概要
「ファンタシースターオンライン」発売10周年記念作品の足がけとなった一作。
ファンタシースターポータブル2(以下、PSPo2)にバランス調整・追加要素・新作ストーリーを導入した、いわゆる完全版ソフト。
ベースの内容は調整点を除いてそのまま入っており、セーブデータも引き継がれる。
ベースのPSPo2がPSPのRPGとしては市場的な成功を収めたため、本作も引き続き40万本弱と売り上げ的には健闘した。
非公式の略称であるPSPo2iが定着しており、pixiv上でのタグはもっぱらこれしか機能していないためそちらを推奨。
特徴
- 『PSPo2』のゲームバランスを広範に渡って調整
- アバターのパーツが増加
- 新種族「デューマン」の追加
- アイテム、エネミー、フィールドなどの新規追加
- ストーリーに新章が追加、新規キャラクターや復帰キャラクターの追加
- 更なる難易度『∞』が追加
- 一定まで成長したキャラのレベルをリセットする代わりにメリットを得られる『転生』が追加
- ランダム生成型コンテンツである『インフィニティミッション』の追加
- 版権コラボの拡大
- その他、スクリーンショット機能などの様々な機能の追加
売りとしては、アニメ調のアバターを、身長性別種族などを自由にエディットできるマルチプレイアクションRPGとしての部分が更に拡大した部分であろう。
新要素として、自分で育てたサブキャラや、他者の育てたキャラをNPCとしてパーティーに編入できるため、プレイバリューは大きく広がっている。
エディット内容も新しい服・パーツ・髪型・ボイス等を収録し更に幅が広がっている。
ただし、男性の顔つきはイケメンやショタが減り、ゴツいのや老け顔が増えてしまった。
追加ストーリーは旧作のPSOとの関連性を匂わせる内容となっている。
PSOEP1、EP2の核心に迫るクロスオーバーが行われ、当時は救えなかったリコ・タイレルとヒースクリフ・フロウウェンの救済が出来るIFストーリーが実装され、ある種のハッピーエンドを迎えられた。
それと同時に2人にもボイスが付与され、リコは水樹奈々が、フロウウェンは若本規夫が声を当てた。
また、PSO10周年を記念したミッションやビジュアルロビーが実装され、PSOの舞台を簡易的に再現した他、PSOからの復活エネミーも追加された。
新キャラクター
ファンタシースターオンラインから登場
追加ボス
ディラ・ブレイヴァス/ドラゴン
ヴォルナ・グラフカ/ギール・ゾーク
ダークファルス・ディオス/ヤオロズ
オルガ・フロウ
コラボレーション
本作の競合タイトルであった『モンスターハンターポータブル』シリーズが様々な相手先とコラボレーションを行っていたのに対抗して、本作も豊富なコラボ企画が行われた。
中でも異色なのはKFCとのコラボで、同フランチャイズのアイコンであるカーネル・サンダースがNPCとしてとして戦闘に参加してくれることだろう。世界広しと言えどもカーネル・サンダースが戦うゲームはこれ位である。
本作のリアルイベントであるでの展覧会の物販コーナーではケンタッキーフライドチキンの出店が出て販売を行い、ゲーム内の特典がつくケースもあり、品切れを起こすといった一幕もあった。
前作との反響の比較
全般的に、ベースのPSPo2よりも低評価である。
公式ブログ上で直接プレイヤーからのフィードバックを受け付けて反映させたり、市場的には成功したもののゲームバランス面で著しく歪で数多の問題点を抱えていたPSPo2に大幅なバランス調整を行ったり、アバター編集の強化やソロプレイの強化などストロングポイントはしっかりと評価されているものの、それらの足を引っ張るほどに不評部分が大きくなってしまったり、前作が好評な一方でもしっかり批判されていた部分へのアンサーが不十分であったため厳しい評価となってしまった部分もあり、結果的に低い評価も目立っている。
特に問題視されたのが、プレイ時間を無意味に浪費させるだけと見られる仕様である。
具体的には「転生」システムである。これは、キャラクターの成長上限以上にステータスを増加させるシステムなのだが、その成長が高難度コンテンツに挑む際には、事実上必須の強化となっている。
しかし、PSPo2から引き継いですぐにレベルキャップが解放されるのではなく、1度レベル1に戻ってからまた上限まで上げ直さなければならない鬼畜仕様であったため、折角新規要素が追加されたのに購入してすぐには最上位コンテンツへ挑戦できず、必然性もなくお預けされてレベルを上げ直す作業を行わなければならなくなったため、明らかに時間を無駄食いしていると見做された。
