「また会ったな、狩人よ」
「狼の子は狼となり、獲物は狩人となった。」
「真の狩人の血と群れは、もはやお前のものだ」
概要
ハーシーン(Hircine) はThe_Elder_Scrollsに登場するデイドラ王の一柱で、「狩猟」に関連する概念を司る存在。
本編中で彼の事を暗示する別名は「狩りの王(Lord of the Hunt)」、「獣の王(Master of Beasts)」「狩人」「獣人の父」などがある。(※1)
主に鹿の頭骨、鍛え抜かれた筋骨隆々な狩人の身体、そして無数の獣の群れを率いた姿で描かれる。
シリーズによっては鹿が骨じゃないバージョンの姿だったり、時に白い牡鹿の姿をとって現世の狩人たちへ声を届けることもある。
- 『デイドラ全書』
人物像
「狩猟」というまさに生物の根底に関わる巨大概念を司る存在なだけあって、エルフ・人間・獣人たちの垣根を越えてタムリエル大陸全土の狩人達の間で狩人の父と呼ばれ、比較的認知度の高いデイドラとして古代より信仰されている。
彼の好きなものは、一言で言えばルールに基づいた「狩りの掟」。
獲物と狩人の間のスポーツマンシップこそがこの狩猟のデイドラ王の大好物で、例えるなら狩人サイドの勝利も大好物だが、それと同じくらい獲物のウサギが知恵と脚力で見事逃げ切ったり、逆に窮地のウサギが狩人を倒してしまうくらいの大番狂わせも彼の超大好物である。
過去には、デイドラ達の狩人たちの軍勢から逃げ切った一人の定命の者を称え、ハーシーンが自身の革を鞣した大秘宝「救世主の革鎧」を褒賞に与えた事例も存在する。
一方でこの狩人の父……もといこのハーシーン様は、きまぐれで嘘つきだったり、関わった瞬間破滅するような他のデイドラ王たちとは違い、契約事で全く嘘はつかないし実力で真っ向勝負が第一という漢の中の漢。
主人公&現世の定命の者たちにも、まず初対面で狩りのルール説明を欠かすことはない律儀なデイドラ王でもある。
狩りという盤上での強さを示せばこれ以上なく喜ぶ。その上、あれやこれやと褒美を貰えたり敬意を払ってくれたりもする。
【複数の姿】
伝承などではハーシーンは複数の姿を持つとされており、リーチの民の言い伝えなどにおいては、アルラベグ(狩人)、ストリーベグ(獣男)、ウリカンベグ(大雄鹿)、グリベグ(狐)、フロッキベグ(熊)の、5つほどの姿が確認されているという。(※1)
うち白色の大雄鹿ウリカンベグは『Skyrim』にも登場している。
- コロール大学、ジュノ・プロシラス著『ハーシーンの姿』
【ライカンスロープの呪い】
やはり彼も永遠の時間を生きるデイドラ王なためか、自分の好きな狩りを行う定命の者たちにぽんぽん加護を与えてしまう一方、さほど現世社会基準の善悪の区別が身に付いてない少し残念な存在でもある。
狩りに便利な祝福と称して狼男(ウェアウルフ)やウェアベア(熊男)といった人が猛獣の姿に変わるライカンスロープの呪いなど、その他ありとあらゆる古代の呪いを贈り物として気さくに寄越してくる。
これらの呪いは力は強くなるし鼻は効くし……と狩り自体には本当に良いことずくめの力なので、当のハーシーン様も悪気があって贈っているわけではないのがまさに狩猟のデイドラ王らしい。
加えて、ハーシーン自身の力を世界にもたらしたアーティファクトが複数あり、獣人となった者たちの間で崇拝に使われているという。(※1)
- 『ハーシーンのトーテム』
領域
【ハンティング・グラウンド (The Hunting Ground)】
ハーシーンが司るこの異界の領域は、荒涼とした原野や無数の原生林が地平の果てまで続き、ムンダスとオブリビオン中の死した狩人や動物達が未来永劫に狩りを続ける狩猟の世界。
生前にハーシーンに魂を捧げん勢いで彼を信奉し続けた現世の狩人たちの魂は、文字通り死後ここへ導かれるように辿り着く事となる。
ここはハーシーンをはじめ不死のデイドラの狩人達には最高の狩りの舞台、まさしくこの世の楽園のような世界ではあるものの、人間の狩人()からすれば時間制限の無い触みたいな世界であり、来る時点で霊魂なので死も許されず狩られ続ける……と、この領域に行くのは遠慮した方がいい理由がこれでもかと言うほど存在する。
シリーズ五作目のSkyrimでは、同胞団クエストの最後にこの領域に囚われたコドラク・ホワイトメインの霊魂を救出し、狼男の呪いを取り除いた上でソブンガルデへ彼の魂を送ることとなった。(※1)
