解説
映画『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のキャラクター。
以下、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』のネタバレあり
主人公シャン・チーの実の父親であり、犯罪組織「テン・リングス」を統べる男。
組織の名の由来となった10の腕輪を手に入れ、その力によって1000年以上生きている不老不死の存在である。
コミックにおける、シャン・チーの父フー・マンチュー(ジェン・ズー)と、10の指輪を持つヴィランマンダリンの設定をミックスしたキャラクター。
10の腕輪を手にして以来、世界を征服するべく中国のみならずアジア全土、そして欧米諸国と、その力が影響しない文化圏はないほどである。
敵対する者は容赦なく殺し、また不老不死であることから後継者も求めなかった。
そんなウェンウーだったが、神から授かった武術を伝える村『ター・ロー』の伝説を知った時から大きく変わる。
村を求めて迷いの森に辿り着いたウェンウーは不思議な美女イン・リーと出会う。
腕輪の能力を駆使する己と対等に戦い、最後には忽然と姿を消したリーに、ウェンウーはすっかり惚れてしまい、彼女もまたウェンウーに惹かれた。
二人は結ばれ、ウェンウーが拠点としていた山奥の邸宅で暮らし、シャン・チーとシャーリンという二人の子供を授かる。
満たされたウェンウーは犯罪から足を洗い、テン・リングスを一時解散するとともに、愛する者と年を取るため、腕輪を自宅の宝物庫に封印した。
だがそれで過去の遺恨が消えるわけではなく、ウェンウーに恨みを持つマフィアがイン・リーを殺害。
ウェンウーは幼いシャン・チーを連れてマフィアを皆殺しにし、再びテン・リングスを結成、仕留めきれなかった妻の仇を探し始める。
同時に、部下に命じてシャン・チーに武術を叩きこみ、やがて妻を死に追いやったマフィアの親玉の居場所を突き止めると、15歳となったシャン・チーに「初めての仕事」として、そいつの抹殺を命じる。
だがこれが、親子の長き別れの始まりとなった。
妻が死に、息子が失踪、そして娘シャーリンもまた兄を追うように姿を消すと、どこからか亡き妻が助けを求める声を聴くようになる。
彼女が、生まれ育ったター・ローの奥にある遺跡に封じ込められていると考えたウェンウーは、村への道を記した妻の遺品…二つのペンダントを持つシャン・チーとシャーリンを探し始める。
しかし、この企てが新たな惨劇の引き金となってしまうことになる……。
人物
武力と権力を追い求める、非道な冷血漢。
文武両道を地で行く上、優れた行動力の持ち主。
あからさまに感情を露わにする場面は少なく、常に落ち着いていた振る舞いを見せる。(あるいは、そうであるように見える)
どんな状況でも動じることなく対応する姿はまさに悪のカリスマである。
自分の障害となる者に対しても声を荒げることは無いが、静かに威圧する、あるいは弁明の余地を与えることなく容赦なく叩きのめす冷酷さを見せる。
妻イン・リーと出会ってからは良き夫、良き父として妻子に接していたが、リーを亡くしてからは復讐に心を捕らわれ、子どもたちに対しても父としてではなく組織の長としてしか接しなくなった。
だが妻を愛していたことは事実であり、妻の声を幻聴するようになってからは、彼女を取り戻すために全力を注いでいる。
子供たちに対しても決して情愛を失ったわけでは無いのだが、彼らに対して身勝手に長、そして父としての立場を振りかざす姿は毒親と言って過言ではない。
息子の友人であるケイティと対面した際も、気さくな態度を見せながらも『アメリカ名(ケイティ)』ではなく、『中国名(ルイウェン)』で呼んでいる。
一度は悪の組織の長の座・永遠の命・強大な力などを捨て、平凡な夫・父親としての幸せを選んだにもかかわらず、(自分の過去の所業のしっぺ返しの側面が有るとは言え)妻の死を切っ掛けに悪堕ち・毒親堕ちした上に、東アジア的な家父長制の負の側面(「子は父親に従え。たとえ父親が間違っていても」「娘にどれだけ才能が有っても『家』を継げるのは男子のみ」)も体現している点が、MCUにおける他の主人公のアカン父親や情状酌量の余地は有るがやらかす事はやらかしてる主人公の父親達とベクトルが違う悪質さが有るとも言える。
能力
長年というには長すぎる、1000年の人生で培った武術と、世界規模に展開する組織を統括する強烈なカリスマ性を有する。
また10の腕輪「テン・リングス」による不老不死の他、それらを『腕から弾丸のように発射して、遠距離の敵や障害物を粉砕する』・『リング同士がエネルギー的に連結している状態で鞭のように振るう』といったように自在に操り、遠く離れた敵や多数の敵を相手に文字通り『一騎当千』の戦いぶりを見せ、腕に装着した状態から地面に向けて撃つことで超跳躍することもできる。
『アイアンマン3』のマンダリンについて
映画『アイアンマン』『アイアンマン3』に登場した組織「テン・リングス」についても把握しており、「私たち(テン・リングス)を騙った」として彼らを見下している。
特に首領を自称していた男が犯行声明で「マンダリン」と名乗ったことについては、「アメリカのテロリストが私の名前を知らず、勝手にでっち上げた」「マンダリンオレンジでも食べながら思いついたのだろう」と呆れていた模様。(話の流れから冗談、あるいは皮肉とも取れるが。そもそも、中国またはその近辺の出身と思われる彼にしてみれば、悪の組織の首領のフリをしてる奴が名乗っている名前が「中国の朝廷の高級官僚」を意味するもの、というのは呆れるしかないものであろうが)
そして、シーゲート刑務所に収監された偽マンダリンを部下に命じて脱獄させ、自分の手で殺そうとした。が、彼が即興でシェイクスピア劇(『マクベス』のワンシーン)を披露したため、毎週芝居をして自分を楽しませることを条件に、命だけは助けてやっている。
余談
別名などはブラックパンサーから引用されている。
Twitterユーザーの「さ🐈び」氏は、悲恋に関する描写などは、白蛇伝に類似している部分もあると指摘している(参照)。
演じるトニー・レオンは、香港映画界を代表するスター俳優だが、これまでハリウッド映画への出演歴はなく、ウェンウー役でハリウッドデビューとなった。
フー・マンチュー/ジェン・ズー+マンダリン=シュー・ウェンウー?
ウェンウーの元になったキャラクターの1人はイギリスの作家サックス・ローマーが1910年代に生み出した「フー・マンチュー」。MARVEL社が1970年代に許可を得てシャン・チーの父としてコミックに登場させたが、1980年代の権利失効以降数十年は単にシャンチーの父と呼ばれ2010年に入ってようやくジェン・ズー(邦訳アメコミでは『ゼン・ズー』とも表記される)の名前に改められた。 Wikipedia
そのため映画に登場するウェンウーはフー・マンチューとは別のキャラクターであることがマーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギによって強く強調されている。
ファイギは、このキャラクターは「初期のコミックの真実の一つに過ぎない」が、映画には「いかなる形でも」登場せず、マーベルのキャラクターでもないと説明した。 インタビューより