カタログの概要
コミケットカタログとは、コミックマーケット(以下「コミケ」)の参加には欠かせない最低限の情報が書かれているコミケの手引書。
「コミケカタログ」あるいは単に「カタログ」とも呼称する。
コミケの主催者にあたる「コミックマーケット準備会」が発行しており、実質的にコミケの公式ガイドブックともいえる。
発行元によれば一応同人誌の扱いらしく、だとすると売り上げ・発行部数共におそらく日本一の同人誌であろう。
厳密にはコミックマーケット準備会が発行しているのは冊子版であり、ROM版は共信印刷(冊子版の印刷会社でもある)、WEB版はサークルドットエムエス(オンライン申込みの担当会社)がそれぞれ発行している。
コミケットカタログ(以下「カタログ」)は、コミケそのものの巨大イベント化・多人数化に伴うかたちで増ページを繰り返しており、全盛期の冊子版カタログはページ数が千と数百ページ、重さが約2kg、厚さは3cmもあった。
C86で紙質に改良が加えられて若干の軽量化がなされたが、それでも1.6kgはある。
これはもはや本という名の鈍器である。
また、驚くべきことにこれだけの分厚さを誇るカタログだが、この厚さで1冊につきコミケ1回分(つまり最低限)の情報量しか収録されていないのだからつくづく恐れ入る。
そのため、最新のコミケに参加するには、その都度最新号のカタログを入手する必要があり、前回以前のカタログを持っていてもほとんど役に立たないので注意。
コミケは高度な情報戦である。最新の公式情報を得るためにも、コミケに参加する前にカタログは熟読しておこう(初心者は特に)。
カタログの種類
現在、コミケットカタログのバリエーションは、全て紙で構成されている「冊子版」と、主要な情報をDVD-ROMに収録した「ROM版」(通称「カタROM」)、ネット上の「WEB版」が存在する。
この中で、後述する「分厚さに定評があるコミケットカタログ」は主に冊子版のことを指すが、対してROM版の冊子部分はそれほど厚くはなく(ちょっとしたムック本程度の厚み)、WEB版に至ってはすべてがWEB上で完結しているので冊子部分は存在せず、紙媒体で読みたいならばプリントアウトする必要がある。
カタログはいずれの形態のカタログも一長一短があり、冊子版は物理的な重量がかさむ上にアナログなのでサークル情報はどうしても限定的(冊子版カタログ単体ではサークルカットに記載されている以上の情報を引き出せない)という欠点があるが、かわりに光源さえあればいつでもどこでも読めるので場所を選ばず、また「コミケットカタログ」の内容は基本的にすべて収録される(ROM版やWEB版はオミットされる部分がある)ため読み物としても使えるメリットがある。
また、カタログの中で入手が一番容易(同人ショップやアニメイトなどに加えて一部の画材店などでも取り扱うほか、当日に会場でも入手できる)で、発売開始もROM版に比べておよそ1週間ほど早い。
加えてカッターなどで必要部分だけを裁断すれば大幅なダイエットができ、開催日ごとにページを分けて分冊することも可能…と工夫次第で使い勝手を向上させられるため意外とカスタマイズ性は高く、初心者はもちろんベテランの中にも冊子版を愛好する者は多い。そもそもコミックマーケットは冊子の本がほしいという人達の集まりなのである。
前述の通り準備会公式発行のカタログはこれのみであり、C96で導入予定の入場証リストバンドは冊子カタログへの添付を基本とする予定。
ROM版はカタログとは別個にROMから情報を取り出す機器(主にパソコン。紙に情報を印刷するならばプリンターも)が必須となるうえ、こうした情報機器に対するある程度の知識も必要なため機械音痴には不向きで、さらに冊子版に比べると入手も少々限定的(書店などでも、冊子版のみを扱いROM版を入荷しない店がある)だが、反面検索能力が非常に高いというメリットがある。
またサークルによっては自分のホームページやTwitterなどへのリンクも貼られているため情報収集の手広さやスピードも冊子版の比ではなく、情報機器に詳しい者が扱えばこれ以上ないほど快適にサークルチェックが可能となるほか、冊子部分も薄いので持ち運びも容易である。
