ヴェンダリスタ星人
ゔぇんだりすたせいじん
「正義は悪に育まれる事を知れ」
小説『ウルトラマンデュアル』に登場するオリジナル宇宙人。この名前は地球側で名づけられた名前であり、星人本人は「袂を分かちて朝日を望むもの」を自称している。
本星は天の川銀河と呼ばれる銀河系にあり、彼ら以外にも三つの知的生命体の住む星がある。それらは光の国と対峙するために一大組織「ギャラフィアン」を結成。日夜宇宙でウルトラ戦士達と戦っている。
芋虫の様な色彩を持つグロテスクな体色をしている一方で、クサカゲロウを彷彿させる非常に美しい姿をしており、顔を仮面で素顔を隠している。また、戦闘力は低いため身に着けている自立式マントを使用する。
非情に合理的な考えを持つ種族であり、協調性を重視し全体の事を考えるために社会全体から反社会的分子を排除するために「個」でありながら「群れ」になるよう徹底的な進化を遂げて来た。
だがこれはあくまで精神的な統一による全体主義によるもので、肉体的・遺伝的な類似性については関心を示さず、本体の外見や素顔は非常に個性的である。
また自分の精神を最大七万個にまで分割することが可能で、分割した精神を人間や怪獣といった他の生命体に寄生させることで操ることが可能である。つまりは一体侵入しただけで七万体の個体がいることになってしまう。
寄生した宿主の事は宿体と呼んでおり、宿体が仮に死亡しても即座に分離し別の個体に映るだけで済む。さらには国によっては宿主を殺しても普通に殺人罪が適用できてしまう。
寄生する宿体には相性があり、相性がいい個体なら居心地もよく動かしやすくなるのだが、逆に相性が悪いと分離できなくなるという危機感から生存本能を動かされ、強烈な不快感を覚えてしまったり長く憑りついた結果宿主の影響を受けたり、限定的な条件下だが逆に主導権を奪われてしまう場合もある模様。
統括するメイン人格の事は「総体」と呼ぶが、地球人の中に様々な性格を同居させている人物がいるように、ヴェンダリスタ星人にも精神を分割するうちに総体とは少し違う思想を持つ「くずれ」と呼ばれる個体も発生する。
彼らにとってくずれとは全体思考から外れ、個人主義的な思想を持つ反社会的存在であり、くずれと判断された個体は総体から切り捨てられ、仮に肉体を得られても社会からは処分されてしまう。
一体の星人から発生したくずれの数があまりにも多いと、くずれ同士が合体し新しいヴェンダリスタ星人が誕生する。だが多くの場合は反社会的存在として処分されてしまう。
くずれは総体と思想が大きく変わる為肉体的には同一人物でも精神的には完全な別人とすることができる。
なお、劇中の描写から推測するに特に地球人の少年少女たちが最も宿体として相応しいらしく、好んで憑依している。また、宿体にされた者は意識だけはあるが、行動や思考はヴェンダリスタ星人の人格が主導権を握っている状態になてしまう(簡単に言うと、ロボットの操縦席に閉じ込められたのと同じ状態になるが、痛覚などの五感だけは操縦者に伝わるという状態)。また、一時的に憑依している聖人の支配は弱くなり、抑え柄が弱くなる時があるようで、そのような時は宿体にされている人物の意識がある程度抵抗する事ができるらしく、その際は宿体本来の性格に近い行動ができるようだ。
非情に知略に長けており、ギャラフィアンに所属する宇宙人の中でも合理的かつ冷酷な侵略のプロであり、侵略先で暴れ回る等の傍若無人な行いを良しとせず、「交渉」という手段を取る。
地球侵攻時も宇宙の公用語で特定日時に特定の場所を破壊することを再三にわたって通告し、宇宙語が解析できるほどの科学レベルがあるかどうかを見極めてから地球の各都市を攻撃。
この攻撃もあえて都市の中心部を外すことで自らの存在と力の差を見せつけるという狡猾な手段を使い、地球から送られて来た電波と交渉のメッセージを解読することで地球の言葉を習得。
メッセージにあった交渉の場に出向くことで「地球の天才は宇宙語を解読できなかったが、自分たちは出来た」と文明や知的生命体としてのレベルに天と地ほども差があることを見せつけた。
地球から戦意を奪い取るとギャラフィアンの拠点として地球の土地の割譲を要求。だが数日後に地球にやってきた宇宙警備隊との戦闘で相打ちになり、7名が生存。宇宙警備隊側の生き残りである光の国の聖女ウルトラセイントティアの引き渡しを要求し、光の国の飛び地に立てこもるティアを引きずり出すため地球や飛び地と怪獣や各国政府での駆け引きを駆使し、光の国か自分たちギャラフィアンの援軍のどちらかが到着するまで長い戦いを繰り広げることになる。
