概要
アニマル星では「建国記に登場する月の悪魔の伝説」として伝わっている。
その真の姿はアニマル星のすぐ隣の二連星の「地獄星」と呼ばれる惑星(アニマル星の住人たちはこの星を「月」と呼んでいる)に生息している地球人に酷似した異星人で、「ニムゲ」は本来ならば種族の総称にあたる用語である。
ニムゲは外見・思考・メンタルいずれも地球人のそれと(作中で描写されている限りは)ほとんど違いが無いが、かつて自らの先祖たちの引き起こした環境破壊や核戦争、それに伴い発生した自然災害などにより自分たちの住処の星の環境や文明を手酷く汚染・破壊してしまい、まさに地獄のような星に変えてしまった。
ただし、最盛期には別の星系へ楽に行ける宇宙船を作れたほどの文明であったことが「連邦警察」の存在で明らかになっており、移民惑星などに移民していた者たちはそこを本拠地にして、滅んだ文明を再建してきたことが示唆されている。
本星での核戦争の際、地下シェルターや地下都市に逃げ延びて戦争を生き残った者たちは、およそ1000年もの間、文明が衰退する以前の旧時代に廃棄されたスクラップをリサイクルして道具や設備を生み出すことで、暗黒時代を辛うじて乗り越えてきたという。
また、在りし日は最終的に世界全体が滅ぶほどの核戦争を引き起こした事から、旧文明の栄えていた時代には、地球の冷戦同様の世界を主導する大国とその影響下の国々による陣営が二つ以上存在したのは確実である。
彼らが核戦争で星の汚染を最終的に破局的なまでにしてしまった結果、星の文明そのものが崩壊したのだろう。
その後、およそ1000年という長い時間が過ぎ、人口も少しずつ回復してきたのか、ニムゲの営む文明にも再建の目途が立ち、「旧時代の愚行の反省と平和」を誓って立ち上がった者達による連邦政府や秩序を守る「連邦警察」も組織された。
しかしニムゲたちの中には「宇宙は我々人間(ニムゲ種族)のために存在する」と主張する一部過激派も存在しており、過激派たちは「ニムゲ同盟」(劇場版では「コックローチ団」という名称)を名乗り、スクラップから生み出した武器や宇宙船を使い、平和で清潔なアニマル星を力づくで奪い取ろうと目論んでいる。
ニムゲ同盟が旧ニムゲ文明の祖先たちの引き起こした過ちを再び繰り返そうとしている存在だと判断した連邦警察は、同盟の目論見を探るべく内部にスパイを潜入させて動向を探っている。
このように、同じ「ニムゲ」という種族でも、作中では大きく分けて「ニムゲ同盟」と「連邦警察」の二勢力が存在しており、アニマル星の住人たちが「月の悪魔」と呼んで恐れている「ニムゲ」は、厳密に言えばヒトの傲慢さを頑なに捨てなかったニムゲ同盟側の者達である。
ニムゲの星とアニマル星は1000年の長きにわたって交流すら無かった(本編開始前までは、ニムゲ同盟の人間がアニマル星に対し、小規模な偵察行動を仕掛けてきていた程度だった模様)ので、アニマル星の住人がニムゲ同盟も連邦警察も十把一絡げに考えてしまうのも致し方ないことではある。
なお、連邦が成立して文明再建の目途が立ったとはいえ、1000年前に破壊されつくしたニムゲの星の環境は腐ったような雨が降り注ぎ、濁った空気が漂うなど依然として「地獄星」の名に相応しく酷く荒廃しており、ニムゲ同盟の構成員が野外で活動する際には防護服の着用が必須であるなど、環境が元通りになるにはさらに長い時間がかかると思われる。
本編ラストは連邦とアニマル星との相互理解と協力の示唆が為されているが、双方の文明が正しい形で交流できれば、アニマル星の持つ高度な科学文明と環境保全技術がニムゲの星の早期復興に大いに寄与するであろうことは間違いないだろう。
ちなみに、1000年前の旧ニムゲ文明がまだ存在していた頃、とあるニムゲの科学者が旧ニムゲ文明が引き起こす環境破壊や戦争によって迫害されていた動物たちを救おうと、自分たちの星の隣に位置する惑星の環境を動物たちが住みやすいように調整(要するに、テラフォーミングである)した上で、ニムゲの星と隣の星とを一時的につなぐゲートを使って、彼らを移住させたことがあった。
その1000年の間に、隣の星に移住した動物たちは人間と同等の進化(ただし、ドラえもんは自然の進化ではあり得ないという感想を残しているので、移民させた後に生まれた世代の遺伝子に何らかの改造を加えた事も想像できる)を遂げ、滅亡の一途を辿ったニムゲの星とは対照的に大いに繁栄し、平和で住み良い星となった。これが、アニマル惑星誕生と繁栄のいきさつであり、アニマル星の住人たちの間に伝わる神話の真相である。
ニムゲ同盟(コックローチ団)構成員
声-森功至
ニムゲの星(地獄星)における過激派の一団である秘密結社「ニムゲ同盟」(コックローチ団)の指導者。部下のニムゲ同盟員たちよりも豪奢な防護服を着用している。
各組長を配下に置き、アニマル星本格侵攻時は自ら前線に赴いて陣頭指揮もこなす。
原作で顔は明かされないが、映画に登場した素顔は若い美青年だった。
- ニムゲ組長
声-小杉十郎太
ニムゲ同盟の一グループを率いる組長。平の団員と違いマントをしているのが特徴。
それ以外の外見は平の団員とあまり変わらない。
- ニムゲ団員
声-西尾徳
のび太がニムゲの星で最初に接触したニムゲ同盟の構成員。
ツキの月の効果なのか、のび太を捕らえようとした矢先に転んで気絶してしまい、その隙にのび太に防護服を奪われる。
しかし、後に目を覚まして拠点に戻り、スパイが潜入している事を組長に報告した。
連邦警察
声-平野正人
連邦警察の職員で、若い男性。コックローチ団の団員に変装し、潜入捜査をしていた。
偶然、同じく潜入していたのび太と知り合い、後にアニマル星でコックローチ団の逮捕に向かった際に、連邦警察の一員として再会した。
たった一人で複数のニムゲ団員と渡り合うなど、戦闘力はかなり高い模様(のび太も彼の戦いぶりを見て「強いなぁ」と感心している)。
- 警察隊長
声-加藤正之
連邦警察の隊長。
スパイからの報告を受けた事で、ニムゲ同盟(コックローチ団)がアニマル星への侵略を目論んでいる事を知り、後にアニマル星で戦いが起こった際に、大部隊を率いてニムゲ同盟壊滅および構成員逮捕の指揮を執った。
余談
名前の由来は言うまでもなく「人間」と思われる。
作中ではアニマル惑星での冒険と並行して、学校の裏山をゴルフ場にしようとする不動産屋と、それに反対する町内会(のメンバーとなったのび太のママ)の対立が描かれており、私利私欲のために自然を破壊する人間たちの姿が描かれていた。
また、のび太はチッポとの会話で「(地球は)この星と同じくらい美しいさ……今はね」と不安そうな表情で語っており、ニムゲと地獄星の姿が、人間と地球の未来を示唆しているかもしれない、という懸念を抱いていたようだ。
これらを踏まえると、ニムゲの存在は単なる「悪役」というだけではなく、物語のテーマに関わる重要な存在と言えるだろう。