「621、仕事だ」
「お前に意味を与えてやる」
概要
CV:坂詰貴之 / 英:パトリック・セイズ
主人公である強化人間C4-621の使役者であり、オペレーターと渉外も兼任する男性。集積したコーラルを手にするために621と共に惑星ルビコン3へと渡ってくる。
「ハンドラー」とは「犬の調教師」、特に「多頭飼育で同時に多くの犬を躾ける者」を指す言葉で、おそらく本名ではなく二つ名(ただしRaDの"シンダー"・カーラや、ドーザーの"オーネスト"・ブルートゥなどと違い、クォーテーションマークはついていない)であり、彼のエンブレムは「多くのリードを手にくくり付け、逃さぬように握りしめる腕」。
その名の通り複数の強化人間を「猟犬」として使役し、“仕事”を行なってきたとされる人物で、ストーリートレーラーでは「ハウンズ」という強化人間の部隊を指揮していた。
シリーズの常として容姿は明らかにされていないが、ストーリートレーラーで見られる影から、杖を使っているのが確認できる。また、声色から少なくとも壮年期は過ぎているものと思われる(演者の坂詰氏は発売当時50歳)。
この手の使役者としては稀なレベルで戦闘員の待遇には気を配っており、任務毎に相応の報酬と必要に応じた休養を与えるばかりか、緊急事態が生じた場合には特別手当まで用意してくれる。命がけの業態であることを踏まえても、福利厚生面は手厚く計らっているように見受けられる。
手をかけているだけあって、愛情と称しても差し支えないほどに思い入れも強く、他企業に621の能力を誇らしげに強調し、低廉な任務を充てがわれた際には改善を求めて物言いをつける一幕もある。
情の深さ故か621の勝手な行動をある程度許容している節もあり、無断外出を行なったり指示に背いても、総合的に見て合理性が認められれば評価・追認してしまうことも。友人との通信中に「調子はどうか」と問われて自分ではなく621のことだと誤解するくだりなどは完全に親バカの振る舞い。
失った部下の名を並べられて通信に苦々しげな声を乗せてしまうこともある。
余談
- 男性オペレーターは前作『ヴァーディクトデイ』のファットマンに次いで2人目。
- ストーリートレーラーの公開段階では、ショッキングな621の姿、無謀にも見える作戦に散った617達ハウンズの最期から、彼らを使い捨てのコマ程度に使い潰す冷酷な人物の様に思われていた。
- しかし蓋を開けてみると上記の通りの人物像だった事から、ACシリーズ屈指の好人物、あるいはホワイト雇用主としてプレイヤーの心を一気に掴み、「ごすずん(ご主人)」、あるいは略して「ごす」の愛称で呼ぶ621もいる。
- 口癖は「やったか?」である。一級フラグ建築士やめろ。まあ彼の場合、本当にやれている場合が多いのだが。
- 英語版の演者であるパトリック・セイズ氏は『ACfa』でパッチ、ザ・グッドラックを演じていた。本作には残念ながらパッチと名の付くキャラクターは出てこないのだが、ある意味では彼がパッチと言えるかもしれない。
- 2023年11月22日には『ネット流行語100』に作品タイトルやACVIに関係したとあるワードと共にノミネートされた。結果は某ワードが69位、ウォルターが46位、ACVIが5位だった。
関連タグ
C4-621:大事な人材。
【警告】これより先、この男の未来が記載されているため閲覧に注意されたし
チャプター4「集積コーラル到達」において、アーキバスの不意打ちを受け621は企業勢力によって拘束、ウォルターもまた襲撃され行方不明となってしまう。
だが、下水道に幽閉された621に『ごく私的な依頼』としたメッセージと、RaDに依頼して手配したAC(損傷した『BASHO』フレームをRaDの技術者が修復した機体)を脱獄用の機体として残す。
そして技研都市から脱出する621を救出しに現れたシンダー・カーラによりウォルターやカーラの正体が明かされる。
コーラルには生物のように自然に集まり増えていく性質があり、一定ラインを超えるとその増殖スピードが手に負えない域に達し、宙域を埋め尽くすほどのコーラルに火が付けばそれこそアイビスの火を上回るほどの大災害、『破綻』となりうる。
その兆候を見極め、対処可能なうちに如何なる犠牲を払ってもコーラルを焼き尽くし始末する役目を受け継ぐ秘密結社「オーバーシアー」の一員として、ルビコンの集積コーラルを調査し、必要とあらば手を下すのがウォルターの「仕事」の真実であった。
本作のエンディングの1つである『レイヴンの火』ではこれ以降登場しなくなり、クリア後の録音データやV.Ⅱスネイルの発言から察するに死亡したものと推定される。
