概要
エジプトのシナイ半島とアフリカ大陸の間に造られ、地中海(北大西洋)と紅海(インド洋)を結ぶ運河。
この運河の開通により、ヨーロッパ~アジア間の海運において、喜望峰(南アフリカ)経由に比べ3000海里(6500㎞)ものショートカットが可能となった。
歴史
フランスのレセップスがスエズ運河を建設する会社を設立して資金を集め、1858年に起工、1869年に開通した。
1875年に現地の貴族が保有していた株式をイギリス政府が買い取ったため、イギリスが筆頭株主になった。
このイギリスが筆頭株主になったことについて、日本は日露戦争におけるバルチック艦隊の極東回航で、イギリス政府からスエズ運河の使用についてロシア帝国政府へクレームが入り、バルチック艦隊の主力は喜望峰経由になるという恩恵を受けた。
1956年、エジプト政府がスエズ運河の国有化を宣言したため、第二次中東戦争が勃発した。
1967年には第三次中東戦争が勃発、イスラエル軍がシナイ半島を占領し、エジプト軍とスエズ運河で対峙、スエズ運河周辺が戦場となり、スエズ運河は機雷で封鎖される等、閉鎖状態になった。
その後、第三次中東戦争の鎮静化に伴って運河の掃海が行われ、1975年に通行が再開された。
近年は紅海出口付近の海域(ソマリア、イエメンに挟まれたアデン湾/通称ハイリスクエリア)やオマーン湾の治安悪化が問題となっており、海上自衛隊や各国の海軍が警戒を務めている。
構造
ごく普通の水路で、出入り口に特別な設備もないため、海流が発生している。
運河を通過する船は、途中の広くなっている場所ですれ違う形で航行する。
スエズマックス
この運河を使わなければ、大西洋からインド洋へ出るためにアフリカ大陸最南端の喜望峰を迂回する必要があり、運河を通る必要のある船は、軍艦も豪華客船も、運河を安全に通過できるサイズで建造されることになる。
このサイズ制限のことを「スエズマックス」と呼び、その大きさは次のとおりである。
- 全長:なし(船の前後の扉を閉める閘門がないため制限はない)
- 全幅:77.5m(運河を安全に通過できる最大幅、2010年以降は喫水線下の断面積によって最大幅を決めるようになった)
- 喫水:20m
- 最大高:68m(運河をまたぐ形で架かっているスエズ運河大橋の下を通過するための制限)
逆に言えば、運河を通る必要がなければスエズマックスに縛られることもないわけで、最初から運河を使う前提でないタンカーなどは、このサイズ以上の船がゴロゴロしている。
余談
運河の周囲にエジプト軍の施設が存在するため、基本的に取材や撮影はNGとなっている。
関連タグ
パナマ運河、キール運河:本運河を合わせて世界三大運河に数えられる。