概要
フランスのシトロエンが1982年から1993年まで生産していた5ドアファストバックセダンおよびステーションワゴン型の自動車。
デザインしたのは、カウンタック等で知られるマルチェロ・ガンディーニ。半切りにしたリアフェンダーアーチなどに、彼のデザインらしさが垣間見える。
プラットフォームはプジョー車と共通したものを使っているが、スプリングは前後共にハイドロニューマチックを使用していた。エンジンもプジョー製で1.4Lから1.9Lまで合計7種類をラインナップ。後述する4TCを除くと、GTiというホットモデルが最上位に据えられた。
販売はすこぶる好調で、世界で約230万台が売れる大ヒット作となった。日本へも1万3000台あまりが輸入され、日本で最も売れたシトロエン車である。シトロエン車らしさを濃厚に残しながら、プジョー車譲りの信頼性の高さを持ち、燃費も当時としては非常に良く、ガンディーニによるモダンかつ広い室内およびトランクといった合理的なデザインにより実用性に富んでいた。マツダ系ユーノス店が販売網に加わったことも成功の要因となった。
4TC
WRCへの参戦を目的に、BXをベースにグループB規格に合わせて設計されたのが、BX 4TCである。
エンジンは2.1Lターボを縦置きで搭載し、駆動方式はアウディ・クワトロに倣い4WDを採用。
ただし、フルタイム4WDではなくパートタイム4WDであり、状況によって2輪駆動化して使い分けていた。
ボディも当然ながら手が加えられ、エアロパーツで武装しワイドトレッド化した上、エンジンのサイズの関係でボンネットをかさ上げされている。
WRCへの参戦は1986年。
鳴り物入りでデビューしたものの、先述の油圧サスペンションが命取りとなり、故障が多発しまともに走りきる事すらままならない信頼性の低さを露呈。
特にアクロポリスラリーでは出走した3台全車がリタイアという不甲斐なさであった。
5ドアハッチバックの比較的大柄なボディとフロント置きの鋳鉄製エンジンにより、重量や回頭性も不利であった。
実際、当時の映像を見るとライバル勢より頭一つ遅く、特にコーナリングでもたついている事が分かる。
ターボラグの酷さ故にエンジンの瞬発力も低かった。
時はパワー競争が最高潮を迎えていたグループB最末期。
このようなマシンでトップ争いに割って入ることなど叶うはずもなく、存在感を示すことなくグループB廃止による終幕を迎えた。
参戦回数は僅か3戦、最高位は第2戦で獲得した6位。
ホモロゲーションとして200台の市販車が生産されたものの、上記のような有様だったため人気が出ず、大量に売れ残ってしまい廃棄処分された。
現存するのは30台程度と言われている。数あるグループBのホモロゲーションカーの中で、メーカー自ら廃棄処分したのはこのBX 4TCのみと思われる。