- The Elder Scrolls Ⅴ:Skyrim 同胞団クエスト【死者の栄光】
【グレート・ハント】(Great hunt, Bloodmoon)
ハーシーン様は、暇を持て余すたびに数百年の周期で時折、月への赤い皆既月食現象を顕現して現れるグレート・ハントという大規模な現世への干渉を行う。
彼が見込みのあると感じた一番タフな狩人……もとい獲物を拉致し、そのまま前述の彼の領域へと招待するのだ。
シリーズ第三作目のMorrowindのDLC、Bloodmoonでは三紀の427年に主人公(通称ネレヴァリン)がタムリエル大陸北東部の辺境:ソルスセイム島で彼主催のこの狩猟大会に参加した。
獲物側にもかかわらず数多くの試練を打ち破り、挙句自身の選んだ狩人をも殲滅したネレヴァリンに大満足したハーシーンは無事に月の色を戻し、自身の領域に戻って行った。
- The Elder Scrolls Ⅲ:Morrowind DLC【Bloodmoon】より
アーティファクト
- 【救世主の革鎧 (Savior's Hide)】
ハーシーンの生み出した最も有名なアーティファクトの一つ。
デイドラロード(彼自身)の皮を材料に作られたこの上なく珍しいタイプの革鎧であり、見た目の格好よさに加えて魔法全般への強い耐性も特筆すべきもので、かつ毒も防ぐという非常に実用的な性能を誇る。
- 【ハーシーンの指輪 (The Ring of Hircine)】
彼の眷属の狼男(ウェアウルフ)に強い加護を与える特殊な魔力の込められたアーティファクトで、狼の頭が彫られた金属製の指輪の見た目をしている。
この指輪を持つ狼男は月の影響も血の渇きの影響も全く受けない特異な存在となり、自身の好きな時に自由自在に狼男へと姿を変えることができる。
一方で、ハーシーンが実力を認めた”相応しい者”以外が装着してしまった場合は指輪の力は暴走してしまい、なんと完全に予測不可能なタイミングで狼男に変身してしまう。
その他・伝承など
グレートハントなど、タムリエル各地に様々な彼の伝承が残る中で、ハーシーン自身が加護を与えたにもかかわらず部族単位で狩りがとにかく下手だったり、その他溜息が出るほどつまらない、双方にやる気の感じられない作業じみた狩りなどはあまり好きでは無いらしいことがうかがえる。
実力不足としてウェアウルフ達から加護を奪ったり、狩猟部族たちの狩り根性を叩き直してくるように主人公に命じるクエストも存在する。
何百年おきのグレートハント開催にも、恐らく狩りというものへのマンネリ防止的な理由があるのだろう。
- シェオゴラスとの賭け
また、ハーシーンは過去に、狂乱のデイドラ王:シェオゴラス閣下とお互いに、自らが育てることができる最も強い動物を戦わせる賭けを行った逸話が存在する。
ハーシーンは古代のデイドロスを召喚し、その上で狼男の呪いを重ね掛けるなどして自身の領域にもまず居ないような空前絶後の大魔獣を作った一方、シェオゴラスの方はミニサイズの陽気な小鳥をけしかけた。
数時間後、小さすぎる小鳥を全力で追い回したハーシーンの大魔獣は強すぎる自身の力で自滅と暴走を始め、最後にはアビシアン海岸のそよ風が吹く中で力尽き果てて死んでしまったのだという。(※1)
- (狂気の十六の協約、第六巻より) https://elderstory.net/16-accords-of-madness-vol-vi/
- 信者も狩猟対象
狩猟の神として崇拝されてはいるものの、彼にとっては狩るか狩られるか(戦いと生存競争)が本分であるため、認識にずれがある場合だと悲惨なことになる。
ハイロックでは16人の大家族が「豊富な狩猟生活への感謝のため」祭壇を作って祀ったところ、捧げた肉につられて降臨してきたハーシーンは信仰心の証にその家族の子ども14人を「狩りのため」として差し出すよう命じてきた。
しかし恐れおののいた夫婦が断ったことでハーシーンを不快にさせてしまい、結果として夫婦を含めた16人全員がトロールに変えられハーシーンの狩猟対象にされてしまったという。(※1)
- 『フォールン・グロットの伝説』
余談
ESO日本語版吹き替えでのハーシーン様は丸山壮史さんが吹き替えを担当している。
ディズニーでいうと、ズートピアのヤックスさんのお声の方である。