メタノイド
めたのいど
メタノイドは「銀河鉄道999」をはじめとした複数の松本零士作品に登場する生命体である。
Metal+Humanoidの名前の通り、全身が無機物である金属でできていることから、作中では人類など有機物からなる生命体とは対極の位置にあるとされている。
多くの作品においては、別宇宙からの侵略者であるダークィーンの尖兵として登場する。
平たくいうと金属生命体である。
ただしこいつらとは違い、一般的に抱かれるロボットのイメージではなく、有機生命体の体組織全部を金属に置換したような体構造をとっている。
そのため、腕を切ると、人間の筋組織のようにぎっしり詰まったワイヤーなどが見れるようになる。この体組織のため有機生命体よりも頑強であり、腕や足を切り落とされても切り落とされた部位は容易に腐敗せず容易に再度くっつけることが可能という強い生命力を持つ。
また特筆すべきは心臓で、その正体はなんと天然のヘリウム3の融合炉。この心臓は活動を停止して一定時間が経過すると爆発するという物騒な性質を持っている。
メタノイドの下級兵はこの性質を生かし、自爆することで周囲を破壊する工作員として戦うこともある。なお、上級将校である「百人隊長(センチュリオン)」は有機生命体と変わらない外見をしていることが多いが、下級兵は溶けた金属でできた泥人形のような外見として描写されることもある。(「銀河鉄道物語」「エターナル編」「エターナルファンタジー」)
ものを食べることもできるが、嗜好は有機生命体のそれとは大きく異なり、重油や金属を好んで食べる。漫画「エターナル編」ではロウェルとティアが重油のスープ・針金の麺のラーメンを「美味い」と言いつつバリバリ食べたり、「ニーベルングの指環」ではメタノイドの尖兵がナットを嗜好品として味わっている。なお有機生命体の食べ物は「臭い」と感じるらしい(「エターナル編」)。
元々はダークィーン同様「無の宇宙」出身であり、999や有機生命体の溢れる「光の宇宙」へは時空の壁を貫通させてダークィンの尖兵として派遣されている。
なお、直接命令を受けているわけではなく、メタノイド大帝国という独自の国家を持っており、その国家自体がダークィーンの配下となっている模様。
軍事的には「百人隊長(センチュリオン)」と呼ばれる指揮官が部隊を率いる形をとっている。センチュリオンにはかなりの権限が与えられており、各センチュリオンごとに艦艇が割り当てられているような描写がある。
メタノイド大帝国独自の戦闘艦を主力とする宇宙艦隊を有するが、場合によってはダークィーンの座乗艦とよく似たダークライド艦が運用されることもある(「銀河鉄道物語」「アルティメットジャーニー(小説版)」)。
メタノイドの戦闘艦の兵装は凄まじく、対艦戦闘はもちろん対都市・対惑星クラスを破壊可能な強力な砲も有する。また、工作艦には恒星を超新星化させ星系ごと消滅させる爆弾が搭載されており、この爆弾を太陽に仕掛けることで地球を含む太陽系全てを破壊するという凄まじい所業を成し遂げてみせた。加えてダークライド艦には「宇宙の空間を喰らう」というとんでもない兵器が搭載されているなど、その科学力・軍事力は凄まじいものがある。
基本的な思想は、メタノイド大帝国ひいてはダークィンのことを第一に考える全体主義である。そのため、特に軍人においては個々の命への執着はとても低く、作戦成功のためなら自爆も厭わない。また、基本的には全員が戦士として生きるのが基本のようで、力こそ全てという極端な弱肉強食の思想を持っている。
一方でヘルマザリアのように騎士道や博愛精神を第一にする人物がいたり、「アルティメットジャーニー(漫画版)」でのツイストバレルのように勝利のためなら手段を選ばない卑劣漢がいたりと、センチュリオンクラスになるとそれぞれの性格は大きく異なってくる。
