フィルムカメラは、映像の記録に撮影用フィルムを用いるカメラ。
多くの場合は静止画を撮影するためのスチルカメラを意味するが、フィルムカメラという言葉そのものは単にフィルムを用いるカメラという意味でしかない言葉なので、広い意味では映画撮影用のムービーカメラを含めることも。
フィルムのサイズと種類
静止画を撮影するフィルムカメラも千差万別で、冷戦時代にスパイが使用したライター程度の大きさのカメラから、いわゆる普通のカメラ、空撮用の将棋盤ほどの大きさのものまで様々なものが存在する。
一般的に、巾8mmの8mmフィルムから16mm…(中略) 35mm、ブローニーフィルム(6cm巾)までのものは、ロールフィルムと呼ばれて、文字通りロール状に巻かれていて、撮影の際に順繰りに繰り出すことで、複数枚の画像を撮影できる。
ブローニーフィルム以上のサイズとなれば、1回撮影する毎にシート状のフィルムを差し替えるシートフィルムを用いるカメラがほとんど。この種のフィルムカメラで一番馴染み深いのはレントゲン撮影用のカメラであろう。
また、フィルムにはカラーフィルムと白黒2色のモノクロフィルム。明暗がそのまま現れるポジフィルムと、逆転する(明るい場所は黒っぽく写る)ネガフィルムがある。他に赤外線など特殊な帯域の画像を撮影するためのものや、インスタント写真用のものなどが存在する。
デジタルカメラの登場後
1975年、アメリカ合衆国のフィルムメーカー Eastman Kodakが世界初のデジタルカメラを開発した。解像度は100×100の1万ピクセルであり、満足な画質が得られるものではなかった。
1990年代中盤になると実用的な性能の物も現れたが非常に高価格であり、ユーザーは報道機関などに限られた。一方で一般消費者向けには、割り切った性能の物も存在したものの、これは当時のインターネット上でのやり取りには用を足したが、本格的な作品作りにはやや難があった。
しかしながら、1995年登場のQV-10(カシオ計算機)は、他社の一般向けの機種でも高価だった中で定価6万5000円と手に届く低価格を実現。これも画質はそれなりでプリントにはかなり厳しい水準だったが、何よりフィルム代を気にせず撮れることと、同時期に登場したWindows95とインターネットブームの後押しもあってヒットを記録。後のデジタルカメラの爆発的普及とフィルムカメラの終焉への大きな一歩となった。
2000年代に入るとデジタルカメラは加速度的進化を遂げて瞬く間にフィルムカメラからその座を奪った。
プロフェッショナル向けモデルの高性能化と並行して、一般消費者の間でも幅広い層に普及。携帯電話などのデバイスにも内蔵され、それまではある程度限られた(写真好きの)人しかしていなかった写真を撮影する営みが日常化した。
フィルムカメラ、写真用フィルムは徐々に主役の座を奪われて、2010年代に入ると実用的には公的記録を保存するためのマイクロフィルムや、X線撮影用などの、特殊なごく一部の用途に限られるようになった。これらもデジタル媒体に移行していき、2020年現在ではほぼ趣味的な用途に限られている。