発見と命名
2009年、多くの恐竜化石が発掘されている中国山東省諸城の白亜紀後期の地層からで上顎骨・歯骨・歯の化石が発見され、後に肋骨・尾椎・脛骨・中足骨なども見つかった。研究の結果、系統的にはティラノサウルスやタルボサウルスに近いものの、細部に独自の特徴が確認されたことにより、2011年に「非常に巨大な諸城の暴君」を意味するズケンティラヌス・マグヌスと命名された。
諸城はローマ字読みでは「ジュチェング」となり、現地の発音に準ずれば「ジューチョン」となるため、正式には「ジューチェンティランヌス」と発音するのが正しいが、日本国内では2012年に幕張メッセで開催された「恐竜王国2012」で「ズケン」とメディアで紹介されたため、ズケンティラヌスの呼び名を使う研究者やファンも多い。
特徴
上顎骨の長さは、ニューヨークのアメリカ自然史博物館に展示されているティラノサウルスのものよりわずか1センチ短いだけで、長らくアジア最大と謳われてきたタルボサウルスの平均値を上回った。またこの化石に多くの歯が残っていた状況から、彼らを含めたティラノサウルス類の歯の更新は非常に速かった(推定2年以内)と考えられている。他にも歯の形態的な特徴は、左右に厚みのあるティラノサウルスと、それよりも比較的薄い原始的なアリオラムスの間に位置していた。
推定される全長は11.4メートル以上・推定体重5~7トンと、タルボサウルスを上回るアジア最大の獣脚類だったと思われる(諸城ではさらに大きいと思われるティラノサウルス類の化石が見つかっている)。
生態
ズケンティラヌスが棲息していた頃の諸城には、全長15メートル以上の大型鳥脚類・シャントゥンゴサウルスや、アジアでは珍しいケラトプス科の角竜・シノケラトプスなどの植物食恐竜が棲息していた。ズケンティラヌスは、そのような大型の植物食恐竜を捕食するために大型化したのかもしれない。
実際には、ライオンやハイエナなどの現生の肉食動物と同様、病気や飢えで行き倒れた動物の屍体を食べることも多かったと思われる。捕食者としても、現生の肉食動物と同じく、小さく非力な幼体、体力はあるが経験の乏しい亜成体、病気や老衰で弱った個体から優先的に狙うことが多かっただろう(獲物となる個体も必死に逃走や反撃してくるのだから、失敗や逆襲の機会がなるべく少ないものの方が獲物として魅力的である。狩りで怪我や消耗をするのは時に自身の命取りにもなるため、なるべくリスクは小さくするに越した事は無い)。
余談
ズケンティラヌスを命名した研究者は、恐竜の学名に地名を付けるのは好きではないと主張していたのに、何故か発掘地に因んで命名した。 諸城市は恐竜を観光の目玉として売り出しているため、「大人の事情」等があるのかもしれない。