概要
トウダイグサ科に属する樹木。
果実の形は林檎に似ているため「小林檎」という名前があり、名前もスペイン語の「小林檎の木」という意味から。
漢字では「𦍂𣘽」と書く。
常緑樹で高さ15mにまで育つ割と大型の樹で、樹皮は赤灰色、花は黄色、葉は緑色。
北米南部から南米北部を原産とし、カリブ地方やバハマ、中南米でよくみられる一方、フロリダ州では絶滅危惧種に指定されている。
特に沿岸部でよくマングローブ状に存在しており、根は砂を安定させ砂浜の浸食を防ぐ天然の防風林となっている為、「ビーチアップル」という異名を持つ。
頻繁にハリケーンなどの暴風雨に晒される土地柄から、木質も非常に固く発達している。
と、ここまで聞けば普通の樹木だが、実はこの木のある場所には「近づくな」と言う看板が立てられている事が多い。
危険性
というのもこの木は全身に猛毒を持っているから。その毒の成分はホルボールを中心に複数種が混在しており、未だ正確に解析されてはいない。
果実は甘い香りを放ち、食べると始め心地よい甘味が広がるものの、時間がたつにつれ胡椒のような違和感を覚え、最終的に口とのどが激しい炎症を起こし、物理的に何も食べられなくなってしまうという。
まさに実在する毒林檎とも言え、「死の小林檎の木」という恐れ名も持つ。
樹液や樹皮、葉にさえ毒があり、触るどころか近づくだけで皮膚がかぶれるほど。
雨に濡れようものならその水分が毒液となって染み出すので、絶対にこの木の下で雨宿りしてはいけない。
火をつけようものならその煙が毒ガスとなるため、半端な駆除では状況が悪化するだけである。
このようにあらゆる手段で周囲を猛毒に犯す厄介さから、ギネスにも「世界一危険な植物」と認定・登録されたほど。
なぜここまでの毒性を得たのかは不明だが、競争力を保つために過剰な防衛メカニズムを発達させたのではという説もある。
主な生育地が沿岸部なのも、種子を波に運んでもらって拡散できるかららしく、必ずしも果実を動物に食べてもらい種を運んでもらう必要が無い。
しかしイグアナの特定種など一部の生物にはこの毒に耐性を持つものもおり、それらは天敵が近づけないマンチニールを天然の砦として暮らし、その果実を食べて生きている。
利用方法
昔はこの樹に罪人を縛り付けにじみ出る毒で苦しめていたとも、この毒を矢に塗って戦闘に使ったとも云われており、そうした逸話を取り入れた映画も存在する。
現在は毒の元である樹液を完全に乾燥させれば木材として利用可能で、上述の通り非常に丈夫な木であるため優秀な建材となる。
樹皮からはゴムもとれるし、果実の方も乾燥させれば利尿薬に加工が可能。
恐ろしき毒樹も有効利用できることを、先人の知恵が教えてくれたのだろう。