シュガー・マウンテンの泉
しゅがーまうんてんのいずみ
【破壊力 - E / スピード - E / 射程距離 - E / 持続力 - A / 精密動作性 - E / 成長性 - E】
『ジョジョの奇妙な冒険』第7部『スティール・ボール・ラン』に登場するスタンド。
本体は、泉の番人を務めるシュガー・マウンテンではなく、「聖人の遺体の一部」を守る樹齢1000年か2000年の思われる大木である。
ジョジョの世界にたびたび登場する、「人間の意志を越えた超自然現象」とでも言うべきスタンドの一つ(第5部のローリング・ストーンズや、第8部のミラグロマンが分かりやすい類例)。ジョニィはこのスタンドを、「遺体を手に入れられるかどうかを試す「悪魔の手のひら」」と解釈した。
大木の傍にある「泉」に物を落とすと、さながら童話「金の斧銀の斧」のように別の高級な、そして大切な物になって返ってくる。そして番人の「どちらを落としたか?」という質問に正直に答えれば、その物品を手に入れることができる。作中では札束や金塊などの分かりやすい高級品から、果てはジャイロがウサギの両耳を落とした結果、「聖なる遺体の両耳部」が手に入った。
ただしそれらの品々は、「その日の日没までに使い切らなければならない」=「全てゼロにしなくてはならない」というルールが存在する。もしそのルールを守れなかった場合、例えどこにいても身体が根と化し、大木の“木の実”になってしまう。
“木の実” にされた人間は、大木の番人の役が回ってくるまで永久に待ち続けることになる。
なお手に入れた物を使うことに関しては、何らかの取引行為でなければならず、捨てたり他人に贈与したような場合でも木の実化がスタートしてしまう。実際、女性に奢ろうとしたり、イカサマのギャンブルで金を使い切ろうとしたジャイロが危うく木の実化しかかっている。
一番分かりやすく使い切ってゼロにする方法としては食事代として支払い、出された食事を食べるといったもの。
一方で取引として成立してさえいれば、等価交換であったり証明が必要だったりという制約はない。例えば相手側が交換条件を提示する(松茸と土地の交換)、相手側に行為に対する対価を聞く・報酬を提示し実行してもらう(交換した蹄鉄を使用し敵のかく乱・有り金全てを譲渡する代わりに敵の撃退)など。
この「使い切らなくてはならない」品々の中には「聖なる遺体」も含まれている。つまり傍から見ればバラバラ死体のミイラにしか見えないもの(しかも複数)さえ正当な取引のうちに処理してしまわなければならない。ましてや全ての遺体を手にしようとしているジョニィ達にとってはまさしく無理難題であり、時同じくして現れた11人の男達の脅威と合わさり彼らを大いに苦しめた。
品物を使い切れずに“木の実”になってしまった人間達が助かる方法はただひとつしかない。それは、誰かが「ゼロにする」という試練を達成すること。
たとえ何者であろうと泉の試練をクリアしたものが現れれば、番人も “木の実” の人々も全員が泉から解放される。
ちなみに、正直に答えなかった場合 欲張りの嘘つきと見做され、本体の蔦が舌に突き刺さり内臓ごと引っこ抜かれて死ぬ運命が待ち受けている。
最終的に作中では、ジャイロが金目のものを全てばらまいてカジノにいたチンピラ連中を雇い11人の男達を撃退。そして最後に一人生き残った男とジョニィが、所持していた「遺体」全てと、飲みかけの安ワインを交換したことで、「ゼロにした」と見なされ試練クリアとなった。
全てを失った2人が降りしきる雪の中、一つだけ残されたワインで乾杯をするシーンは、必死に戦い続けてきた彼らの喪失感をひしひしと感じさせる味わい深い一コマとなっている。