マージョリー・ドー
まーじょりーどー
明日なんて日来ないわよ。 苦しい今を変えたいんだったら、今、動かなきゃ。
明日を待つより、今動けってね
異能者『フレイムヘイズ』の一人で主要キャラの一人。
弔詞の詠み手(ちょうしのよみて)の称号を持つ。炎の色は群青。
本質的に激情家だが、戦闘思考は怜悧かつ大胆。
熱くなってもその戦闘は短絡的にはならず、敵を殺すために最も効率の良い戦法と冷静な思考・状況判断を行い、勝機が薄ければ即時撤退を選択するといった明晰さも持つ。
日常的には大雑把でグータラで酒好き。酒癖は悪いが強くはなく、よく二日酔いに陥る。人生経験豊富で姐御肌のためか、他人の相談や愚痴の相手になることも多い。少年には厳しく少女に対しては優しい。恋する少女達に的確なアドバイスをしている模様。 また、用途に応じた自在式を栞に込めて渡すと言った、(利便性も兼ねた)他者への気遣いもたびたび見られる。
人間時代は近世のイギリス(出身らしき描写が多々見られる)であり、地位ある貴族の娘だったと思われるが(回想では一貫して名前が伏せられており、本名は不明)、家が没落したため復讐を誓っていた。その「自身の存在意義である復讐」を奪い去った、正体不明の銀色の炎の“徒”(“銀”と称される)への激しい憎悪から契約、執拗に探し続けていた(II巻、S巻『マイルストーン』より)。また人間時代に頼られては裏切られる経験を幾度も繰り返しており、面倒見の良い反面、面倒を見た相手に裏切られる虚しさも感じていた様子。
“銀”と呼ぶ正体不明の“紅世の徒”と思われる存在に自分の復讐を眼前で砕かれ、自身も瀕死でいたところでマルコシアスと契約し、以後数百年“銀”を探しつつ数多の“徒”を討ち滅ぼしてきた。
1930年代には、ニューヨークで“千変”シュドナイと遭遇し、双方味方を失って痛み分けに終わっていた。
本編開始の二年前には、香港で中央アジアに入るための準備をしていたヴィルヘルミナと出会い、中世の『大戦』での話を聞いていた。
やがて、“屍拾い”ラミーを追って御崎市に行き着き、同業者シャナと遭遇。当初はラミーの処遇を巡り対立し、彼の「“銀”を追うな」「時が来れば自ずと“銀”に合える」という言葉に無気力に陥るが、“愛染の兄妹”(ソラトとティリエル)と“千変”との戦いの中で、見事に復活した。
ダンタリオン教授の実験阻止では、シャナやカムシンと協力するなど、協調性も見せていた。
本編(II巻から)では5月初め、“屍拾い”ラミーを追って御崎市を訪れ、案内を頼んだ縁で慕われるようになった佐藤啓作と田中栄太を子分に引き連れ、御崎市に陣取っていた(主に佐藤の家)。
二人に対し「大切」とかそういった類の感情を抱いているらしく、当分は他の街に動くことはないと思われた。
清秋祭での暴走時には、精神面や覚悟の違い等、相手が万全ではないといえども、あの『万条の仕手』を見事に翻弄し、蹂躙したがシャナたちに止められた。
XVI巻にて、“祭礼の蛇”坂井悠二による精神攻撃を受け、“銀”(『暴君』)が自分のしたかったことを代行したに過ぎないという真実を知り、自己のフレイムヘイズとしての存在理由を失い、錯乱状態になって契約解除による消滅の危機に陥るが、田中栄太と吉田一美の必死の叫びによって一命を取り留めた。
それ以降は昏睡状態となり、吉田一美の提案で佐藤家の啓作の自室のベッドで眠り続けていた。
しかし、佐藤啓作が東京外界宿から自宅に帰還し、口付けされることで目を覚ました。どうやら自分に呼びかける声は目覚める前から聞こえていたようだ。そして、吉田一美と田中栄太に見送られて『引潮』作戦の為に啓作と共に佐藤家を出発し、中国南西部の戦場近辺に配置された『天道宮』へ向かった。
そして、ヴィルヘルミナから託された『引潮』作戦の準備を『天道宮』で啓作や董命たちと共に進めていたが、戦局の変転によって自ら戦場へ赴き、ゾフィーたちに囮の『天道宮』を作り出す自在式の栞を渡した後、シュドナイを多重の自在式の檻に閉じ込める。結果として三分と持たなかったが、戦場に高速で飛来したキアラとサーレに回収されて戦場から脱出した。
その後シャナらとともに、香港を経由してニューヨークへ移動した。
『イーストエッジ外信』にて、シャナと『三神』の交渉を脇に、旧友のサーレととある複雑な自在式の解体・走査をしていた。
御崎市決戦では、(はっきりとは描写されていないが)[百鬼夜行]により『真宰社』内部へ密かに送り届けられ、戦闘を避けながら内部を移動し、シャナらの切り札として、『吟詠炉』に保存されていた『大命詩篇』を書き換え、改変された『大命詩篇』をバックアップを使って書き直すことを不可能にした。
自分の役目を果たした後、『真宰社』最上部に登場。ためらうヴィルヘルミナに『約束の二人』を追っていくよう促し、自身はシュドナイと交戦に入った。
新世界『無何有鏡』創造後は、この世に残留する理由を吉田一美に話した後、仕切り直しでシュドナイと再戦。御崎市に満ちる莫大な“存在の力”を取り込んで、『トーガ』の暴走状態をも超える多頭の狼型の怪物として顕現させ、同じく巨大な怪物に変化したシュドナイを全周囲からの一斉火炎放射(並のフレイムヘイズ数万人分)をもって、ついに討滅した。
シャナたちが新世界へ旅立ってから二ヵ月後の四月下旬、佐藤と共に御崎市に戻って出迎えた吉田一美と田中栄太にフレイムヘイズたちや外界宿の近況を伝えた。そして、参加した御崎山での花見の席で坂井千草と坂井貫太郎に坂井三悠の名の由来を聞いた。花見の終盤で、御崎市決戦前にシャナから託された『コルデー』の数個のうちの一個である指輪を取り出し、伝えたいに人に伝わるかもしれないという名目で、外界宿で試作段階にあった新世界への通信の自在式を込めた指輪型宝具『コルデー』(“紅世”について知らない人たちには『聖エドワードの指輪』と語っていた)を使ってのおまじないを、花見に参加した皆で行った。
自在式の扱いに長けた自在師であり、戦闘時にはずんぐりむっくりな獣型の炎の衣『トーガ』(アニメ版では群青の熊となった)を纏い、自在法を即席で編み出し口ずさむことで複雑かつ高度な自在式を展開・制御することが可能。この即興詩は『屠殺の即興詩』(アニメ版では『堵殺の即興詩』)と呼ばれる。
激情家であり、同業者であるフレイムヘイズ相手でも、邪魔者や気に入らない者には容赦しない凶暴性を持っていることから紅世の徒からは「死」と同義語とまで恐れられていた。