聖書におけるマルタ
宗教活動の旅をしていたナザレのイエス一行を迎えた女性。
マリア(ベタニアのマリア)という姉妹とラザロという兄弟がいる。
祝日は7月29日で、主婦と台所、および宿の管理人や使用人の守護聖人。
ルカによる福音書
イエスたちがやってきた時、マルタはもてなしの為に忙しく働いた。一方、マリアはイエスの足元に座り、彼の教えを聞いていた。
そこでマリアは自分ひとりに仕事をさせているが、マリアにもその手伝いをさせなくていいか、彼女にも手伝わせるよう命じて欲しい、とマルタが聞くと、イエスは彼女をたしなめた。
「マルタよ、マルタよ、あなたは多くのことに心を配って思いわずらっている。しかし、無くてならぬものは多くはない。いや、一つだけである。マリヤはその良い方を選んだのだ。そしてそれは、彼女から取り去ってはならないものである」(『ルカによる福音書』10:42-43)
ヨハネによる福音書
兄弟ラザロが病にかかってしまった。マルタとマリアは、このことを人づてにイエスに伝えた。
イエスはラザロの埋葬から四日後に到着した。
マルタはイエスを迎えに行った。マルタはイエスに対しこう言った。
「主よ、もしあなたがここにいて下さったなら、わたしの兄弟は死ななかったでしょう。しかし、あなたがどんなことをお願いになっても、神はかなえて下さることを、わたしは今でも存じています」(『ヨハネによる福音書』11:21-22)
イエスはあなたの兄弟は甦るだろう、と言った。最後の審判で人がよみがえる事は知っている、と返すマルタに、イエスは彼自身の事を、復活であり、いのちであることを信じるか、と聞く。
マルタはイエスがキリストであり、神の子である、と信じていると答えた。
イエスが村の中に入ると、マルタの姉妹マリアも他のユダヤ人たちも、イエスがここにいれば助かった、奇跡で彼を死なないようにできなかったのか、と漏らした。
イエスは彼らの悲嘆を見て心を動かし、涙を流した。
ラザロの埋葬場所は、洞穴であり石で蓋がしてあった。それを取るように言うとマルタは、四日も経っているので臭くなっている、と答えた。
「もし信じるなら神の栄光を見るであろうと、あなたに言ったではないか」そう返すイエスの前で人々が石をとりのけ、イエスは洞穴の中を見、父なる神に感謝した。
そして「ラザロよ、出てきなさい」と大きな声で呼びかけた。するとラザロは体中に布を巻いた埋葬時の装いで歩いて出てきた。
イエスの業を見たユダヤ人たちは、彼の事を信じるようになったという。
その後、過ぎ越しの祭りの六日前に、イエスはまたベタニアを訪ねた。人々は食事で彼をもてなした。
マルタは給仕をし、ラザロは食事の席に加わっていた。マリアは高価なナルドの香油を持ち出し、イエスの足に塗り、自分の髪で拭いた。
マリアの善行にイスカリオテのユダが難癖をつけるのをイエスが批判する。
マルタら兄弟姉妹の新約聖書での描写は以上である。
この後、ラザロの復活の奇跡に危惧を覚えたユダヤ教神殿の祭司たちはイエス、そしてラザロの殺害を企み、イエスの十字架上の死という福音書のクライマックスに繋がっていく。
マルタのその後についての伝承
東方正教会の伝承によると、姉妹マリアと共に復活したイエスに最初に立ち会い、証人となった人々の一人とされる。
この人々は「没薬を運ぶ者たち(Myrrhbearers)」と呼ばれている。
西ヨーロッパではマルタは、姉妹マリア、兄弟ラザロ、また他のキリスト教徒らと共にフランスに流れ着いた、という伝説が語られた。
中世になると、マルタはタラスクという竜を倒した(聖水で、大人しくさせたドラゴンの首へリボン巻いて、地べたへ刺した十字架へつなぎ、現地の人にボコってもらった)という伝説が生まれた。
タラスク退治の伝説を記した本の一つ『黄金伝説』によると、死期が近づいたマルタのもとにイエスが降臨して労いの言葉をかけ、その後彼女は他の信徒たちに看取られ、傍らで『ルカによる福音書』の磔刑のくだりが読み上げられるのを聞きながら亡くなったという。
創作作品では
『Fate/GrandOrder』に登場するライダー・ルーラー・キャスターのサーヴァント。