しかし、親子の情は有機生命体同様存在しているなど、生まれや体の構造が違うものの人類と似通ったメンタリティーも持っており、それゆえ作中のキャラクターたちとも酒を酌み交わすなどの穏やかな交流をすることもある。
なお、「無の宇宙」出身のためか、松本作品における「時の環理論(時間はぐるりとつながった輪のようなものであり、全ての生命はいつかは再び巡り合えるという理論)」からは外れた存在であり、死は無であり、死は永遠の別れであると認識している。(「銀河鉄道物語」)
ヘルマザリア
鉄郎含む999一行が初めて接触したメタノイドで、「百人隊長(センチュリオン)」の役職を頂く歴戦の女騎士。「地獄の聖母騎士」の異名をもつ。豊かな金髪と切長の目を持つ美女であり、一見すると有機生命体と区別がつかないが、身体能力は有機生命体のそれを凌駕する。なお、前髪ぱっつんなのは全媒体で共通。エターナルに向かう鉄郎を排除対象と見做し始末しようと付け狙う...のだが、性格や顛末については媒体によって様々である。なお、どの作品においても少なくとも息子がいるのは確実な模様。
- 映画「エターナルファンタジー」(以下「映画」)ではダークィーンなど黒幕が一切登場しないため、実質的なボスキャラとして登場...したのだが、倒れたと見せかけて鉄郎に不意打ちを仕掛けたり、999の乗客を匿ったからと言って「輝ける蛍の輪の星」を住民ごと破壊したりと聖母騎士の由来となった慈愛や騎士道精神は見られない。部下を引き連れ999に乗り込むが、暗闇での接近を鉄郎に勘付かれ心臓を射抜かれ敗北。敗北を悟ると「鉄郎には私は逃げたことにしておいてくれ」とメーテルに言い残し、999が自らの心臓の爆発に巻き込まれないよう宇宙空間に身を投げた。
- 原作「エターナル編」(以下「原作」)では「ホエギョの星」で太陽系消滅の一報を聞いて沈む鉄郎を奇襲するが、鉄郎が万全の状態でないと悟ると撤退。その後、惑星に停車中の鉄郎の命を狙い接近するも、鉄郎のポイ捨てした空き缶が甲冑に当たり位置がバレ、鉄郎の反撃に遭い瀕死の重傷を負う。その後のメーテルとのやり取りは映画版と同じ。
- 漫画「アルティメットジャーニー」(以下「UJ」)では「聖母騎士」としての側面が強調され、一対一の決闘を好む、無関係な市民を巻き込む無差別攻撃を嫌悪する、敵であろうと礼節や矜持を重んじる相手には敬意を表するなど誇り高い騎士として描かれている。惑星「ディスティニー」を出発した鉄郎の前に姿を表し決闘を申し込むが、大王星から派遣されたスタージンガーたちの妨害により利き腕を切断され一時撤退。なお自らが退く際に背中を撃たなかったことや自らを尊敬する戦士と認めた鉄郎を好ましくおもい、敵でありながらも鉄郎とは信頼関係を構築した。その後、大王星で無差別攻撃を行うツイストバレルを止めるため大王星に急行。鉄郎と再会し、彼から切り落とされてしまった利き腕を渡され、その義理堅さに感激し彼をしっかりと抱擁した。だが、騎士道精神を第一に考えるヘルマザリアを疎んだツイストバレルにより心臓を撃ち抜かれたことにより死期を悟り、最後は大王星を吹き飛ばそうとするツイストバレルを乗艦ごと吹き飛ばすための体当たり攻撃を敢行して果てた。なお、同作ではメタノイド大帝国による太陽系消滅作戦に最後まで頑強に反対していたことが語られた。
ロウェル
ヘルマザリアの息子でティアの兄。母親を尊敬している。が、こちらも設定が媒体ごとに異なる。
- 映画では一切登場せず、ヘルマザリアの口から「私にも鉄郎くらいの息子がいる」と語られるにとどまった。
- 原作では惑星メタブラディにて鉄郎と偶然遭遇。ティアと共にちょっとした諍いを起こす。だが、のちにダークィーンへの反乱活動に参加し戦死したことがティアの口から語られた。
