概要
演.草彅剛(スピンオフ作品『BALLAD名もなき恋のうた』)※
※こちらでは井尻又兵衛由時という名前。
クレしん映画『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』の登場人物。
武蔵国春日領(戦国時代の春日部)を治める春日和泉守康綱に仕える武士。
かなり貫禄のある見た目だが、これでも30歳とひろしよりも年下。
戦国時代にタイムスリップした野原しんのすけによって偶然にも敵の伏兵の狙撃から命を救われた。
しんのすけを城に連れて帰り城主に紹介したが、命の恩人であることからしんのすけを預かることになる。後にしんのすけを追ってタイムワープしてきたひろし、みさえとひまわり、シロも、この時代にいる間の世話をすることになる。
空を眺めることが好きで、旗印も青地に雲が描かれていることから仲間内からは「青空侍」と囁かれている。一方で戦場での勇猛さを敵味方から「鬼の井尻」と恐れられているが、しんのすけからは名前が下ネタ的にもとれるからか「おまたのおじさん」と呼ばれるようになる。(『BALLAD名もなき恋のうた』では普通に「又兵衛さん」呼び。)
家族は父と弟は戦死、母は病気で亡くしており、足軽頭の仁右衛門夫婦と暮らしている。
武に優れ心身ともに強く、懐が深い。武士らしく実直で素朴な性格だが、反面、不器用で純情であることをしんのすけにからかわれて取り乱したりする。また、仁右衛門にも「戦には強いが、女には滅法弱い」と評されている。
城主の娘・春日廉とは幼馴染で、想いを寄せているが、身分の違いから自分の想いを明かさないつもりでいた。
廉への思慕をしんのすけに見透かされた際は純情ゆえに激しくうろたえ、口外しないよう、しんのすけと武士の誓いとして「金打(きんちょう)」を交わした。
※【これより先、物語の結末に触れる内容のため注意されたし】
物語の終盤、春日に攻め込んできた大蔵井高虎の軍勢に対し決死の夜襲を先陣切って戦い、野原一家の助けもあって勝利する。
又兵衛は高虎の首を取ろうとするが、しんのすけの懇願を受けて首を取ることをやめ、髻(髷)だけを切り落とし、高虎を生かす。
春日城への帰路の途中、どこからともなく撃たれた火縄銃により瀕死の重傷を負う。
その消えゆく命の中で「どうして自分の所にしんのすけがやって来たのか」の答えが出たと静かに語る。
「俺は、お前と初めて会ったあの時、撃たれて死ぬはずだったのだ……。だが……お前は俺の命を救い、大切な国と人を守る働きをさせてくれた……。お前はその日々を俺にくれるためにやってきたのだ……。」
突然の出来事に涙することしかできないしんのすけ(この時クレしんでも稀なしんのすけの正面からの泣き顔が描かれた)に「泣くな。帰れるのだぞ」と告げ、彼が褒美に欲しがっていた馬手差しを渡すと、「お前の言うとおり、最後にそれを使わなくてよかった……きっと、姫様も同じことを……」という言葉を最後にその生涯に幕を下ろした…
クレしん映画において主要キャラクター(それも味方側の人間)の死が明確に描かれることは極めて稀で、当時としては衝撃的であった。恐らく祖父母が健在のしんのすけにとっても初めて目の当たりにする大切な人の死であり、彼の涙が真正面から描かれたのはしんのすけの哀悼を表そうとしたスタッフの意図もあったのかも知れない。
彼の死のシーンに使われたBGMには『金打の馬手差し』という題がつけられている。
又兵衛には子供が居ないため、井尻家は彼の死を以て断絶するものと思われる。(とはいえ彼の活躍を考えれば親族や遠縁の者、または春日家の一門や家臣から名跡を継ぐ形で断絶を免れた可能性はある)
彼の死はしんのすけによって助かった彼に回避できない死という運命の帳尻合わせや歴史の辻褄を合わせるため、所謂タイムパラドックスという考察もある。実際、彼の銃痕は後方を歩く敵軍が撃ったにしては妙な位置であり、そもそも当時の火縄銃では鎧や兜を貫通しての殺傷は難しい(直前の合戦でも又兵衛は兜の上から火縄銃の銃弾を食らっているが、怪我も落馬もしていない)であるため、あの時代の人間には劇中の殺し方は無理であるし、万が一そんなレベルの超絶技巧をもった無名の狙撃者がいたとしても、硝煙を隠すのは不可能であるため、全員が潔白の証明のために銃を捨てた以上やはり不可能である。