※以降の記述には物語・作品・登場人物に関するネタバレが含まれます。
概要
『ノートルダムの鐘』は、ヴィクトル・ユーゴーの小説『ノートルダム・ド・パリ』を原作とする1996年公開のディズニーの長編アニメーション作品である。
ディズニー・ルネサンスをもたらしたジェフリー・カッツェンバーグの、『リトル・マーメイド』『美女と野獣』『アラジン』『ライオンキング』『ポカホンタス』に続くミュージカル路線最終作。
原作とはキャラクターの背景やストーリーなどがかなり異なり、悪役が正義の味方になっていたりする。最後はハッピーエンドで終わるが、ディズニー作品としては珍しく、主人公とヒロインは結ばれず(原作では物理的に結ばれた)、非常にシリアスで重々しい描写もあり、どちらかというと大人向けになっている。幼少期に観てトラウマ化した視聴者も…。
そのせいか興行的には伸び悩んだが、画面の美しさは黄金期再来といわれる1990年代長編ディズニーの中でも屈指の作品で、ストーリー・音楽も合わせて評価の高い作品となっている。今でも根強いファンが多い。
ストーリー
舞台は、15世紀のパリ。そこにあるノートルダム大聖堂の鐘楼にひっそりと暮らす鐘衝き男・カジモドは、容姿こそ醜いが、優しく純粋な心を持った青年。彼は、育ての親・フロローの言いつけで外に出る事を許されず、友人は3人組の石像だけだった。
そんなある日、町の祭で楽しく盛り上がる人々を見て、我慢出来なくなったカジモドは遂に大聖堂を飛び出した。
登場人物
本作の主人公。醜く生まれながらも優しく純粋な心を持つ青年。赤子の時にジプシー狩りでフロロー判事に母を殺されたが、彼の非道を見咎めた司祭の一声により命を救われ、ノートルダム聖堂の鐘楼に、ほとんど軟禁状態で育てられる。真実を知らず母に捨てられたと思っており、厳格な育ての親である主人・フロローには逆らえなかった。鐘衝きが仕事だが、外界と隔離されているため、フロロー以外の人間を鐘楼から見下ろすことでしか知らなかったが、祭りの日、遂に大聖堂から飛び出す。
エスメラルダと出会い、生まれて初めての恋をするが、エスメラルダはフィーバスを選びカジモドの恋は報われなかった。しかし、彼らとは硬い友情で繋がりあい、助け合うことで心を通わせフロローに敵討ちする。
続編『ノートルダムの鐘II』では、ラ・フィデルの祭りで、サーカスの看板娘・マデリンに恋をする。
ちなみに「カジモド」はフロローが名付けた名前(「出来損ない」の意味)であり、本名は不明。
自由を愛する、ジプシーの美しく情熱的な踊り子。カジモドにとって初めて出来た人間の友達。ジプシーであるため、壁の中の生活には耐えられない。
フィーバスと結婚し、続編ではフィーバスとの間にゼファーという子供を授かる。
CV:日下武史(1作目)、歌:村俊英(1作目) → 佐々木省三(KH3D)
最高裁の判事(原作ではフロローが神父)。アリを潰すことすら何とも思わない冷酷な性格であり、ジプシーであったカジモドの母を追い詰め死に追いやり、赤子のカジモドもその顔の醜さから井戸に捨てて殺そうとする。しかし、そこを司祭に咎められたため、大聖堂の鐘楼に閉じ込め、鐘衝きとして育てる。エスメラルダに対して暗く歪んだ恋慕の情を抱き、彼女を手に入れるか、もしくは厳格な自分を誘惑した魔女として火あぶりにしようと目論む。ヴィランズの多くが、自分を悪と自覚しているのに対し、自らの言動が正義と信じ込んでいるなど、ヴィランズでは異色の存在。最期には神の怒りに触れヴィランズお約束の転落死となる。ちなみに某動画では彼のエスメラルダに対する歪んだ思想と性格よろしくでかなり壊れたフロローが人気になっている。