その録音データの内容は621に自分達の罪過を背負い込ませてしまった事への謝罪、その上で自ら選び仕事を果たしてくれた事への感謝。自分は手綱と首輪を手放して、縛り付けるものが無くなった621が自ら選択し、己の可能性を広げていく事を祈るという621への親心あふれるものであった。
レイヴンの火以後、『レイヴン』という名の傭兵が完全に消息を絶ったことから、621は(無事脱出を果たしていれば)ウォルターの遺言に従い、『レイヴン』としての身分を捨てて新たな自分の人生を模索していったのであろう。
しかし、他のルートにおいては…
俺は…
621…お前を…
…消さなければならない
『ルビコンの解放者』ルートではアイビスシリーズ唯一の有人AC「IB-C03:HAL 826」に搭乗し、最後の刺客として621の前に立ちはだかる。
彼の到着時点で621はザイレムの推力を完全に破壊、オーバーシアーの計画も破綻しているため、今更ウォルターが621と戦う意味はないが、アーキバスによる『再教育』(※1)や『ファクトリー』での『加工』(※2)によってか、朦朧とした状態で621の前に立ちふさがる。
※1
ただし、二つ前のミッションでカーラに負けると「これじゃウォルターも浮かばれないよ」と言われるので、その時点で既に死亡していた(またはそう見做されていた)ようだ。
※2
情報ログではアーキバスの『再教育センター』や『ファクトリー』の情報が得られる。再教育が有効でない優れた戦闘能力を持つ人員は『ファクトリー』に送られ、人体とACを直結する『加工』が施されるらしい。一部のログには無人機と比較した場合の優位性を検証するべく『胴まで残した部品』を寄越すよう命ずる一幕がある。
再教育で刷り込まれた「命令」と友人達から受け継いだ「使命」の板挟みにされ、「再手術をして普通の人生を…」と目標を達成するなら621には決して訪れない未来を望んでいる本心を吐露したりと、痛ましい状態となっている。
BGM「The Man Who Passed The Torch(=灯火を受け継いだ男)」はメインテーマのアレンジに嘆くようなコーラスを加えたラスボス戦とは思えない物悲しいものであり、この戦いがルビコンの火のラスボスのような己の意思のぶつけ合いではなく、まともな対話も困難になったウォルターとの最後の別れを済ませる為の儀式と思わせるものになっている。
乗機が大破し尚も友人達から受け継いた使命を果たさんと621へ銃口を向けるが、エアの存在を「声が見える…621…お前の隣にいるのは…」と明確に感じ取っていたウォルターは「そうか…621…お前にも…友人ができた…」と全てを悟ったかのような言葉を遺し、銃口を降ろして事切れる。
そして、墓標のように佇むHAL826はザイレムと共に大気圏へ再突入し、炎の中へ消えていった。
このルートはウォルターやカーラの目的は遂げられないが、ウォルターを救うルートであると言えるだろう。
なお、この時621は空力加熱で焼かれていくザイレムの上で、後ずさりしながらもエアに退避を促されるギリギリまでウォルターの方に視線を向けている。
ウォルターから621への情が感じられる場面は多々あるが、これは621からウォルターに対する感情が垣間見える貴重なシーンとも言える。
また、エアも迎撃を指示しつつもウォルターとの対話が可能になった事もあって、何とかウォルターも助けようと説得を行っており、621の友人と認めてくれたウォルターの最期には名前を叫ぶなど、覚悟を決めて依頼したカーラとの対決とは違い完全に想定外であったウォルターとの対決には心を痛めていた。
そして、この事もあってかエンディングでは「ウォルターが危惧した破綻を阻止する方法を必ず見つける」と決意を新たにするなど部分的とはいえウォルターの遺志はエアに受け継がれる事になった。
「ルビコンの解放者」ルートにおいてウォルターが搭乗した機体。
アイビスシリーズの最終後継でありながら、唯一の有人機ACとして開発されており、コーラル破綻に備えて作られた「最後の安全弁」としての役割を与えられている。
機体カラーはコーラルを意識して毒々しい深紅の塗装になっており、装備している武器も全てコーラル技術が使われているため、見た目のインパクトが非常に強い。
ルートクリア後に機体フレーム一式を、終盤のバトルログ回収や隠しコンテナから武器や内装類を、アリーナで設計図を入手できるため、プレイヤーもこの機体仕様を再現可能。
