概要
和名 | シンジュキノカワガ |
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漢字表記 | 神樹木ノ皮蛾 |
別名 | シンジュガ、シンジュコケガ |
英名 | Ailanthus Defoliator |
学名 | Eligma narcissus |
分類 | 鱗翅目 ヤガ上科 コブガ科 シンジュキノカワガ亜科 シンジュキノカワガ属 |
前翅長 | 2.3~3.7cm |
開翅長 | 6.7~7.7cm |
分布域 | 日本(北海道、本州、四国、九州、対馬、南西諸島)、ロシア沿海州、台湾、中国、朝鮮半島、インド、スリランカ、東南アジア |
幼虫の食樹 | ニガキ科「ニワウルシ、タイワンニワウルシ、モルッカシンジュ、ニガキなど」、カンラン科「カンラン」、センダン科「チャンチン」、バラ科「モモ」 |
越冬態 | 成虫? |
成虫の発生期 | 3~12月/年2~3化性 |
比較的大型になるコブガ科シンジュキノカワガ亜科に分類される蛾の一種。
毎年初夏から秋にかけて低気圧や偏西風などを利用して中国から日本各地に飛来する偶産種(飛来種)。特に9~11月頃に多く見られる。
元は海外の昆虫だが、自力で国外から移動しているので外来種の定義には当てはまらない。
飛来先に食樹のニワウルシ(シンジュ)があればその地で繁殖し次世代が生まれるが、寒さに弱く日本では越冬できずに冬には死滅する……のだが、近年は温暖化の影響か、越冬したと見られる個体が春に見つかっており、日本に定着した可能性がある。
分類
現在はコブガ科とされているが、新種記載当時はヒトリガ科コケガ亜科に分類されていた。
本種が属すシンジュキノカワガ亜科はほかのコブガ科と系統的に離れており、独立科とすべきとの考えもある。
コブガ科の中で比較的近縁なのはナンキンキノカワガ亜科。
日本で記録されているシンジュキノカワガ亜科は本種とゴマフオオホソバの2種のみ。
アジアに分布するシンジュキノカワガ属は本種のみである。
原名亜種、インド亜種、ジャワ島亜種、フィリピン亜種、スラウェシ島亜種の5亜種が知られ、日本に飛来する亜種は原名亜種。
形態
細長い前翅の上部は緑色を帯びた黒色で中央は白く、下部は紫灰色。頭胸部付近を中心に前翅や胸部、脚などには細かな黒斑が散りばめられている。
後翅は中央が鮮やかな橙黄色で、外縁は太い黒帯で縁取られており、光沢のある青斑がその上に並び非常に美しい。
腹部は黄色く、大きな黒斑が並ぶ。
短い口吻は鮮やかな黄色で、灰褐色の前脚は長い毛で覆われている。
幼虫は黄色と黒の警告色が特徴的で、白く長い毛が生える毛虫。いかにもな毒々しさだが、触ってもなんともない。
生態
卵から孵化した幼虫はニワウルシなどの木の葉を食べて成長する。危険を感じると糸を吐いて木から落下する。
終齢幼虫は木から削り取った樹皮と自ら吐いた糸を混ぜて繭を作り、その中で蛹化する。
木の皮で作成された繭は木の幹と同化し、天敵からのカモフラージュとなる。
蛹は背面の腹端にあるギザギザしたヤスリ状の構造と繭の方にある縦に太い線を擦り合わせて「カチャカチャカチャカチャ」と鳴く。これは威嚇と考えられている。成虫も「チィ〜チィチィチィ…」と鳴く。
羽化した成虫は強い移動性を示し、様々な地域に分散する。
大きいからか、飛ぶ時には羽音がする。
成虫の口吻は短いが、樹液や熟した果実の汁などを摂食する事が知られる。
移動性が強い為狙って見つける事は難しいが、ニワウルシが多く生える場所を見つければ木の周囲をホバリングする姿を見る事が出来るかもしれない。
灯火にも飛来し、糖蜜トラップでも採集できる。
成虫は危険を感じると翅を広げて鮮やかな後翅を見せ威嚇する。
それでも効果がない場合は腹部を曲げて倒れ、死んだ振りをする。
一説には幼虫、成虫共にニワウルシの胡麻のような独特な臭気と苦味成分を体内に貯め込んで防御物質として使っているのではないかと言われており、鳥やカマキリが嫌がる姿が観察されている。