護衛隊長。原作では悪役である。フロローにジプシー狩りを命じられるが、民家に火をかけるなどのフロローの横暴に耐えかね、離反。カジモドとはエスメラルダをめぐる恋敵だが、協力し奇跡の法廷を探し当てる。愛馬の名はアキレス。
エスメラルダの項にある通り、続編ではエスメラルダと結婚し一児をもうけた。
狂言回し。普段は陽気な人形遣いだが、ジプシーを纏めるリーダーでもある。
- ユーゴー / ヴィクトル / ラヴァーン
CV:治田敦 / 今井清隆 / 末次美沙緒(1作目)→ 京田尚子(2作目以降)
ノートルダム大聖堂にいる三人組の石像で、カジモドの親友。彼らは通常、カジモドの前でしか動かない。ユーゴーとヴィクトルの名前は、原作者ヴィクトル・ユーゴーから取られている。
ユーゴーは、ふとっちょでひょうきんもの。ヴィクトルは長身で、温厚かつ涙もろい。ラヴァーンは、三人のまとめ役のおばあさん。
- ジャリ
エスメラルダの飼っているヤギ。機転が利き、カジモドやフィーバスも助ける。
Ⅱの登場人物
吹:宮沢りえ
街にやってきたサーカス団の看板娘。6歳の頃に魔が差してサルーシュから金を盗んだことで償いのために彼の盗みの手伝いをさせられている。
サルーシュから大聖堂にある宝石の鐘「ラ・フィデル」を聞き出すためにカジモドに近づくよう命じられるが、彼の人となりを知るうちにカジモドに惹かれていく。
吹:竹中直人
Ⅱのディズニーヴィランズ。
サーカスに見せかけた盗賊団の団長であり、極度のナルシスト。実は頭頂部がハゲており、カツラで誤魔化している。
これまでにサーカスの魅力を利用して数々の盗みを行っており、自分から金を盗み出したマデリンを償いと称して盗みの手伝いをさせていた。劇中ではマデリンを利用してノートルダム大聖堂にある「ラ・フィデル」を盗み出そうとする。
豆知識
- 原題は『THE HUNCHBACK OF NOTRE DAME』(日本語訳:ノートルダムのせむし男)だが、この「せむし男」が放送コードに引っかかるため、邦題は変更された。劇中に使われるロゴも『THE BELLS OF NOTRE DAME』に差し替えられている。このような処置がとられているのは世界中でも日本だけである。なお、原作である小説の原題は『NOTRE-DAME DE PARIS』(パリのノートルダム)である。
- 興行収入が低かったこともあり、日本での知名度は当時の他のディズニー作品に比べるとやや低めだが、東京ディズニーランドや、東京ディズニーシーのショーでは、「ノートルダムの鐘」「トプシー・ターヴィー」などの曲がしばしば使用される(「ノートルダムの鐘」は重厚な曲調から、ヴィランズの登場シーンに使われることが多い)。
- 本作のキャラクターは東京ディズニーランドにも登場するが、キャラクターの登場したパレードやショーはバラバラで、全員揃って登場したことは現在時点でまだ一度も無い。主人公より脇役・ヴィランズの方が多く登場し、主人公とヒロインが未だ一緒に登場していない事例はディズニーのキャラクターとしては極めて珍しい。
- カジモドの歌う「僕の願い」のワンシーンで美女と野獣のベルが登場している。
- 吹き替え版の声優は劇団四季から起用されており、国内最大劇団の名に恥じぬ高い歌唱力と演技力を披露している。
関連イラスト
関連作品
続編のオリジナルビデオ作品。
本作品の原作となったヴィクトル・ユーゴーの小説。映画と異なり、極めて悲壮かつ過酷な筋書きであり、報われない結末を迎える。