また、転生そのものも1回ではまだ十分ではなく、このゲームの最高難度まで挑むのに適した上限まで強化する場合にはキャラを1からゲーム最終版のレベルまで育てる作業を6回も繰り替えなければならないと、非常にサディスティックかつ発狂ものな難易度であった。
この点が「プレイ時間の水増し」の非難を浴びる結果となり、本作への評価に大きな影を落とした。
「ライト層に優しくない」 とする定型句が流布されたものの、実態は「ライト層よりも時間を際限なく投下できる無職や学生、廃人以外を振るい落とすような設定であった」と評価する方が実質に近い。
一応、効率の良い経験値ミッションもあるのだが、今度はそれを繰り返す場合特にドロップも美味しくないミッションを延々回す作業となり果てるため、高難度コンテンツの攻略と両立しないような仕組み自体が良くなかったと見るべきだろう。
他にもインフィニティミッションも幾らコードがあったとしても、コードのボーナスが強化される組み合わせ自体が極端に少ない上に、コードを組み合わせるコストを稼ぐために、旨味がないインフィニティミッションを強制的に繰り返す等々……ユーザーライクとは程遠い苦行と化している(しかも、インフィニティミッションでしか入手できないレアドロップもある始末である)。
他にも「エネミー=モンスターについてもストレスを感じやすい」との悪評も多い。
そもそもPSUシリーズ共通の仕様として、回復アイテムをノーモーションでいつでも使用できる仕様になっていて、体力が減っても回復アイテムを使えばごり押しが通りやすく、アクション性の低い作りになっていた。
この状況で難易度をなんとか引き上げようとした結果、エネミーが極悪で過激な行動を行うようになってしまったのである。
例えばホーミングする状態異常付きの弾幕を張る、多段ヒットして即死級のレーザーを何本も照射する、プレイヤーには目視できないほどの遠くの僻地や、壁の向こうから貫通して多段ヒットの羽目死亡ビームを撃つ、高機動で動き回って追いつけない、遠距離攻撃や回避アクションに必要なリソースを全部吸い取って行動不能にしてくるなどの理不尽な行動を備えるようになってしまった。
結果、ソロプレイでの攻略が難しくなるようなミッションもままある(特に大型に囲まれるようなインフィニティミッションやイベントミッション)。
更に〈敵のステータス=(全エネミーの共有数値×各エネミーの基本パーセンテージ)×Lv毎の倍率パーセンテージ〉 とする、とんでもない計算式によって成立している。
この点は、モンスターハンターシリーズが「ターン制戦闘」と評価され、基本的に敵は1体で、回復には大きな隙が発生する一方で全体の難易度が調整されていた点とよく比較される。
新種族として大きな売りとして大々的に推されて登場したデューマンだが、性能としてはかなり使い辛く超上級者向けである。
アニメ調のアバターの編集自由度の高さ、マイキャラのカスタマイズ性の高さ、マルチプレイなどのはっきりした魅力があり、海外でも一定の認知を築いてはいるものの、上述したような不評部分も好評部分に並ぶほど大きくなってしまった。
本作を評するなら良い部分も悪い部分も極端とすべきだろうか。
結果としては「前作よりまとまりに欠けた」と評価されてる部分が目立つものの、これ以降に発表されたファンタシースターシリーズのゲームでは楽しく遊べる方とも言われている。
余談
- 前作より売上が落ちているが、これは折り悪く、直後に東日本大震災があったとする意見がある(発売日の半月後に地震が起きている)。ただ、今作で追加された要素を「蛇足」と見る意見もあるので、評価自体は前作よりやや低い意見が多いのも事実である。
- スクリーンショットなどの機能を詰め込み過ぎてメモリを食いまくったり色々な無理をしているため、前作のPSPo2には見られなかったような不具合(=表示がおかしくなる)が発生するようになっている。
- リアルイベントのファン感謝祭と同時にタイムアタック大会も行われていたが、折り悪く決勝の前に東日本大震災があった為、福岡と札幌の大会は中止となっているが、決勝戦は行われている。
- 当時流行りの「すれ違い通信」対応のゲームである。通信を行うと、キャラクターの登録や錬成されたミッションや、ミッションコードの登録等が行えた。
- 本作発売後のインタビューにて「元々PSO2に登場するデューマンを知ったPSPoシリーズ開発スタッフが、PSO2のスタッフに断りもなく勝手にぶちこんだ」と答えており、実際は「PSO2初出の存在をPSPo2iに先行登場させた」のが正解である。
- もっとも、幾ら同じ企業・同じゲームシリーズに携わる身内間の行為であるものの、その本質は事実上の情報流出に他ならず、当然だがPSO2のスタッフを激怒させた。
- なお、2015年にてオンラインモードは終了している。