機体のシルエットやカラーリングはナインボールを、後部が左右に大きく張り出したコアや拡張機能用の冷却ギミックがある脚部はホワイト・グリントを彷彿とさせるなど、デザインには歴代ACを思わせる要素がある。
あくまで通常のAC規格で作られた機体だが、真っ赤でド派手な照射ビームやブレードで薙ぎ払う行動に加えて、背景が大気圏突入により燃え上がった空の中なのでビジュアルは凄まじく派手。
機体の防御属性を無視するコーラル属性の攻撃を全方位バリアを展開しながらばら撒いてくるので落ち着いて避けよう。
他ルートのラスボスやソレに準じる敵にようなAP減少に伴う形態変化や再起動などのギミックが無いので、やり方次第ではリペアを使わせる事もなくあっさり倒せたりもする。
なお、この機体は621の選択次第でもう一つ、登場するルートが存在する。
異なる未来のハンドラー・ウォルター
「あいつは、選択した・・・」
「今や俺達にとって最大の脅威だ・・・」
3周目以降に現れる『賽は投げられた』ルートにおいては、『集積コーラル到達』の流れが変化し、ウォルターの作戦を放棄し伏撃を行うため潜伏するV.Ⅱスネイルを直接撃破しに行くことになる。
このため前述2ルートとは異なりウォルターは健在、621は行方不明で公には死亡したと見做されているが、その後のミッション『ザイレム制御修正』では「621は死んでなどいない」と621への信用や621自身の選択を尊重する姿勢を見せた上で、「今や俺たちの最大の脅威だ」と621を引き止めるつもりがない姿勢も見せている。
直接その姿を見ることはないが、このミッションにおいてもHAL826に乗りカーラと共に戦っていると思われる。しかし最終的にはオールマインドによって「対処」されてしまったらしく、ラスボス戦直前にコアユニットのみになったカーラのACと首が無いHAL826の二機が映る…
621を最初から最後までずっと気にかけていた人物であるだけに、明確な生存ルートが一切存在しないという非情な仕打ちによって精神がスタッガー状態に陥ったプレイヤーも多かったようだ。
ハンドラー・ウォルターという男
妙に技研の遺産やアイビスの火に詳しく、当事者のように語る彼の素性は、ミッション中に見つけられるアーカイブを集めて読み解くことである程度の仮説が組み立てられるようになっている。
コーラル研究に携わっておりアイビスの火の当事者であったナガイ教授には第一助手と第二助手、そして第一助手の息子と言う関係者がいた。
しかし研究途中で第一助手は妻の死などの出来事やコーラルによる感覚拡張実験の副作用からか精神状態に異常をきたし始めた。
やがてコーラルの相変異現象が起こり始めた事でこれを防ごうとしたナガイ教授がアイビスシリーズを起動し、「アイビスの火」が起こってしまう。
この直前に第一助手の息子は第二助手と共に木星へ逃げており、アーカイブに出てくる画像を見ると第二助手と思しき人物は女性のように見える。
これらの情報やウォルター自身の口から語られる「昔話」を符号させると、ウォルターの正体は第一助手の息子であり、ウォルターと共に落ち延びた第二助手がカーラでは無いか?と推測出来る(その場合、ウォルターはカーラより年下の可能性が出てくる)。
また、ウォルターの「昔話」が真実ならば、アイビスの火を起こすきっかけとなったコーラルの相変異現象は第一助手が起こそうとしたのをナガイ教授が止めた事となる。劇中描写を見るに相変異とはコーラルリリースと同様の事象と見られるため、コーラルによる意識拡張でCパルス変異波形に触れるなどの形で第一助手がコーラルリリースを行おうとした可能性は十分あり得る。621がエアと交信可能になった際に「そういう幻聴は強化人間に見られる」というのも、もしかしたら第一助手にもそれらしき言動があったのかもしれない。
オーバーシアー発足の理由も上記の状況に当事者として立ち会ったからこそ危機感を抱いたと思えば納得が行く。
ウォルターがちょくちょく私的な依頼で話す「友人」とは、オーバーシアーの一員として共に行動した仲間だけでなく、ナガイ教授や父親の事をぼかして話した事なのかもしれない。
ミシガンとウォルターが旧知の仲である事も、木星戦争で武勇を馳せたミシガンと、アイビスの火から逃れたウォルターが、木星に居た頃から面識があったから、という理由付けが作れる。
とはいえ、これらは出てきた情報に各キャラクターの主観等から来るミスリードが無い前提で浮かぶ仮説の一つに過ぎない。他にも第一助手こそがウォルターかも、などの数多くの仮説がネット上では考察されている。この辺りはハッキリとした明言がないからこそ想像が膨らむフロムらしい情報の出し方と言えるだろう。