概要
コミケ雲とは、8月の中旬から後半にかけて極めて稀に観測される気象現象の一つである。
観測可能性は年に3日、実際に発生するのは数時間・範囲は数百メートル四方に限られるということから、伝説の気象現象とも称される。その発生条件の珍しさから、存在が発見・報告されたのは1980年代に入ってからのことである。
この現象が頻繁に報告されるようになったのは、コミックマーケットの来場者がアニメブームにより激増し、会場が東京国際見本市会場に移転してからのこと。この頃には頻繁に発生していたことから、古参オタクの間で一種の伝説として口伝されていた。その後、より大きな会場に移ると発生しづらくなり、都市伝説のように扱われていた…ものの、年々増加していく来場者と激化していく酷暑、そして現象自体の認知度と相まって2010年代以降は再び観測される事例が出てきている。特に2013年には参加者がコミケ雲で霞む照明の写真を撮ることに成功しており、大きな話題となった。
発生原理
夏のコミックマーケットにおいては、以下のような条件が整っている。
- 夏のコミックマーケットは8月の中旬から後半に開催されるのが通例のため、そもそもの前提条件として外気温・湿度が高い
- その暑さの中待機した一般参加者たちは生理現象として大量の発汗をした状態で会場に入る
- 来場者数が非常に多いことに加え、待機列にいる時に熱されていて総熱量が高い
- 来場者の多くは自身の目標を達成する為、また日常と乖離した空間に触発され、興奮状態にある
- 来場者は熱中症対策として大量の給水を摂っている
- お目当てのサークルに並ぶ際は隙間を詰めるため、会場内は全体的に過密になりやすい
これらの条件により、東京国際展示場の展示ホールの湿度は、主に汗の蒸散によって非常に高くなる傾向がある。こうして放出された水蒸気が上昇気流によって天井付近に滞留し、冷房によって急激に冷やされ飽和水蒸気量に達すると、凝結して霧状となる…という原理で発生する。更に霧が濃くなると光が一部屈折・反射して靄がかった状態となり、雲と言えるような濃さになることがあるため、「コミケ雲」と呼ばれる。
こうした発生原理は実際の雲とほぼ同じである。実際の雲が海上などから発生した水蒸気が冷やされて凝結するのに対し、ここでは来場者達の汗が海の代わりで海上の空調が上空でそれを凝結させる役割を果たしている。より小さい会場では起こりやすいが、東京国際展示場クラスの設備で起こるのはかなり珍しく、コミケ来場者達の数と熱気が凄まじい事がうかがい知れるだろう。
なお、よく冗談で言われる「コミケ雲からそのうちコミケ雨が降ってくる」というような心配はほとんどない。雨を降らせる雲とは厚みが全くことなるため、雨滴となって落ちてくるほどの水分を貯蔵することはできないためである。ただし、時として雲を作るほどの水分が自分たちの体から放出されているという点には注意が必要であろう。せっかくの楽しいイベントも熱中症になっては台無し。夏のコミケを安全に楽しむには、水分補給や暑さ対策、来場時間の調整などを駆使して十全な準備をすることが肝要である。
関連リンク
2013年にコミケ雲が観測された際、ネットメディアねとらぼが特集した記事。