前の時代を描いた続編『RoF』では街マップとして登場 |
キランダ火山 | 鉄巨人 | なし | 構造は大きく異なるが『RoF』にも登場 |
ライナリー砂漠 | アントリオン | ?※ | ※条件を満たすと出現 |
ヴェレンジェ山 | メテオパラサイト | なし | メテオパラサイト戦後に真ラスボスとの連戦 |
リマスター版
発売から16年となる2019年冬にNintendo Switch・PlayStation 4・Android・iOS向けにリマスター版が発売されることが2018年9月10日に発表された。
発売日は当初2020年1月23日に決まっていたものの2020年夏へと延期、後に同年8月27日に決定した。
キャラクターにボイスが付いた事、オンラインでのマルチプレイができるようになった事、画面のUIデザインが変更されている事、ダンジョンへの新エリアの追加などがアナウンスされている。
主題歌はオリジナル版と同じだが新規に収録されている。
余談
このクリスタルクロニクル、任天堂が当時行っていたゲーム開発出資ファンド「ファンドQ」を受けて製作されたものである。その為任天堂が発売元になっていたが、実は当初はスクウェア・エニックス合併前に開発が始まっており、スクウェア本体ではなく子会社である「ゲームデザイナーズ・スタジオ」が開発を担当した……のはある意味表向きの話であり、実はこの会社は実質的にはペーパーカンパニーだった。
何故かと言うと、この企画時点ではスクウェアによる過去の過ちのせいで任天堂は激怒しスクウェアそのものを出入り禁止扱いとしていた事によって完全に和解していなかったために任天堂との関係修復を含めたファンド融資が最重要目的だったとされる。詳しい事はスクウェアの項目を参照してほしいが、「ファイナルファンタジー劇場版」の失敗でスクウェアは経営に大打撃を負ってしまった事に対して任天堂に救済を求めたものの、提示された条件がどうしても飲めなかった事で結局受けてもらえず、当時のSCEによる救済と和田社長(当時)による徹底した財務方面の洗い出しでなんとか持ち直した背景があったからである。実際発売されたのはスクウェア・エニックス発足後に本格的に任天堂と関係修復した後だった。
HDリマスターでは完全に発売元がスクウェア・エニックスになった模様。
関連タグ
FFCC:略称
FFCCRoF 小さな王様と約束の国 FFCCEoT 光と闇の姫君と世界征服の塔 FFCCCB:シリーズ作品