概要
アブラナ科シロイヌナズナ属の一年草。ユーラシア大陸からアフリカ大陸北部の原産で、全世界に帰化植物として広がっている。「ナズナ」という名前がつくが、ぺんぺん草として知られるナズナとは別属。
生育がとても早いのが特徴で、暖地では1年中花を咲かせている。花は地味で、毒のない植物だが、食べて美味しいという話も聞かない。
要は、何の変哲もないありふれた雑草だが、モデル生物としてよく知られており、遺伝や生理について、全植物の中で最も詳しく分かっている。
モデル生物として
- 生育環境を選ばない(暑さ寒さに強く、蛍光灯の弱い光でも生育する。もちろん特殊な栄養や共生菌などは全く必要ない)
- 生育がとても早い(わずか50日で1世代が完結する)
- 自家和合性がある(自己の花粉を受粉した場合でも結実する)
- 遺伝子サイズが小さい(約1.3億塩基対と被子植物では最小レベル。ちなみにコムギは約170億塩基対とシロイヌナズナ より130倍も大きい)
- 外からのDNA導入により形質転換が容易
といった特徴から、生物学研究の素材となるモデル生物として重宝される。
染色体数はわずか5対(2n=10)、植物の中で最も早くゲノム解析が完了したのもこのシロイヌナズナである。シロイヌナズナは、どの遺伝子がどのような働きをするのかも詳しくわかっているし、多くのエコタイプ(遺伝的に固定されている変異株)も容易に手に入る。研究に役立つ多種多様な知見が揃っているため、植物で生物学研究を進めるのにはシロイヌナズナを使うのがもっとも手っ取り早いのだ。