マザー・クオリア
まざーくおりあ
以下、『STELLA GLOW』第9章以降の重大なネタバレを含みます。閲覧は自己責任でお願いします。
マザー・クオリアとはクオリアの母、すなわち各魔女たちが持つクオリアを生み出した存在である。
そのクオリアとなる結晶の出所は月であり、月もまた巨大なクオリアの1つである。
作中で天使と呼ばれる存在を多数生み出している存在であり、人間に特定の感情を圧し与える機能も有する。
ストーリー中盤で登場したジゼルもまたマザー・クオリアの眷属である。
前史時代
アルトたちが生きる大地が「レグナント」と呼ばれるよりも5000年もの昔、その時代は「前史時代」と称される。
前史時代の文明はレグナントのそれよりも遥かに高度な科学文明であり、この時代の人類「テクノロミー」は魔法を行使するシステムを生み出した。
この魔法システムこそ「クオリアに人間の強い感情を与えて魔法を発生させる」レグナントにおける魔女の特性そのものであり、強い感情を引き出すための手段として採用されたのが歌である。
やがて地球上のテクノロミーは魔法システムを用いて戦争を始めた。誰もが容易に魔法を行使できるが為、テクノロミーたちの欲望が刺激されてしまったのである。
その争いは何年もの間続き、終息の兆しを一向に見せることはなかった。
終わらない争いにテクノロミー全体が疲弊を感じ、悪感情を抱き始める。
疲れた、死にたい、殺したい、助けて欲しい
方向の1つに定まったそれらの強い感情は月のクオリアを刺激し、魔法が発動する。
その魔法によって誕生したのがマザー・クオリアである。
そして誕生のきっかけとなった人間の悪意に従い、マザーは人類の殺害という目的のために活動を開始した。
マザーは月から地球へ向けて世界樹と呼ばれる木の根のようなものを打ち込んで地球に固定。その後月から大勢の天使を放ち、地表のテクノロミーを蹂躙し、人類の文明は崩壊したのだった…。
この一連の滅亡への活動はレグナントでは「エクリプス」と称されている。
文明を滅ぼした後、マザー・クオリアは活動を停止する。
しかし、人類が絶滅したわけではないことを想定し、人類の感情を観測するべく、活動停止前にあるものを地表に放つ。
それがレグナントの魔女たちがその未に宿している5種類のクオリアである。
各クオリアは周辺の人類の感情を常に測定してマザーへ集約されており、観測値の総量が一定量を越えたら活動を再開するようになっているのである。
たとえ人類が再興したとしても、再び人類を掃討できるようにするために…
魔女とは言わば、マザー・クオリアにとっての1種の監視装置であり、劣化コピーでもあるのだ。
エルクレストの時代
本編時間よりも1000年前、その時代にも「エクリプス」が起ころうとしていた。
軍をなして現れる天使、それを従える存在が神と称されていたこの時代に救世主が現れる。
魔女を従える指揮者、マザー・クオリアに対抗するために生まれた『星のクオリア』を持つ者。
それがエルクレストであり、現在のレグナントでは英雄と称されている。
エルクレストはこの時代の魔女と友を引きつれ、天使を討ち払い、ついに天使の出処である月へと進攻する。
そしてマザー・クオリアの核となる場所に到達し破壊しようとした時、マザーは謎の少女を出現させる。
「ねえ、あそぼう?エルクレスト」
その少女の言葉の後、エルクレストに自身の誕生のきっかけとなった負の感情を劫火の如く焼き入れ始めた。
エルクレストへの悪意の注入は戦友の男によって妨害され失敗するも、代わりに焼かれ始めたその男を焼き尽くし、忠実な傀儡に仕立て上げた。
エルクレストたちは月から退却するも、注入された感情に飲み込まれるのは時間の問題であった。
これの解決策として、当時の水の魔女は自身の村の湖底にエルクレストと共に沈んでいった。
そしてエルクレストが目覚めるまでの間、当時の時の魔女にこの世界を託した。
しかし、この戦いでマザー・クオリアもダメージを受け、ひび割れて星に落ちた破片は後にマザーの良心ともいえる存在の月の魔女となる。
現在
傀儡が計画した『祝歌』によって「エクリプス」が強制発動。
レグナントの王都に多数の天使を送り込み、アルトたち王国騎士団や福音使徒を含め、壊滅的な大打撃を齎す。
しかし、福音使徒の一人の特攻と月の魔女ことマリーの介入によって、天使全体の活動を阻害されたことで天使の活動が困難になり撤退させられる。
その後は天使による人類の殲滅活動を再開しつつ、月の魔女に対して負の感情を送り込み続けていく。
エクリプスから生き残ったアルトたちは部隊を調律騎士団と改め、1000年前の魔女たちの歌「星歌」を手に入れ、魔女たちが歌えるように準備を始める。
その間、月の魔女によって天使たちが何度も妨害されるものの、負の感情を受け止める限界に達したため、傀儡を介して月の魔女の月へと誘致する。
そしてマザー・クオリアの肉体である謎の少女ことイヴはマリーを吸収し、月へと昇ってきた調律騎士団を待ち構える。
「あなたたちの中にいた怪物は…こんなにも、大きくなったわよ?」
マザー・クオリアと称されるそれは元々は月に存在する魔法システムが人格を持った存在。
その人格は自身をカルテジアンと名乗り、イヴの精神世界に侵入したアルトたちと対峙する本作のラスボスである(特定の条件を満たしていないとイヴ戦での選択肢が出現せずラスボスはそのままイヴになり、マリーも助けられない。1周目でも条件を満たすことは可能)。
イヴの『調律』を完了したことで、ついにイヴはマザー・クオリアによって蓄積された負の感情から解放されるが、カルテジアンは最後の力で月そのものを崩壊させることですべてを道連れにしようとする。
それを食い止める方法はただ一つ。イブの歌魔法で崩壊を抑えることだった。しかし、そのためには彼女は未来永劫月に留まり歌い続けなければならない。
何度も世界を崩壊させた存在とはいえ、ようやくカルテジアンから解放された彼女にとってはあまりにも重い罰だったが、「十分救ってもらった」と調律騎士団を送り出すとイヴは歌い出した。
その歌声はそれまでの負の感情に満ちたものではなく、未来への希望に満ちたものであった……。
イヴの優しい歌声は今も時折地上に聞こえている。
魔女の1人であるポポはマザー・クオリアのことを「かわいそう」と称している。
マザー・クオリアそのものもある意味で魔女であり、人類の自殺願望によって生まれ、活動する姿は不幸な仲間として見えたのだろう。
「カルテジアン」とは哲学者、ルネ・デカルトの思想に共感する者、いわゆるデカルト主義者のことを指す。
デカルトは「心は物質とは独立して存在する実体である」と主張したと言われており、「クオリア」という言葉とは心の哲学という観点で大きな共通がある。
その語源から、本来はテクノロミーが月に作り上げた魔法システムに冠された名称と思われる。
通信衛星アーク:悪意によって暴走を起こした機械繋がり。アークが登場するその作品の主人公の名前も「アルト」であり、人間の悪意に纏わりつかれる場面がある点も共通する。
闇の力(仮面ライダーアギト):天使を従え、人類を滅ぼそうとした者繋がり。ただしこちらは人類の行いに対して失望を抱いたためであり、マザーよりも全うな理由で執り行っている。