概要
東方Projectに登場する稀神サグメと因幡てゐの二人によるカップリング。
サグメは『東方紺珠伝』、てゐは『東方永夜抄』、に初登場した。
サグメが初登場した『紺珠伝』時点のサグメの地上訪問時ではてゐとサグメの接触の有無は語られていなかったが、「文々春新報」創刊号(『東方文果真報』)において両者が同じ場にある様子が描かれている。
二次創作では『文果真報』以前からも両者にまつわる様々な想像が展開されてきており、『文果真報』での様子を通してさらに二人の可能性が広がったという経緯ももつ。
月と永遠亭
サグメとてゐはそれぞれ月の都と地上に住まう存在であり、両世界には開かれた交流はない(『紺珠伝』時点)。
これは月の都側がその成立の経緯からして地上の「穢れ」を忌避していることに大きな理由があり、またそれは単に穢れの忌避という現象的な隔絶にとどまらず心理的な障壁でもあるようで、地上側においても月から傾けられる嫌悪に対しては快からぬ思いを抱いているとされる(『東方外來韋編』)。
しかし今日の幻想郷には双方の世界観や価値観を知り、時には一方の土地に根差しながら両方の立場に立った行動をとるものもある。例えば地上においては、それは永遠亭である。
永遠亭の中心的な住人たちはもともと「月の民」であり、それぞれの事情から今では地上の民となったことを自認している。しかし月の様々な事情にもよく通じており、今日でも地上から月に心を傾けることもある。
例えばサグメが初登場した『紺珠伝』などでも永遠亭の八意永琳の策略が発揮されており、特にサグメにとってはこれが大きな助け舟ともなった。
後に問題が引き続いたことで今度はサグメ本人が永遠亭を訪れてもいる。
今日でこそ解放されている永遠亭であるが、かつてはその存在自体が隠され、時間の流れから隔絶されていた。
永遠亭はかつて地上へと隠れた永琳らが興したものである。
それは蓬莱山輝夜とともに「 永遠の魔法 」をもって生み出され、そして隠されたはずであった。
しかし、ここにどういうわけか介入することができたのがてゐである。
てゐは永遠亭の立地が自身のテリトリーの内部であると告げて永琳と交渉に臨む。
結果永琳らはてゐとの交渉に前向き応じ、てゐもまた以後永遠亭に関わることとなった。
この交渉に関する経緯については「因幡てゐ」記事を参照。
『紺珠伝』以降では、サグメが永遠亭を訪ねる様子を「文々春新報」が撮影している。
この際には永琳がサグメを迎えている部屋の縁側にてゐが兎たちと共に腰かけており、部屋の障子戸を隔てた背中合わせで物理的に場を共有する様子が報告されている。
ただし「文々春新報」の記事は永遠亭らやサグメといった月の民を危険視する論調であるため、例えばそのテイストを受けてサグメとてゐを含めた同日の面々の様子を理解するならば、「 八意事変 」を画策する永琳らの企みの場に、サグメだけでなくてゐもまた同席していた、といった形になるのかもしれない。
白の兎と鷺と詐欺
てゐはその二つ名などからして「因幡の素兎」(-しろうさぎ。二つ名としては「幸運の素兎」)との関連が語られており、本人もまた「兎」の妖怪である。
サグメはその背に片方だけの翼を持ち、そのスペルカードにも<「片翼の白鷺」>などとしてその要素を表現しているなど、てゐとサグメはともに「白」の要素でも語られている。
また両者にはともに「詐欺」の要素が込められている。
例えばてゐは『東方文花帖』などで「 賽銭詐欺 」をはたらいている。
ただしこのときの被害者からは(利害が対立する)一部を除いて大きな声は上がっていない。
またてゐ本人も詐欺ではないとしている(ただしその直後には語ったすべての言葉さえ「 殆ど嘘 」ともしているため、その真意をつかむことはできない)。
『東方花映塚』においても四季映姫・ヤマザナドゥから「詐欺」行為をたしなめられている。
サグメは「天邪鬼」の要素も持つ存在であり、先述の「鷺」は「詐欺」にも通じている(『外來韋編』)。
サグメもまた言葉によって世界を動かす。
ただしサグメの言葉にはその能力もあって、言葉として他者に投げかける以上の力を持ち、さらにその影響が「 逆転 」に至るものであるという性質がある。
加えて「詐欺」が一般的に自身には類が及ばないよう言葉を巧むことができるのに対し、サグメは自身の能力の影響(悪影響含め)が自身に降りかかるかどうかを制御しつくすことができない。
てゐは先述のケースにおいて「 騙された人も幸福にするような嘘を吐く事 」がポリシーであると語っている。一方でサグメはそこの言葉がどこで誰にどのような影響を与えるかわからないために寡黙で慎重であるという違いもある。
てゐとサグメはともに「詐欺」の要素で語られているが、そのスタイルや実際の所にはそれぞれごとの個性があるものとなっている。
その他の関連
今日の月と民の接触
先述のようにてゐは元月の民である永琳らと古くからの縁を持つ。