ただ、冊子版に比べると書店でも売り切れやすい傾向があるので、欲しい時に店頭で見かけたらすぐに入手するか、店員さんに取り置きをお願いしておくことをオススメする。
WEB版はROM版の発展形といえるもので、登録すれば無料で使えるが機能は限定的で、課金をすることによって全機能を使用することができる。
ちなみにサークル参加者も全機能を使用可能。
使用感としてはROM版に近いが、サークルの検索機能に重点を置いているためか冊子版に比べるとオミットされている部分が多く、あくまで「データベース」的な役割に留まる。また、WEBを用いている関係上鯖落ちやメンテナンスなどで閲覧できなくなる危険性と常に隣り合わせというリスクがどうしても存在する。
なお、WEB版はサークルの当落情報の一般公開が最も早く、情報の更新も随時可能というメリットがあり、前述の通り登録すれば無料でも使えるのでサークルの配置チェック程度はタダで可能なのだが、アクセス集中による影響をモロに受けるためコミケ本番が近付いてくるにつれてどんどん使いづらくなってくる(とりわけ開催前日や会期中は無課金だとほとんど役に立たない)のも難点。
特に初心者は「参考にする」程度に留めて、大人しく冊子版かROM版を入手しよう。
なお、散々分厚い分厚いと言われ続けている冊子版のカタログであるが、分厚い最大の原因は全日程分のサークルのサークルカットをすべて掲載しているためである。
サークルカット自体はごく小さいものであるが、それが毎回3万サークル以上も掲載されるのだから当然膨大な情報量となり、費やされるページ数も相当な量になる、という事情からである(前述の「1冊につきコミケ1回分の情報量しかない」のもこれが理由)。
何度か分冊が試みられたが、結局現在の一冊の形に落ち着いている。
ちなみに、ROM版はサークルカットの掲載部分を全てROM部分に移行しているほか、WEB版に至っては前述の通りすべてがWEB上で完結しているため、閲覧するだけならば物理的な厚さや重量は発生しない。
他にも、冊子版のカタログには諸注意事項のページや各種コラムやレポートといった読み物ページ、マンレポ、企業ブースの案内に同人誌やコミケと関わりの深い企業や団体(同人ショップに印刷所、画材メーカーなど)の広告・告知ページなどが収録されているため、読み物としても楽しめるほか、付録?として切り離し式の会場の白地図が数枚付属しており、余白にサークル名などを書き込めスペースがあるので、お目当ての名前や場所を記入して当日に役立てよう(通称「宝の地図」)。
カタログの諸注意事項
どのカタログの形態にも言えることだが、諸注意事項のページはコミケに参加する上で重要な事柄がたくさん記載されているので、参加当日までにここだけでもじっくり読んでおこう。
この諸注意事項のページは冊子版とROM版は冊子の部分に収録され、WEB版でも開催日が近付いてくるとWEB上で公開されるようになっている。
また、諸注意事項のページには当日の「もしも」の事態に役立つ情報(救護室の場所や落とし物の受付など)も多いので、この部分を切り取るなり紙に印刷するなりして当日も持ち歩くとモアベターである。
コミケは「甘くない」イベントなので、横着してお目当てのサークル情報ばかりを確認し、諸注意など全く読まずに参加すると大抵痛い目を見ることになる。とりわけ初心者は、まずこのページを読むことから始めよう。
カタログの歴史
カタログはコミケの歴史と共に進化を遂げてきたものであるが、実は最初からあったものではなく、公式のガイドと呼べるものが出来たのは意外にも1976年のコミックマーケット4(C4)からである(それでも十分に歴史は古いが)。
それ以降、長らく冊子版カタログのみの状態が続いていたが、1999年のコミックマーケット56(C56)から前述のROM版カタログ(当時はCD-ROM。2011年のC81よりDVD-ROM化)が登場したほか、β版の試験運用を経て2013年のコミックマーケット84(C84)以降、WEB版の正式公開・運用も開始されている。