- UJでは、成長した青年の姿で登場。惑星「大テクノロジア」に滞在している鉄郎の命を狙うも悉く回避され、最終的に999に対して近くの無人惑星に停車するよう脅迫し、鉄郎との一騎打ちに臨む。だが、無人惑星を逃げまくる鉄郎に翻弄され、最終的に足を撃ち抜かれ敗北。当初は自ら心臓を破壊して惑星ごと鉄郎や999を始末するつもりだったが、惑星に生命体が確認されたことと、鉄郎から母ヘルマザリアの真意を伝えられたことから鉄郎と和解。彼らを無人惑星から見送った。ティア曰く、「母に対する情が強い傾向がある」らしく、それゆえ鉄郎への異常なまでの執着を見せていた模様。その後は持ち帰った光の宇宙の詳細なデータを元にダークィーンを説得して、休戦協定を結ぶための特使となる。
ティア
ヘルマザリアの娘でロウェルの妹。兄同様媒体により設定が異なる。
- 原作では兄同様メタブラディで鉄郎と偶然遭遇。なお、この時はまだ幼女だった。が、しばらくして「毒の花惑星」にて成長した姿で再び登場。この際「ティア・ヘルマザリア」という本名を名乗り、ロウェルが戦死したことを鉄郎に伝えると同時にメタブラディでの非礼を詫びている。
- UJではロウェルと共に母の仇討ちのため鉄郎を追っている。だが血気盛んな兄に比べて冷静かつ現実的に物事を見ていることが多く、母の死因が鉄郎でないことを理解していたり(UJ漫画版に限って言えば鉄郎はヘルマザリアの命を奪っていない)、メーテルからの交渉にも応じるなど兄に比べると若干頭が柔らかい。なおUJでは全編を通して成長した姿で出ている。
ヘルマティア
「コスモウォーリアー零」に登場した女性メタノイド戦士。「アルティメットジャーニー」(小説版)でもメタノイドと同盟関係にある機械化帝国に出向するかたちで登場。ヘルマザリアの妹とされている。だが、騎士として前線に赴く姉と異なり、「零」や「アルティメットジャーニー」小説版では黒幕として暗躍していることが多い。
姉との共演がないので姉妹仲については不明。
ツイストバレル
センチュリオンの称号を持つ男性メタノイド。多分メタノイドたちの中で一番媒体ごとによって設定が違う人。
- 原作では、トチローの息子である大山昇太を始末しようと名乗りを上げた直後、彼の愛刀で真っ二つに切られ、そのまま列車外に身を投げ爆死した。以上。登場から退場までわずかに数ページどころか数コマである。
- 「銀河鉄道物語」第2期の幻の最終回「我が心のシリウス小隊」では、銀河に侵攻してきたダークィーンの先遣艦隊の司令官として登場。2度にわたる侵攻をかけるが、セクサロイド・ユキの献身や部下の反抗などにより、どっかで見たやり取りのあと侵攻を取りやめ撤退することを独断で決定した。その後、ダークィーンに直接陳謝する彼の姿が見られた。こちらでは敵の精神性を見抜く冷静な指揮官という姿が描かれたといえるだろう。
- UJ小説版では、大銀河連合に相対するメタノイドによる大艦隊を率いるセンチュリオンの1人として参戦。途中、ヴァルハラの神々の参戦により総司令官が死亡したため、急遽メタノイド艦隊の総司令官となる。ここでも「シリウス小隊」と同じく大銀河連合に対して一歩も引かない猛攻を演じて見せたが、最終的に銀河侵攻を諦めたダークィーンの命令により戦闘を辞めざるを得なくなる。停戦命令を出された際には、ダークィーンに対し異議を申し立て、ダークィーンもそれに対して「もう...よいのです...」と制止するなど、こちらでは主君に仕える猛将としての姿が描かれた。
- UJ漫画版ではヘルマザリアと敵対する戦果至上主義の手段を選ばない卑劣漢として描かれた。鉄郎を炙り出すため大王星の市街地に無差別砲撃を行うなど暴虐の限りを尽くし、最終的に大王星を葬ろうとしたことからヘルマザリアの逆鱗に触れ、最終的に彼女の命懸けの特攻を受け、乗艦ごと爆発四散した。