一方で昨今の動向として『月のイナバと地上の因幡』において現在も月に住まう人々とも接しており、その際には物怖じしないいつものてゐの様子が描かれている(ただし本作では原作者ZUNは監修という位置づけ)。
サグメもまた先述のように現在でも月の民であるため、てゐはサグメの登場以前から複数の形でサグメも住まう月世界と接触していたといえる。てゐは『東方儚月抄』で起きた第二次月面戦争においても月の勢力を援護した永遠亭の側で状況を見定めており、動乱の推移をして「 月の御仁 」の側に付いて良かったとしているなど、月勢力側に近かったことでの幸運も得ている。
そして『紺珠伝』以降サグメが永遠亭を訪れるようになったことで、てゐは『永夜抄』以前から『儚月抄』を経て『紺珠伝』にも繋がる月との多様な縁を新たに結ぶことともなった。
地上に住まいながらサグメをはじめ永琳らや綿月豊姫・綿月依姫の両名らに地上で直接出会った作中の描写を持つ地上生まれの存在は、『文果真報』時点ではてゐのみである。さらにてゐは玉兎であるレイセンとも出会っている。てゐ以外では博麗霊夢が全員と出会っているが、豊姫・依姫との交流は月の都やその郊外の月の海でのものだけである。
ただし同現在時点ではてゐについて、レイセンと同様に『紺珠伝』当時現役の玉兎にしてサグメ同様に月の都遷都計画に関係した月の兎である清蘭や鈴瑚との接触があるかどうかは不明。
日本神話の存在
サグメとてゐは共に日本神話にその由来が語られていることにも共通点を持つ。
てゐについては先述のように「因幡の素兎」、サグメについては動物の声を聴くことのできるとされた巫女(または女神)のアメノサグメがそれぞれ共感する。
月の兎と地上の兎
地上には多種多様な妖怪があるが、先述の通りてゐは地上の「兎」である。
サグメの住まう月にもまた兎の存在である先述の玉兎があり、両者はその個人差などを除けば大まかには似通った存在である様子である。例えば『儚月抄』では地上に降りた玉兎のレイセンが服を変えるなどする形で「 地上の兎 」に変装している。
二次創作では
二次創作において両世界観の障壁などを想定する創作の場合、一般に月世界と地上世界などとの交流は一筋縄ではいかないことなどが想像されることもあるが、兎角てゐの場合は永琳らの術さえも越えて永遠亭に接触したという前例があるため、「サグてゐ」においても例えばてゐが月に所在するサグメ唐突に接触する「幸運」を実現するという想像もある。
『紺珠伝』本編において地上から訪れた主人公らはサグメにとっても予想外のものであったが、それ以後の有事でない状況においてもサグメは地上からの想像だにしない不思議な事態に遭遇するのである。
『文果真報』でも描かれたように地上に降りたサグメがてゐと出会うという想像もあり、例えば先述のように永遠亭を通して出会うケースなどがある。
てゐは『儚月抄』などで古い神々を見知っているかのような発言もしているため、同じく日本神話で語られる神代の存在とも目されるサグメに対してもまたてゐなりの知があるのでは、と想像されることもある。
出会って以後については一例としてサグメがてゐのかわいらしさに心酔する、というものがある。
サグメにまつわる二次創作の一例として、そのクールな寡黙さなどから普段から玉兎たちに慕われ、サグメもまた玉兎たちを大切に思っていたり、時にはそのかわいらしさをいとおしく思っていたりする等の想像がある。
同じく月の民である豊姫は『月のイナバと地上の因幡』において地上のてゐの配下であるモブイナバたちにペット的な愛情を寄せており、それに近いものかもしれない。
このサグメの愛情がてゐにも寄せられるのである。
一方のてゐについては創作ごとに反応はさまざまであるが、一つのケースとしてサグメの気持ちを計算高く受け入れる、というあり方もある。てゐにはその「かわいさ」が有利をもたらす手段となり得ることを意識するような発言(『文花帖』)もあり、サグメが月で立場のあることも相まって機を見るに敏なてゐがこれを逃すこともないだろうと想像するのである。
純粋にサグメの気持ちを受け取る場合などでは、てゐがサグメの朴訥さに普段の悪戯で生まれる人間関係とはまた違った安らぎを見出したりと、サグメとてゐの二人ならではの関係が想像されることもある。
この他サグメとてゐの「詐欺」として要素が出会うという想像もあり、この際には「詐欺」と絡んだ人間を幸運にする能力と運命を逆転させる能力の応酬が描かれるなど、こちらもまた広く「運命」に関与するてゐとサグメならではの出会いとなる。
月と地上のそれぞれの世界で長い時間をかけて練り上げられてきた個性ある腹の探り合いもまた「サグてゐ」の一つの側面といえるだろう。
またてゐの場合は商売にも熱心であるため、将来的な月との縁故の形成のための基盤などを目的にサグメと接触したり、それを受けたサグメもまた新たな地上とのパイプや情報網の獲得などの利益を見出すなど、それぞれがビジネスあるいは人間関係の開拓として出会うという「サグてゐ」もあり、てゐやサグメにみる、二人ならではしたたかさを見出す創作の在り方もある。