しかし、新型コロナウイルスの影響からコミックマーケット98は最終的に中止となったことで、万単位で大量のカタログが売れ残るという不良在庫を残してしまう。またこの間にカタログ印刷で関わってきた共信印刷が撤退。
コミックマーケット99では何度かの延期を経て無事開催に至ったものの、冊子版・DVD版カタログが無い初のコミックマーケットとなった。これも中止という経験もあってか「紙のコストが大きい」上に再び中止になった際のリスクが高いという理由であり、紙の不良在庫を残した影響の大きさがうかがえる(C99反省会より)。
実質スマホやタブレットによるWebカタログ頼みとなり、再度開催した代償も軽視できないほど「デジタル弱者に厳しい」イベントになった。
カタログの表紙
カタログの表紙イラストはコミケに参加しているサークルから毎回選ばれており、この表紙イラスト担当に選ばれることはコミケに参加する同人作家・イラストレーターにとって最高の栄誉とされている。
当然、表紙イラストの画風も選ばれるサークルの作風によって千差万別であり、シリアスなイラストからギャグテイストのイラスト、美少女を前面に押し出したものからBL風味のもの、非常に稀だがキャラクターが一切描かれていない、静物画のようなイラストが表紙を飾ったこともあった。
このほか、カタログ内部のカットイラストなども基本的にはコミケに参加しているサークルから選考されており、いずれも作家名とサークル名、それにサークル参加する日時と配置番号が記載されるため、イラストを見て興味をもった参加者が当日サークルスペースを訪ねやすいように工夫がされている。
カタログの価格
カタログはページ数の増大と共に値上げを繰り返しており、また形態によって価格が変わるため、公式サイトなどで最新の価格をチェックしておこう(公式サイトには他にも主要なカタログ取り扱い店舗の一覧などもあるので参考までに)。
冊子版カタログの場合、取扱い書店などでの店売り価格よりも会場価格の方が安いものの、クソ重い冊子版カタログを持ってクソ混雑する会場内を回るのは大変だし、現地で裁断するのも手間がかかるので、差額をケチらずに取扱い書店などで事前入手したほうがサークルチェックも余裕をもって行えるため、結果的には当日楽になる(よく誤解されているが、通常開催時のコミケでは会場内にカタログを持ち込む必要は無い。だが、前述の通り諸注意事項の部分などは裁断するなどして常備しておくといざという時便利である)。
そのため、会場でのカタログ入手はよほど時間に余裕が無くて事前に入手出来なかったか、あるいは売り切れや近くに取扱い書店が無い場合の最後の手段と考えよう。
むろん、カタログを一切読まずに会場入りするのは論外。どこに何があるのかわからず迷子になるだけである。
なお、近年はメロンブックスやとらのあなに代表される同人ショップや同人誌販売書店などの一部のカタログ取扱い店舗では、カタログ本体の他に独自の「特典」をつけることで付加価値を高める動きが常態化している。
「特典」の中身は千差万別で、以前は夏コミであればイラストの入った水筒やタオル、冬コミであればイラスト入りのブランケットなどといった「コミケ会場内や入場時に有用なもの」が鉄板であったが、特典付与の競走が過熱した結果、イラスト入りのタペストリーや小冊子、色紙など「直接的にはコミケとあんまり関係の無さそうなもの」も目立つようになってきている(書店側にとっても「やめたくてもやめられない」チキンレースの様相を呈しているらしい)。
そのため、こうした特典を付与する書店が集中する秋葉原では、夏冬のカタログ発売開始時期になると各書店がこぞって店舗前に臨時の売り場を設置し、店員が声を張り上げるのが一種の風物詩となっている。
余談だが、以前は東京都の下北沢にある直営店「コミケットサービス」にて、少年ジャンプの早売りよろしく他の店舗よりも1日早くに会場価格で購入できたのだが、コミケットサービスは2017年12月末日をもって閉店してしまった。残念。