レオグ・ポノロゴ
れおぐぽのろご
レオグ・ポノロゴとは、インドネシア・ジャワ島の東ジャワ「ポノロゴ」で15世紀頃に考案され、上演されている伝統的な仮面舞踊である。
一般的には、単にジャワ語で「騒がしい」もしくは「混雑している」という意味のriyegまたはriyetを起源としたレオグと呼ばれることが多いが、西ジャワのスンダ人のシシンガーンやマレーシアのイスラム色が加えられたバロンガンなど、近隣にも類似した舞踊が広まっているので、オリジナルであると差別化するために、発祥の地であるポノロゴを冠してこの名で呼ばれている。
この舞踊劇に登場するシンゴ・バロンの仮面には、獅子を象った虎や豹の顔の毛皮が張られており、さらに孔雀の羽根で造られた鬣を模した大きな扇で飾られ、全高は2.5m、重量が30~40㎏ほどもある。
演者である男性ワロクは、世界最大であるといわれるこの仮面を顎と歯の力で支え、さらに思春期の少年少女ジャティランを足した約100㎏の重量を担いで演じるという見せ場が用意される。
題材としては、ポノロゴ王であるクロノ・セワンドノが、女王ソンゴランギットを求めケディリ王国へ旅をする中で、孔雀の羽を持つ獅子の怪物シンゴ・バロンとの神話上の戦いを描くものであるが、歴史学者には13~16世紀にジャワ島を支配していた、ヒンドゥー教国マジャパヒトの支配と堕落を風刺し、民衆に叛乱を促した内容であると分析されている。
シンゴ・バロンの獅子はマジャパヒト王スリ・ゲンタユを孔雀は女王デウィ・ソンゴランギットを意味し、無能な王が女王に支配され、マジャパヒトを守護する美しき騎兵ジャティランたちは、男らしさを失って女々しくなってしまったと演じられるのだという。
なお1965年に発生した軍事クーデター「9・30事件」によって、共産主義者とともに下記の伝統からワロクとゲムブラクが前近代的であると虐殺されたという不幸な事件が起こったため、ゲムブラクの演じていたジャティランは女性ダンサーによって演じられるようになるなど、時代に合わせた変化も見られる。
2013年にこの舞踊はインドネシア教育文化省によって、国の無形文化遺産として認定された。
- クロノ・セワンドノ:堂々たる仮面と舞踊で表されるポノロゴの王。
- デウィ・ソンゴランギット:ポノロゴの王が探し求める伝説的な女王。
- ブジャン ガノン/ガノンガン:長髪で赤い仮面をかぶった若者の象徴で、オープニングにおいてトランス状態でアクロバティックに舞う。
- クダ・ランピング/ジャラン・ケパン/ジャティラン:美しき騎手を表すために張り子の馬に乗っている。かつてはゲムブラクと呼ばれる少年たちによって演じられたが、現在は女性ダンサーによって演じられる。
- ワロク:総重量が100㎏にもなるシンゴ・バロンを表す孔雀の仮面「トペン・ダダ・マラク」を顎の力で支えて舞踊を行う男性演者。選ばれるのはとても名誉なことで、かつては女性との交際は禁じられており、8~15歳の少年ゲムブラクとの間の関係しか許可されていなかった。
- カタン/クチンガン:猫という意味で、長い竹に結わえられたロープを用いたアクロバティックな舞踊を演じる。