最終的に地球に侵入した生き残りたちは、たとえ援軍がやって来ても何の成果も上げないままでは同胞を始めとする他のギャラフィアンに加盟する星人たちに粛清対象になる危機感からティアを捕え、それを手土産に地球へとやって来る援軍と合流しようとするも、様々な不確定要素や、地球人を嘗め過ぎていた事やティアの思わぬ反撃の為に失敗。
撤退の際の選別として東京の中心へと落とそうとしていた輸送船落下のタイムリミットが近づいていた事もあり、ティアの生け捕りを諦め、全員が撤退の為に呼び寄せて置いた飛行船へと引き上げ逃亡を謀るが、最後はブリッジのアシストを受けて放たれたデュアルⅡの『ショルト・ストライク』を受け、飛行船諸共木端微塵に吹き飛び全滅した。
- キップ
地球人の監視を行っているヴェンダリスタ星人の1人で、おそらく監視役を含めた7人のヴェンダリスタ星人の生き残りたちのリーダー格と思われる。
劇中に登場する主なキップはデュアルⅠ=片倉正平の一人息子である片倉誉に取り憑いた個体で、彼に憑依して人質として利用する事で、デュアルⅠの殺害に成功したり、彼らに対抗する為のレジスタンスの存在を知ると、ペナルティとして怪獣を“飛び地”以外の市街地へと出現させ、その罪を“ティアズ・スタンド”へと擦り付けるなど、良くも悪くも真面目に侵略する為に後腐れの内容に“侵略”という行為を事業として合理的に冷徹かつ徹底的に遂行する ヴェンダリスタ星人と言う種族がどういった存在なのかが分かる彼らの縮図のような存在である。その為、自分たちと違って侵略行為を楽しんで行うギャラフィアンの他の3惑星人たちとも何れは袂を別とうと考えている。
また、かつて(実際には彼の“くずれ”の個体らしい) ナヴィガーレの母星である“左道に生きる6番星”に内乱を起こさせて自滅へと向かわせた事もあり、ナヴィガーレにとっては因縁の存在でもあり、その経緯からナヴィガーレに対しては個人的に苦手意識を持っているようだ。
なお、誉に取り憑いた個体は“総体”の中でも特別な存在(おそらく最も主人格に近い存在?)であるらしく、最終決戦の際に本体へと戻ろうとしたが、デュアルⅠであった父を目の前で殺された際に決意した誉の長きに渡って用意しておいた罠に掛かり、今度は誉の体に自身が閉じ込められる羽目となり、本体は大幅に弱体化してしまい、それが起因となってデュアルⅡたちの勝利の要因の1つを作ってしまうはめとなってしまった。
- ラト
地球人の監視を行っている三人のヴェンダリスタ星人の1人。
劇中に登場する個体は主に八幡高校に通う2年生の西田里美に取り憑いた“くずれ”と呼ばれる傍若無人な性格の持ち主の個体で、自身の気に入らない行動を取った人物を直ぐに“ブラックリスト”と呼ばれる黒い石板に登録し、更に場当たり的かつ軽率な行動が目立つために他のラト達からは嫌われており、そんな彼女の目に余る暴挙にはキップもしばしば窘めていた。
劇中の中盤、3年たっても何の成果もあげていない事から、ギャラフィアンを始めとした同胞やこのままでは本体から切り離されてしまうことに危機感を抱き下剋上を狙って、他の4人の“くずれ”個体と共に別行動を取るようになり、岡地という名の地球人から仕入れた情報を元に、ティアの秘密をあと一歩という所までたどり着くが、最後はナヴィガーレの光線を受け、最後は縮体としたベビボンの女王個体(?)の体に閉じ込められ、宇宙空間で始末されてしまった。
また、上記の軽率な楽観的な場当たり行動が仇となり、最もお気に入りな宿体であった里美の体の中に“ブラックリスト”を置き忘れてしまうという凡ミスを犯してしまい、その結果自分たちが“ティアズ・スタンド”の襲撃する日を知られてしまうという大失態をしてしまっていたことが後に判明する。
ちなみに本体のラトはデュアルのエネルギー源に対して熟知している節があり、一時的に二栁日々輝に地球人に対して失望させて暴走させるように仕向けたりする等の行動を起こしているが詳細は不明である。
- メイス
地球人の監視を行っている三人のヴェンダリスタ星人の1人。
本編に登場する個体は“くずれ”ギリギリの個体であり、食べる事が何よりも大好きな暴食漢で、自身が宿体としている人物の都合を考えずに食べまくり、宿体が肥え太ると動きにくいというだけの理由でさっさと別の宿主へと乗り換えるという“くずれ”ギリギリだけあってかなりの自己中な性格の持ち主である。
とはいっても、流石にラトくずれの死を知った際はそのような傍若無人ぶりは自粛していたが…。
物語の終盤、(おそらく)本体のメイスから切り離された(島流しされた)とおもわれる“くずれ(とくずれギリギリの個体も含まれていると思われる)”が“茶褐色の肌を持つ衣服のようなものを身に付けた名称不明の巨大怪人”を宿体として武器を携え出陣するが、ナヴィガーレによって宿体から分離できなくされてしまい、最後はデュアルⅡに体を切り裂かれ倒された。